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第38話 石になったリリー

 一応、なぜこの依頼を俺達に渡してきたのかを聞くことにした。

 ただの偶然なのか、それとも…。


「フリート隊の方は、Dランクの頃からディザーの街に行ってましたし、Cランクの時は防衛任務にも行ってたので、馴染みもあるかと思いましたが…逆に行きにくかったりしますか?」

「…いや、大丈夫だ」


 やはりと言うべきか、以前行った事のある街だから適任と考えたのだろう。

 もしかしたら、ギルドは各隊の特徴や得手不得手、色々考えているのかも知れない。


 ギルドを出て、色々準備をしてから、いつものように馬車でディザーへと向かった。

 移動時間が長いのは既に知っているため、暇つぶしも兼ね、


「みんなはマイホームが手に入ったら、何がしたいとかあるか?こういう家にしたいとか」


 俺からの問いに、それぞれ考え始めた。

 何か思いついたのか、トゥルニーが最初に答える。


「訓練所が欲しいです!」


 訓練所か。

 新しい技とかを試す時は、毎回街の外まで行ってたから、その気持ちも分からなくもない。

 しかし彼女の力なら、家がぶっ壊れるのは必至。

 取り合えず他の者の答えも待つ。


 次に答えたのは、クィナだった。


「一階には、大きな水族館があって、二階から、街を一望できる素敵なテラスがあって、地下には、魔法研究施設も欲しいです。あと、身なりを整えてくれる人とか、ベルを鳴らせば執事が直ぐに来て、私が"今日のご飯は何かしら?"って言ったら”暖かい高級なスープと高級なライス、そしてお嬢様の大好きな、高級なメインディッシュ、食後に高級なデザートもご用意しております"なんて――」


 ……長い。

 ただのマイホームにどれだけ夢を詰め込んでいるんだろうか?

 数分間にも及ぶ彼女の演説のような妄想がやっと終わったところで、


「左様ですか、お嬢様」

「はい~」


 全てを言い終え、満足した様子だった。

 完全に妄想の世界に入って、すっかりお嬢様気分になっているようにも思えた。


 あとはリリーだけだが、まだ答えが出ない。

 そんな彼女に、何でもいい、好きなものとか無いのかと聞くと、


「釣りがしたいです~」


 渋い!!

 お前はそういう感じじゃないだろ?

 もっとこう、可愛いものが欲しい、子供っぽいのが欲しい、そういう偏見を俺は持っていたのに、なぜ予想を裏切ったっ!?

 と、心の中で思いつつも、


「釣りかぁ~、出来るといいな、偉いぞリリー」

「ふふぅ~~ん」


 我が隊の姫様は大満足な様子で、俺に抱き着いてきた。

 すまんなみんな。

 君たちの希望は全く叶えられないと思う。

 しかし、マイホームの話が予想以上に盛り上がり、移動中、飽きる事は無かった。


 ちょうど会話も一区切りした頃、馬車が止まる。

 もう着いたのか?

 と思っていたが、


「ここまででいいかい?」


 御者が顔を出し、尋ねるように声を掛けてきた。

 どうやら、ここから先はモンスターが出て危険らしい。

 それだけ聞いて直ぐに理解した。

 ディザーの街が壊滅したため、安全が確保できない状態なんだろう。


 馬車を降り、目的地まで歩く事にした。

 見覚えある景色、ディザーまでそう遠くはない。


 30分程歩いただろうか?

 街より先に、モンスターの姿が見えてきた。

 蛇系とワームか。

 クィナの魔法で全て倒せるが、またいきなり強いモンスターが出るかも知れないと考え、MPは温存。


「トゥルニー、行くぞ」


 敵の強さは既に知っているため、苦も無く大体の敵を倒しながら、街へ向かう。

 今、俺のレベルが46、他は全員45。

 防衛戦で一気にレベルは上がったものの、決して油断はしないっ!!


 やがて街が見えて来るが、これまで強い敵は居なかった。

 だが、ディザーでの防衛戦を思い出したり、ノキュル隊の強さを考えれば、必ず強い敵がいる!

