第34話 終わりなき防衛戦
ガゴンッ!!
ヒュロスが最後のマジックゴーレムを破壊する。
サラマンダーは既に駆逐し、グランドタイドに飲まれたオーガも、数体生き延びてはいたが、だいぶ弱っていたため、各個撃破で一段落した。
「ふぅ~、これで全部か?」
「ここはな」
含みを持たせた言葉に、南方に目を向ける。
ファイアーストームやサンダーストームのせいか、いつの間にか霧は無くなっていた。
代わりに、見通しが良くなり、遠くの敵も見えるようになっている。
単に遠いだけではなく、夜という闇の中ではっきりとは見えないが、まだ何かいるのだけは、はっきりとわかる。
「撃ちますか?」
「ああ、頼む」
ヒュロスの言葉に応じて、その魔法使いがサンダーストームを撃つ。
それに合わせるように、オンカイム隊の魔法使いもファイアストームを放つ。
確かにこれで大量の敵にダメージを与えてはいるが、どうにも引っ掛かる。
わざわざ範囲魔法のあるところを敵が突っ込んで来るだろうか?
「来るぞっ!」
そんな俺の考えは杞憂だったのか、やはり正面から敵が来た!
次は、ディザーの街で出会った、レッサーデーモンだっ!!
魔獣と違い、知能が高く、そして強い!
そんなイメージの強い敵だ!!
その敵が今度は5体もっ!!
「気合砲!!」
「流星乱舞!」
ヒュロスによって動きが止まった瞬間をセルシャは見逃さず、両手に持った短剣でレッサーデーモンを高速で斬りまくる!!
「グアアアアアアッ!!」
デーモンは叫び声を上げながら、その場に倒れる。
俺たちがあれだけ苦戦した敵を、一撃で倒しているっ!!
――いや、俺たちも強くなっているっ!!
「光弾っ!!トゥルニー!クィナ!」
「ファイアボール!」
「強撃!!」
俺の攻撃に合わせ、二人も攻撃を重ねる。
ファイアボールは弾かれたが、トゥルニーの槍はデーモンの腹を貫いていた。
「旋風戟!!」
そのまま槍を回転させ、デーモンは絶命した。
残り3体っ!!
「鬼神流・爆裂掌!」
「アイスアロー!」
ルーツェンの謎の体術で、デーモンの体が弾け飛び、仲間の氷がその顔面に突き刺さった。
残り2体っ!!
「おい!!またサラマンダーが来たぞっ!!」
「一体何体残ってるんだ!?」
サンダーストームはどうか分からないが、ファイアストームによるダメージは無いと見ていいだろう。
さっきよりも数は多く、20はいるだろうか?
「まだ何か来るぞ!!でけぇ!!」
「くっ、ジャイアントか!!」
サラマンダーの後ろから、トロールよりも一回り大きい巨人が1体、地面を揺らしながら向かってきているっ!!
アナライズで見てみるとLv59と、今回の敵の中で、一番強いっ!!
あれが最後の敵か?
「デーモンは全部倒しましたっ!!」
「ようし、サラマンダーをまとめて倒す!上手く引き付けるぞっ!」
その言葉を理解し、魔法組はアイスアローでサラマンダーを誘導し、中央にまとまるようにした。
そして間合いに入ったのを見計らって、ヒュロスのグランドタイドがサラマンダーとジャイアントを襲う!
「ガアアアアアアッ!!」
地の波を力任せに追い返すかのように、ジャイアントの持っていた大剣がグランドタイドを打ち破る!
だがヒュロスは、自分で撃ち出したグランドタイドに乗っていたのか、ジャイアントの頭上を取っており、
「ドミニオン・インパクト!!」
ズドォーーーーン!!
一撃でジャイアントの頭を潰した!!
すげぇ…。
「はぁ…はぁ…」
「リフレッシュ!」
「助かった」
流石のヒュロスも、スキルを連発で使い、戦い続けた事で息を切らしていた。
いくら魔法で回復したとは言え、完全回復にはならない。
一体敵はどれだけいるのだろうか?
そしてどこに潜んでいたのだろうか?
「またキマイラかっ!!」
「オーガも来ているぞっ!」
キマイラ3体、オーガ8体と、数は減っているが、終わりが見えない戦いだと、精神的にきつい!
「うおおお!!オーラブレイド!!ブレイクストライクッ!!」
今俺が使える一番高い攻撃力で、オーガを1体倒す。
キマイラは…ヒュロスたちに任せるしかないっ!!
俺達とルーツェン達でオーガを、ヒュロス隊がキマイラを、自然と対峙する敵に別れた。
「リフレッシュ」
「青ポーション使います!」
魔法組も回復で忙しくなってきている。
クィナは後どのぐらい持つのか?
