第39話 5番目のBランク隊
くそっ!!
早く教会に行きたいが、疲労のせいで足が重い!!
リリーがいたら『リフレッシュ』で疲労回復してもらえるが、そのリリーは今、石になっている。
改めてヒーラーの重要性を理解しつつ、何とか教会へたどり着いた。
息を切らし中へ入ると、教会の関係者と思わしき者が、
「どうなさいましたか?」
俺の様子を見て慌てて駆け寄ってくるも、どうかなってるのは俺じゃない!
心でそう呟きながら、リリーの事を伝える。
すると、スラッドから事情を聞いていたのか、すんなり彼女のいる部屋へと案内してくれた。
部屋に入ると、石で出来たようなテーブルの上に、これまた石になっているリリーが横たわっていた。
そんな彼女に、いかにも地位が高そうな人が、手から光を放ち、何かボソボソ呟いている。
青と白が入り混じった、綺麗なローブのような服に身を包み、同じようなデザインの帽子もかぶっている。
「フリート、今治療中だ、直ぐ治る」
突然スラッドが話しかけてきた。
リリーに意識を割いていたため、彼の存在に気付かなかった。
軽く礼を言い、今やっている治療は魔法なのかと聞くと、
「あれは、解呪の祈りです」
スラッドの代わりに、ここまで案内してくれた男が答える。
ちなみに祈りを捧げてるのは、この教会で一番偉い司祭らしい。
祈りってことは、魔法とは違うのか?
そして、石化は呪いなのかも気になった。
気になりながらもリリーを見ていると、その体は一瞬光り、そして灰色だった肌も、徐々に薄くなって行く。
やがて、いつもの肌色に戻り、少しすると、
「んん~~~…」
「リリーッ!!」
彼女の声に思わず大きな声で名前を呼んでしまった。
すかさず司祭から、静かにするよう注意されてしまった。
だが、俺の声に気付いたのか、
「たいちょ~?」
と、弱弱しくも、はっきりと声を出した。
俺が近づくと、薄っすら目を開けているが、俺が見えていないのか、ゆっくり瞬きをする。
「石化が解けたばかりなので、まだ意識もはっきりしていないでしょうが、時期に元に戻ります」
専門家が言うなら、きっとそうなのだろう。
頼む!!
いつものリリーに戻ってくれっ!!!
そう願いながら、リリーの手を軽く握ると、リリーも手を握り返して来て、
「隊長~、ここはどこですかぁ~?」
今度ははっきりと声を出してくれた事に、安堵のため息を漏らした。
そしてゆっくり事情を説明するも、意識が途切れていたのだろうか、よくわかってない様子だった。
「ごほん、治療費についてですが」
不意に、司祭が金を請求してきた。
あー、高そうだなぁ~。
「600Gになりますが、いつ頃払えそうですか?難しいようでしたら、分割でも構いませんよ」
と、慈悲に満ちた声で提案もしてくる。
…安いっ!!
ここには今後も世話になりそうだから、1000Gをその場で渡し、リリーを抱っこし、そのまま宿に戻る事にした。
「隊長~、疲れてるですか~?」
「ああ、だが大丈夫だぞ~、リリーも疲れてないか?」
そんな会話をしながら宿に向かっていると、唐突にトゥルニーが、
「あっ!!赤ポーションでスタミナ回復すればよかったじゃないですかっ!!」
――!!!
なんてことだ!!
リリーの事で、ポーションの存在すら忘れていたとは、このフリート!一生の不覚っ!!
宿屋に着き、リリーを寝かす。
「ん~~!眠れないです~」
えぇぇぇぇぇ!!?
俺は眠いぞ!!
ほら、クィナとトゥルニーだって、もう寝てるじゃないかっ!
お子ちゃまのリリーだけ眠れないだとぅ~!?
「もしかしたらリリーは石化中、時間が止まってたんじゃないでしょうか?あ、これ寝言です。すやぁ~」
…いや、起きてるだろ?
しかし、クィナの言う通りかも知れない。
俺の手から離れたリリーは、窓から外を見る。
何を見てるか知らんが、俺は寝る。
朝日が俺たちを起こす。
リリーはまだ起きてるのだろうか?
と思ったら、俺の隣で寝ていた。
起こしたら悪いと思い、俺だけギルドへ行き、昨日の事を報告した。
ギルド側も、今回の依頼が達成に値するかどうか悩んでいたが、
「メデューサは『ネームド』なので、そのモンスターを倒しただけでも十分と判断します」
…ネームド?
