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第5話 Dランク試験 - 前編 -

「リーダー、起きてください。朝ですよ~」


 耳元で誰かが囁く。

 その声に釣られるように、段々と意識が覚醒していく。

 あー、ダメだ…凄い寝心地が良くて起きれない。

 特にこのムニムニとした枕の触感と温かさ…。


「ちょ、ちょっとっ!リーダーッ!!なでなでしないでくださいっ!!」


 慌てた感じの声が耳に入り、意識が一気に覚醒した。

 そうだっ!昨夜クィナの膝枕をしてもらったまま寝たんだったっ!!つまりこれは…太ももかっ!!


「うおおおっ!!絶対に離さんぞぉぉぉっ!!」


 太ももにしっかりしがみつく俺。

 引きはがそうとするクィナ。

 それを見ているのか、トゥルニーとリリーの笑い声が聞こえた。


「フリート様っ!!足が痺れてきてるんですっ!離れてくださいっ!!」


 …足が痺れてるなら仕方ない。俺は紳士だからクィナの足から離れ起き上がった。


「じゃあ、ギルド行ってDランク試験を受けてくるかっ!!」

「えぇ!?待ってください、まだ足が…」

「クィナ、まだ足痛いですかぁ~?ヒール」


 とてとて近づいてきたリリーが貴重なMPを使って回復魔法を使うが、これも経験値になるのだろうか?

 アナライズを使いリリーのレベルを見てみるが、Lv8のままだった。

 経験が入っているもののレベル上がる程ではないのか、全く経験が入っていないのか判断付かないな。


 朝食を終え、ギルドへ行き、受付で手続きを済ませる。

 ちなみに、他冒険者に手伝ってもらうとその場で失格で、手伝った側もペナルティを受ける。

 まあ、手伝い禁止は当然だな。


「1000G受け取りました。それでは、試験用の依頼ですが、こちらになります」


 受付嬢から紙を受け取り、依頼内容を確認する。


 ”街の南側にある森の中に、マンドラゴラが生息している。十本程取って来て欲しい。報酬1000G"


 どうやら、普通のDランク依頼と同じ内容のようだ。

 報酬額から見て、Dランクの中でも易しい方なんだろう。

 一度依頼が張られてあるボードに目を通すと、Dランクの依頼報酬は大体、1000Gから8000Gが多かった。


「Dランクの中でも一番簡単な部類と見ていいだろうな」

「マンドラゴラって引っこ抜かれると悲鳴を上げる植物ですよね?」

「そうそう、確か悲鳴を聞くと、しばらく動けなくなるって聞いたことある」


 動けなくなるのか。それは少々厄介だな。動けない間に攻撃されてはどうしようもない。

 念のためにマンドラゴラがどんな植物かを詳しく聞いてみると、特に動くわけでもなく、攻撃とかは全くしてこないということだった。


「なので、マンドラゴラを抜くときは、周りのモンスターを全部倒してからになります」

「つまり、その辺りにいるモンスターの強さがDランク相当ということか」


 これ以上考えてもらちが開かないと見て、早速現場に向かう事にした。

 森までの距離は歩いて2時間程の位置にあるため、歩くか、馬車を使うか。

 2時間も歩くと結構疲れる、馬車だと1時間程度で着くだろうが金が減る。

 少し悩んだが


「馬車を使う」

「えぇー!?もったいないですよっ!!」


 真っ先に反対してきたのはトゥルニーだが、魔法職であるクィナとリリーには正直負担が出ると思っての判断であること。

 そして馬車代といっても、1人50Gだ。疲労で試験に失敗するというリスクを考えれば、ここは体力温存がいいだろう。

 俺がそう説明すると、みんなも納得し、次々と馬車に乗り込む。


 全員が乗り終わってから、馬車は動き出した。

 少々揺れるが気にならない程度だ。


「この中で森に入った事のある者はいるか?」


 俺の問いに全員が首を横に振る。

 ハーフエルフのリリーなら、森に入った事あると思ったが、無いという事は意外だった。

 父親が人間のため、生まれも育ちも街で育ったという。


「母親は?」

「ママは今、遠くに行ってるですぅ~」


 遠く!?まさか、亡くなったのか?