リリーもシールドを何度も使っているが大丈夫なのか?
「鳳凰剣っ!!」
ドゴーーーンという爆発音とともに、最後のキマイラを倒したのが分かった。
そしてオーガも、
「鬼神流・爆裂掌」
最後の一体は、ルーツェンが倒した。
全員かなり息が上がっている。
リフレッシュを受けても、疲労が抜けきっていないのが表情からでもわかるぐらいだ。
そんな中、
「くっ!まだジャイアントが居たかっ!!」
ヒュロスの言葉に余裕が感じられなくなった。
いや、元から余裕なんて無かったかも知れない。
「ファイアボール!」
クィナが敵の顔を目掛けて魔法を放つも、敵も持つ剣であっさり防がれた。
そして、
「フリート様、MPが尽きました」
「そうか、青ポーションは?」
「もう既に2つ飲んでいるので、これ以上は回復はほぼないかと…」
既に2回…。
これ以上青ポーションを飲んでも、ファイアボール2発撃てるぐらいしか回復しないだろう。
それならば一旦休ませ自然回復の方が、万が一、長期戦になった時の事を考えれば良いだろう。
そこまで考え、クィナに撤退を命じた。
本来ならゲートで戻らせたいが、ゲートの消費MPが分からない上に、リリーの残りMPも不明だ。
「きゃあっ!」
「グオオオオオオッ!!」
――なんだっ!?
クィナの声だっ!!
ジャイアントから距離を取り、声の方を向くと、街道の側面から、トロールが数体、そして黒く巨大な犬も数匹!!
初めて見る敵だが、Lv35となっていて、本来なら難無く倒せる敵だが、今は目の前のジャイアントから離れる事が出来ないっ!!
「ヘルハウンド程度ならっ!高速剣っ!!」
いち早く動いたのはリアギーだったっ!
一番近くにいたというのもあるが、きっちり倒していた。
「うおおっ!!スラッド!!俺たちも行くぞ!スパークナックルッ!!」
「任せろっ!!強撃っ!!」
ガロンたちも、トロールに向かって攻撃を仕掛ける。
敵の攻撃を上手く避け、それぞれ攻撃を当てるが、倒しきれていないっ!!
「アイスアロー!!」
「ライトニング!」
だが、ガロン達が動いたのを見て、Cランクの魔法使いたちも攻撃を重ね合わせる。
こうしてやっと一体、トロールが地面に沈んだ。
「くそっ!俺の失態だっ!!」
ヒュロスが苦虫を噛むような表情で、後悔のような言葉を漏らす。
範囲魔法で街道をふさいだせいで、その魔法に耐えれないと考えたモンスターが迂回をしたという予想だ。
確かに、目の前に強烈な範囲魔法があれば、耐えれないと分かっているモンスターが自ら飛び込むとは思えない。
それでも、ガロン達が奮闘している様子から、そう簡単には崩れないと考え、目の前のジャイアントをどう倒すかだけに意識を集中させた。
「千本桜!」
セルシャがジャイアントに無数のナイフを飛ばす。
いくつかは剣で叩き落されるも、残りはジャイアントに命中。
しかし、この巨人相手にナイフ、しかも一本一本のダメージが軽いのか、刺さる事なく地面に落ちて消えていった。
「こっちだっ!!はぁぁ!!ドミニオン・インパクト!!」
「グオオオォォッ!!」
ズドーーーーン!!
いつの間にか敵の背後に回っていたヒュロスが、一撃でジャイアントを倒した!!
――!!
「はぁ…はぁ…」
「に、逃げろーー!!」
もう一体のジャイアントが膝を付いているヒュロスに攻撃を仕掛ける!!
ドゴォォォォーーン!!
敵の大剣は地面を叩くように、砂煙を上げた。
――まさかっ!!
「大丈夫よっ!」
煙の向こう側に、ルーツェンがヒュロスを突き飛ばしたのか、何とか避けている様子が分かった。
一撃をかわしたは良いが、まだ危機を乗り越えた訳ではない。
「オーラブレイドッ!!ブレイクストライクッ!!」
ズドォォォーーーン!!
ジャイアントの足目掛けて攻撃をする。
手応えありだっ!!
巨体は体を傾け膝を付くも、その隙を逃さないかのように、
「超落下突き!!」
トゥルニーの槍がジャイアントの脳天を貫いた!!
力を失った巨人は、そのまま地面に倒れた。
これで強敵は全て倒したのか?
そう願ったが、
「ガルルルルルッ!!」
今までにない威圧感を肌で感じた。