初めて聞く単語だったので、どういう意味か聞いた。
すると、ゴブリンやオークは種族名だけど、メデューサは種族名ではなく、そのモンスターの名前。
「つまり、名前のあるモンスターっていう事か?」
「はい、一体しか存在しないモンスターです」
もののついでに、ノキュル隊の行方を知っているかも聞いてみた。
だが、ギルドで分かるのは、その街に登録している冒険者のみで、余程有名でない限り、基本的には他の街に所属している冒険者は分からないということだった。
一度宿へ戻ると、リリーは眠そうな表情だったが、起きていた。
ギルドでの話を一通りし終え、
「リリー、調子はどうだ?」
体調に変化が無いか聞いてみるも、特に変わったところは無いようで、大丈夫と答えた。
しかし、本人が大丈夫と言っても何かあるかも知れない。
そのため、今後数日は、様子を見ながら軽い依頼を受けようと提案すると、みんなも賛成してくれた。
――3日後。
ずっと軽い内容ったからか、特に問題なくこなし、今日の依頼も難無く終え、報告のためにギルドへ戻ると、
「おい!フリート!」
ガロンがやや慌てた様子で俺の顔を見るなり、駆け寄ってきた。
そして何かあったのかと問うと、
「スラッドが、Bランクになりやがったっ!!」
「…マジ?」
「ああ、大マジだ!」
確かにスラッドは、ガロンやリアギーと比べ、レベルの上がり方は速いと思うが、それでも俺が最後に見た時は、まだガロンの方がレベルは高かったはず。
実際、Bランクを目指しているガロンはLv38と表示されている。
くぅ~~~~!!
こんな事なら、リリーを運んでもらったあの夜、奴のレベルを確認しておけば良かったっ!!
いやいや、それより本当かどうか、ギルド名簿を見れば分かる。
早速名簿を見ると、確かにBランク、つまり俺の隊の下に、5番目にスラッド隊がある。
――あれ?
5人になってる。
よく見ると、副隊長のところの名前が、
「カ、カ、カ、カインラスゥゥゥ!?」
「ああ、そうなんだ、何かすげぇーつぇぇを入れたって聞いたが、知ってるのか?」
知ってるも何も、例の剣豪で、この前の防衛戦でも最後まで一緒に助けてくれた、例の人と言うと、ガロンもようやく理解したのか、
「あのクソつぇぇ奴が、噂のカインラスだったのかっ!!そりゃ~納得だぜ!!」
どうやって、あのカインラスを仲間にしたか分からないが、確かに彼がスラッド隊に入ったのなら、Bランクになってるのも納得だ。
なんなら、彼一人で依頼試験をこなしたまである。
そんな話をしていると、噂のスラッド隊がギルドに入ってきた。
アナライズで見てみると、スラッドはLv35、他のメンバーもLv33とかLv32とかだが、カインラスだけLv49と表示されていた。
強い上に、ずるい!!
スラッドは依頼を受けに行く足を止め、俺達の方へとやってきた。
「彼女は無事だったようだな」
と、リリーを見ながら笑顔で話しかけてきた。
そういえば、ロクにお礼も言ってなかったな。
改めてお礼を言い、
「スラッドもBランクおめでとう、これからよろしく頼む」
「ああ、こちらこそ」
軽く握手をし、その後、彼らはギルドの依頼を受けに行った。
カインラスは相変わらず不愛想だが、どういう経緯でスラッド隊に入ったのかすごく気になった。
彼らが去った後、俺たちも依頼を受けようとしたが、
「何でも、防衛戦で最後まで戦ってくれた彼に感銘を受け、ひたすら一緒に戦って欲しいと懇願したらしい」
いつから居たのか、リアギーが教えてくれた。
そしてガロンに対しても、負けてられないなと、Bランクへの意気込みを強く語っていた。
――夕方になり、依頼も終え、酒場で飯を食っていた。
すると、
「隣、いいか?」
珍しく、酒場でヒュロスが声を掛けてきた。
何かと思えば、やっと今日から冒険者活動を再開したという報告だった。
俺はと言うと、彼らが休んでいる事すら知らなかった。
休んでいた理由を聞くと、防衛戦で心が折れていたからだと素直に教えてくれた。
それを聞き、彼の剣がレッサーデーモンに握り折られた事を思い出した。




