第40話 やはり金が欲しい
ヒュロスの顔を見ると、確かに以前と比べ、頬が少しこけていた。
実際俺も、あの防衛戦でかなり精神を摩耗していたから、彼の気持ちも少なからず分かる。
俺がどう返事をしたらいいか迷っていると、
「そうそう、オンカイムの明日から復帰するらしい」
オンカイムがっ!?
負傷したまま駆け付け、大量の血を流していたが、本当に大丈夫だろうか?
なんとなく、一人で抱え込んで、無理をしそうな性格に思えてならない。
その後、ヒュロスと軽く世間話をすると、彼は酒場を出ていった。
「オンカイムさん、復帰するんですね」
「みたいだな」
仲間たちも何か勘づいているのか、それ以上深く話してこなかった。
翌朝、ギルドに軽く顔を出した後、依頼は受けず、イエットの街へ行く事にした。
理由は二つ。
一つは、ノキュル隊がいるかどうか。
もう一つは、リリーが他の街に行きたいと言ったからだ。
イエットの街は規模こそ小さいものの、モンスターの侵攻が無かった街だ。
だから、もしかしたらノキュル隊がここに来てるかもと淡い期待をしていたが、いなかった。
「隊長~、ちょっと待ってて欲しいです~」
それだけ言うと、彼女はタタタと何かを探すように駆け回って行き、宿屋の近くで足を止めた。
しばらく宿屋をジーッと見てたかと思うと、
「もう大丈夫です~」
と、駆け戻って来た。
一体何をしたいたのか問うと、宿屋を覚えたと言う。
宿屋の場所を覚えたという意味だろうか?
リリーは俺とは違う感性を持っているだろうから、深く考えるのは止めた。
その後、ギルドで適当に依頼を受け、モンスター討伐をする。
Cランク以上の冒険者がいないため、Dランクの上位、強さ的に割りに合わないものだろうと、俺達にはあまり関係ない。
サクサク討伐してギルドの依頼をこなすと、街の人たちから称賛される。
ふぅ~~、きもてぃ~~~~!!
小さな酒場ではあったものの、その日は夜まで賑わう程だった。
このまま、この街で暮らすのもいいかも知れないと思ったが、直ぐにその考えは消え去った。
今や、レギュンの街の冒険者たちは、ただの冒険者ではなく、一緒に街を守る仲間。
やはりあの防衛戦が、仲間意識を強めたのだろうか?
リリーの欠伸を合図に、俺たちは自分達の街へとゲートで戻った。
宿に戻り、寝る準備をしていると、
「隊長、結構お金ってどのぐらい貯まってるんですか?」
トゥルニーが唐突に、今の金銭事情を聞いて来た。
10万Gを超えてからは、金はギルドに預けてある。
理由は、持ち運ぶには邪魔だからだ。
大きな買い物をするときも、基本ギルド払いにしてある。
そのため俺自身も正確な金額は知らないが、
「70万Gぐらいじゃないか?」
「ひゃ~~~、結構貯まりましたね!」
「まあ、マイホームの目標額240万Gまでは、まだまだ遠いがな」
思えば、防衛戦で疲れ切り、最近はまともな依頼も特にこなしていないから、金の貯まり具合も停滞気味。
そろそろ、マイホームに向けて、報酬額の良い依頼をこなすべきだろう。
等と考えながら、眠りに就いた。
朝になり、ギルドへ行く前に、以前俺が目をかけていた中古物件を見に行った。
以前は調べただけで、実物を見た訳ではなかったから、みんなと一緒に一度見ておこうという話しになった。
「……」
「……あのぉ~、フリート様?」
物件を見て、俺は沈黙の後、長い溜息を吐いた。
その家には既に、人が住んでいたからだ。
まあ、そうだよな~。
良い物件ってのは、直ぐ売れるのも当然か。
肩を落としながら、ギルドへと向かう。
そして中に入るなり、
「なるだけ依頼報酬の良いものを頼む」
それだけ言うと、受付嬢は少し驚いた様子で、何かお金に困っているのかと聞いてくるが、困っていると言えば困ってるが、簡単に事情を説明した。
一通り説明が終わると、
「フリート隊の方々は、ゴールド勲章を持っているので、特別区への居住が許可されているはずですが――」
特別区?何だそれ??