 俺の直感がそう告げていた。


 街に入ると、原型はとどめているものの、屋根が欠けていたり、完全に潰された状態のものばかりで、無傷の建物は一つも無かった。

 ギルドは半壊しており、どう見ても蛇系やワーム系による攻撃でないのが分かる。


 街中を歩いている俺たちの気配に気づいたのか、建物の陰からモンスターが現れた。


「ハーピーか」


 ノキュル隊の強さで考えると強い部類の敵だが、倒せない相手ではない。

 そして当然俺達の敵でもない。

 数体いたハーピーをあっさり倒し、他にモンスターが隠れていないか慎重に探す。


 モンスターは隠れているのか、中々姿を見せないが、殺気は感じる。

 辺りを見渡すと、地面に人影のようなものが倒れているように見えた。

 人型のモンスターだと思い近づいてみると、


「石像??」


 地面に倒れるような形で、人の姿をした石像がそこにはあった。

 だが…これは…


「石化…だな」


 直ぐに、石化対策用の中和ポーションを飲む。

 仲間たちも俺と同じ行動を取ると、鋭い殺気が放たれた!!

 咄嗟に身をかわすが、特に何かが飛んで来た訳ではない!!

 何かあると思われる方に目を向けると、そこには人型のモンスターが俺たちを睨むように殺気を放っていた。

 下半身は蛇、上半身は女のような姿だが、髪は蛇。


「まさかっ!メデューサ!?」


 アナライズを使ってみると、Lv44と表示されている。

 しかも一体だけだ。

 俺の知識だと、睨まれるだけで石化するはずだが、あの殺気を食らうと石化するのだろうか?


 動きは遅いが、時折目が光る。

 その視線を難無く避け、首をはねる。

 一瞬の断末魔を上げながら、メデューサは絶命したが、


「あっ!!」


 俺の背後にいた、リリーが声を上げる。

 振り向くと、彼女は石化していたっ!!


「なぜ石化!?中和ポーションが効いてないのか!?」

「フリート様!落ち着いてくださいっ!あのポーションはブレスのみ効果があるんだと思いますっ!!」


 ――そうだったっ!!

 実際俺も、それを警戒してメデューサの睨みを避けていたにの!!


「ひとまず撤退だっ!!ゲートで戻るぞっ!」


 …だが、ゲートは出てこないっ!!

 何をしているっ!!

 早くゲートで戻らないとっ!!

 俺が焦って仲間を見ていると、


「隊長…リリーは石になっていますよ…」


 慌てる俺とは対照的に、二人は冷静だった。

 何をしている俺っ!!

 まず、何をすればいいっ!?


「フリート様、石化は教会で治ると言ってたので、リリーを教会まで運んでみては?」

「あ…ああ、そうだな…」


 そうだ、石化は教会で治せるんだったな…。

 俺が石になったリリーを持ち上げようとするも、重いっ!!

 持ち上げれない重さではないが、相当重いっ!!


 一度、地にゆっくり降ろし、どうするか考える。

 持ち上げて帰るにしても、レギュンの街まで歩いていくと、10時間近くはかかるだろう。

 石化してから何時間以内なら治るとかあるのかどうか。

 制限時間がないなら、何時間かけてでも、なんなら引きずってでも、リリーを持ち帰るが、もし制限時間があったら終わりだ!!


 ――そうだっ!!

 街なら当然、荷台があるはずだ!!


「クィナ!トゥルニー!荷台を探すぞ!」


 真っ先に動いたのは、トゥルニーだった。

 心当たりがあったのだろうか、直ぐに見つけて持ってきてくれた。


 石になったリリーを荷台に乗せ、そのまま動かす。

 直接持つより、だいぶ楽ではあるが、どうしても移動速度は出ない。


 それでも街を出て、レギュンを目指して移動する。

 モンスターを排除するという依頼等、今はどうでも良かった!

 一刻でも早く、リリーを教会に連れて行く!!


 行商人や何らかの理由で馬車が通る事を期待していたが、ディザーの街が壊滅したことが原因か、馬車は一切見かけず、やがて日が暮れた。


 星明りしかない暗い道を、延々と移動する。

 途中モンスターが現れたりもしたが、トゥルニーとクィナが直ぐに対応してくれたため、足を止める事なく移動し続けられた。


 何時間移動しただろうか?

 やっとレギュンの街が見え、そして街の中へと入る。

 かなり急いで来たため、俺は息を切らし、汗だくになっていた。


「フリート、何かあったのか?」


 たまたま歩いていたスラッドに声を掛けられる。

 俺が移動しながら事情を説明すると、


「教会に持っていけばいいんだなっ!俺が持って行く!」


 そう言って、俺の代わりに荷台を引っ張っていってくれた。

 クィナもずっと移動を続けていたため、その場に座り込んでしまった。

 トゥルニーだけは、まだ体力が残っていたので、スラッドに同行させ、俺達は一旦休む事にした。


 頼むっ!どうか間に合ってくれっ!!

 既に足はガクガクと、悲鳴を上げていた。

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