 俺がそう聞き返すと、そうではなく、生まれ育った森に今は帰っているという話だった。

 なぜ付いて行かなかったのか聞くと、森は危険がいっぱいだということだった。


「でもママに会いたいですぅ。だから冒険者になって強くなって、いつかママに会いに行くですぅ~」


 ふむ、リリーが冒険者になった動機は母親に会いたいからか。

 これをきっかけに、トゥルニーとクィナにも冒険者になった動機を聞いてみた。


「私は冒険者になりたかったからさ、少し大きめの街に来れば仲間も見つかるかって思ってこのレギュンに来たんだよ」

「私も似たような感じです。魔法の資質があるということで、何かの役に立てないかと思って冒険者になりました」


 俺が関心していると、その質問は俺に向けられた。

 俺が冒険者になった理由か、異世界転生したとか、冒険者は面白いそうとか、憧れていたっていうのもあるが、


「冒険者以外、金を稼ぐ方法が見つからなかった」


 多分これが一番の動機だろうと思って口にすると、冒険者になる人の大半は、それが主な理由だとトゥルニーが答える。

 確かにこの世界ではモンスターが多く、冒険者はいくらいても構わないぐらいだ。それに強い冒険者になれば普通の商人よりもかなり稼げる。


 そんな冒険者の話をしていると、やがて馬車は止まり、森近くへと着いていた。

 俺たちは馬車から降り、森へと向かっていった。


「これさ、もしモンスターが出てきた場合、クィナの魔法だと森が焼けてしまうから、魔法使えないんじゃないか?」

「その事なんですが、昨日のゴブリンを倒した時に、新しく『アイスアロー』を覚えまして、これなら森の中でも戦えます」


 アイスアロー、氷の矢ってことか。とても強そうだ。

 消費MPが気になるところだが、こればっかりは本人も使ってみないと分からないとの事だった。


「あっ!見てください!!ドリアードがいっぱいいますっ!」


 そう言って彼女が指をさすと、確かに森の一部がウネウネ動いていた。樹のモンスターみたいなイメージが前世の知識としてあるが、実際はどうなのかは分からない。

 まずはアナライズで見たところ、Lv11とゴブリンよりも高い!


「強そうだな」


 俺がそう呟くと、三人は意外そうな顔で俺を見た後、


「確かに丈夫な上に木の枝で攻撃してきますが、移動してきませんし、そこまで強いとは思いませんが…」

「そうそう、枝にさえ気を付ければいいし、多分大丈夫ですよっ!」


 言われてみればそうだな。

 あの枝で攻撃を受けても、即死とはならないだろう。

 まず様子見としてクィナにアイスアローを撃たせる事にした。

 敵の強さを見るだけでなく、消費MPや威力、実際どんな攻撃なのかを見るためでもある。


「凍てつく氷の矢よ、敵を貫け――アイスアロー!」


 魔法詠唱の後『氷の矢』というよりも『氷の塊』が勢いよくドリアードに飛んで行き、ドゴッ!という音を立て見事に当たった。

 だが、ダメージがどのぐらいあるかが分からない。


 くそぅ!!俺のアナライズで敵にHPとか見れるようにしとけばよかったっ!!

 アニメとかだと、もっと主人公が楽々敵を倒してたから、異世界転生した俺ならもっと簡単に敵を倒せると思っていたのに、大誤算だぜっ!!

 そんな後悔をしていると、


「フリート様、見ました?私の新しい魔法っ!!」

「ああ、見てた。それより何発ぐらい撃てそうだ?」

「そうですね~。感覚的にはあと4発ぐらいは行けそうな気がします」


 ということは、ファイアボールならギリギリ2発、アイスアローなら5発ぐらい。燃費が結構違うな。

 これは威力に比例してる部分も多いのだろう。


「じゃあ何発で倒せるか見てみようぜ!クィナ、倒せるまで撃つんだ!」

「はいっ!」


 俺の命令で、2発目のアイスアローが放たれ再び命中した。

 それと同時にドリアードは音を立てて倒れた。

 …これは、意外とアイスアローの威力が高いのだろうか?

 取り合えず安全圏からMPが尽きるまでアイスアローを撃たせてみたところ、やはり5発が限界だったようだ。


「まあ、二体倒したんだし、残りは俺とトゥルニーで倒す。行くぞ!」

「任せてくださいっ!」


 俺たちがドリアードに近づくと、枝が鞭のように飛んで来た。

 だが、かわせない速度ではない!

 モンスターの攻撃を避けつつ、剣で斬りつける。


「意外と堅いなっ!」


 ちらっとトゥルニーの方を見ると、攻撃を受けながらも敵を倒していた。


 それから数分、俺も何発か攻撃を受けたものの、目の前にいたドリアード数体は全部倒していた。


「ふぅ~、やっと倒せたな。リリー」

「はいですぅ~」


 トテトテと駆けつけてきたリリーが、俺たちにヒールをかけてくれた。お陰で痛みはもうない。

 一方ずっと休んでいたクィナも、MPが少し回復したとのことだった。

 意外とマンドラゴラ十本って難しいのかも知れない。

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