クィナに聞いても、首を横に振り、知らないという感じだ。
なので、受付嬢に詳しく話を聞くと、領主や貴族が住む場所。
それ以外の人が住む場合は、富豪または俺のように領主から認められた勲章がある者でないと、住むことが出来ない一等地。
「フリート様の場合、冒険者なので、護衛も兼ねてとなれば、かなり格安でマイホームを手に入れれるかと思われます」
という美味しい話だった。
だが格安と言っても、具体的にどのぐらいかは分からないため、明日、担当の人に来てもらうよう伝えておくと答えてくれた。
「フリート様、良かったですね!」
「ああ」
街の郊外ではなく、一等地、しかも格安!!
しかし浮かれるのは、まだ早い。
いくら格安と言っても、一等地!
貴族たちの格安は1億Gとかの可能性もある。
やはり報酬の高い依頼を受けておいて損はないだろう。
再び、高い依頼はどういったものがあるかを問うと、
「そうですね~、今はありませんが、グレーターデーモンのような、モンスターを統率する悪魔退治とか、同じようにモンスターのリーダー的存在になる、ネームドモンスター討伐、あとはここから遠くのものになるかと…」
遠征は一度の報酬額は高いが、移動時間等を考えると、意外と割に合わない。
グレーターデーモンとかは、今の俺達には、まだ手に負えない。
となると、ネームドか?
消去法だが、ネームドモンスターはどんなのがいるかを聞いた。
もちろんBランクの対象となっているモンスターだ。
すると、ガサゴソと書類の山だろうか?
ややしてから、1枚の紙を見せてくれた。
オルトロス、メデューサの名前があり、そこには赤いペンでバツ印が付いていた。
残っているのは、セイレーンというモンスターだけだった。
「このセイレーンというモンスターはどこにいるんだ?」
「海ですね」
却下!!
ここから街を3つ過ぎたあたりにあるぐらい遠い!
しかも、セイレーン討伐依頼は実際にあるものの、強そうな敵なのに、報酬額が10万Gと割に合わなさそうだ。
結局、ギルド側がやって欲しいという依頼を受ける事で落ち着いた。
「隊長!墓地とか嫌ですよ~」
「トゥルニー、依頼なんだから仕方ないじゃないですか」
今回の依頼は、墓地に出るリッチというモンスターを討伐するものだった。
何でも死霊系で、出て来るのも夜限定というから、参ったね。
呪いとかもありそうだし、不気味で仕方ない。
『ちゃんと、剣とかの攻撃は効きますよ』
とか言ってたけど、逆に剣とか効かなかったらどうやって戦えっていうのだろうか?
酒場で時間を潰し、夕方頃から移動開始。
街を出て、墓地を目指す。
クィナが出した、ライトの魔法を頼りに、夜道を歩いて行くと、やがて墓地が見えて来た。
フォオオオオッ!という音が、風の音なのか、モンスターの声なのか分からないが、どこからともなくいきなり出てきそうなイメージがある。
前世でホラー映画の見過ぎか?
墓地の足を踏み入れた瞬間――ッ!!
ボコッ!!
地面から人影がゆっくり出てきたっ!!
「うおおっ!!」
咄嗟に剣で斬りつけると、あっけなく倒した。
ふぅ~、ビビらせやがってっ!!
死体、いや、元々死体か、倒れた残骸を見てみると、以前見たゾンビだろうか?
アナライズを使っても、効果が無いということは倒したということだ。
だが、敵は俺たちに気付いたのか、地面から次々にモンスターが出て来る。
すかさずアナライズを使うと、Lv9と出ていた。
「こいつら弱いぞ」
次々に倒して行くが、ゾンビより知能が高い気がする。
「ぐーる、ぐーる」
いつの間にかリリーが、敵をステッキで殴って逃げる、という追いかけっこをしていた。
何?友達なの?
「リリー、こいつらの事知ってるのか?」
「はいです~、教会でよく教えてもらったです~」
ああ、確かに教会とかって、死者とかと関り深そうだよな。
今俺たちが戦ってる敵はグールらしい。
死体に悪霊が乗り移ったモンスターで、知能が高いのは悪霊の知能がそのまま受け継がれたのだろう。
目の前のグールを全て倒し、リリーの方を見ると、フライの魔法で浮いていた。
当然グールは手も足も出なかったが、クィナのファイアボールで全て倒した。
今回の依頼、意外と余裕か?




