第26話 新しい目標はマイホーム
バトル大会から半月近くが過ぎた。
依頼を着々とこなし、レベルも上がり、金もかなり貯まった。
「やっと30万G超えたぞ!」
「凄いですぅ~」
時々防具が損傷して買い替えたり、依頼が上手く行った時は豪華な食事をしたりもあったが、これで完全に金欠で苦しむ事は無くなりそうだ。
そしてここで、新しい目標も立てた。
「マイホームを買おう」
宿屋暮らし、しかも1部屋で4人で泊まるという生活。
俺は別に良いのだが、仲間である女3人、いや、リリーは気にしてないから2人…いや、トゥルニーも気にしてないからクィナだけか?
とにかく、マイホームを持ちたい!!
「いいですね!!」
真っ先に賛成したのは、クィナだった。
それに釣られるように残りの二人も賛成してくれた。
まあ、不満があったかどうかわからないが、マイホームの方が安心感はあるし、色々出来そうなイメージはある。
そして調べた結果、郊外の住宅地で中古でも240万Gというものだった。
ちなみに他冒険者にも聞いてみたところ、
Bランクのチームは、隊でマイホームを1つ持っている。
Cランクのほとんどのチームは、賃貸住みとの事だった。
賃貸住みも良いと考えたこともあるが、家具とかを揃えるとなると、意外と金がかかる。
家賃も月々5万Gと、中々に高い。
それに、遠くに行く事もあるし、宿屋暮らしにすっかり慣れてしまったため、
「宿屋でも全然大丈夫です」
「そうそう、野宿の頃と比べれば全然」
「ベッドふかふかですぅ~」
今の暮らしでも良いと気を遣っているのだろうか?
全く判断できないっ!!
だから俺はマイホームを目指す!!
ギルドの2F、いつものテーブル席に座る。
もちろん内容は、
「そろそろBランク試験を受けるかどうかだ」
この話を切り出した理由としては、俺のレベルが40になったからだ。
しかし躊躇する理由は、前衛でトゥルニーがLv38、クィナはLv39で問題ないのだが、リリーがLv37ということだ。
一応ヒュロスに話を聞いたところ、少し厳しいという評価だった。
それとBランクの試験料は10万Gと高額。
ちなみに、オンカイム隊は近々Aランク試験を受ける予定であることも、この時知った。
試験料は100万Gらしい。
どうやら、ランクが1つ上がる毎に桁が1つ増え、実に分かりやすい。
そんな事を仲間と話していると、
「フリートさん、少し時間ありますか?」
と、受付嬢が不安そうな顔で尋ねて来た。
一体何かあったのかと問うと、ディザーの街に魔物の群れが街に向かっているため、防衛戦に当たって欲しいということだった。
「いやいや、無理っしょ!!だってこの前、この街の防衛戦ですら、Bランクの人たちがいても、結構ギリギリだったんだぜ?」
と、あの時の事を思い出す。
いくら強くなったと言っても俺たちはCランク、しかも俺たちの隊だけでってなると無茶ってもんだ。
しかし受付嬢は、その規模ではないと言う。
敵の強さも数も大群ではなく、あくまでも群れ。
もちろん、ディザーの街の冒険者たちや自警団の人たちが頑張れば、何とかなるかも知れないけど、死傷者が出る可能性が極めて高いとの事だった。
「ですので、以前ディザーの街に行った事があり、ギルド内ではCランクで一番評価の高いフリート隊にお願いしたいのですが…」
確かに、ディザーの街には少なからず愛着はあるし、死傷者は出て欲しくない。
Bランク隊に依頼しないのかと聞いたところ、
オンカイム隊は、別依頼で忙しく、ヒュロス隊もギルドの都合で優先して欲しい依頼を頼んでしまい、ルグルス隊はギルドに寄らないため声を掛けれなかったということだった。
「いえ、こちらも無理強いはしませんし、ガロン隊やリアギー隊に――」
「いや、取り合えず報酬を聞いておきたい」
「あ、報酬ですか?えっと、一応6万Gで――」
「引き受けよう!!」
決して、報酬に目が眩んだ訳ではない。
6万Gというのは、Bランクではほぼ最低額に近い金額だが、このぐらいこなせなければ、Bランク試験にも受からないだろう。
と、仲間にも説明しておいた。
「流石フリート様です!力試しのためですね!」
「なんで報酬額を聞いたんですか?」
「俺は隊長だ、仲間のために報酬を聞いておいた、そうだ!お前たちが納得する額かどうかって大事だよなっ!!仮に報酬1Gとかで引き受けたら、お前たちだって不満言うだろ?な??」
「おっかね、おっかね、おっかね、おっかね」
リリー、お金お金言うの止めなさい。
馬車で5時間、ディザーの街到着。
少し暑い感じが懐かしい。
既に昼を少し過ぎたぐらいか?
「前回ここへ来た時って、Dランクの依頼が無いって言ってた時でしたよね!」
言われて思い出す。
スネークやワームと戦ったりした日々、新しい装備もここで買ったんだったな。
あれからどのぐらい経ったんだろう?
凄く昔のようにも思えるが、まだ1か月ちょっとだったはず。
当時の事を語り合いながら、ギルドへと向かう。
中に入り、早速詳しい内容を聞いた。
その内容と言っても、冒険者に偵察依頼を出し、分かる範囲で持ち帰った情報というものだった。
「西の荒野の方から、スネーク系、バッファロー系が多数と、少数ですが、コカトリスとマンティコアらしきモンスターも見られたとなっております」
コカトリスとマンティコアは、未だ見た事はないため、そのモンスターの特徴を聞いてみると、
マンティコアは、爪や牙、特に尻尾には猛毒があるので要注意。
コカトリスは、石化ブレスがあり、それを吸ってしまうと石化するので要注意ということだった。
息を止めてれば防げるが、止めっぱなしは無理だ。
対策としては、石化を打ち消す中和ポーションを飲んでおくことらしいが、効果時間は20~30分ということ。
マンティコアの猛毒に対しては、強力な解毒ポーション。
それ以外となると、教会で石化解呪、猛毒治癒といった方法しかないと言われた。
その後は、大体いつぐらいにその群れが来るのか、どこで防衛すれば良いのかを聞くと、夜に西側とだけだった。
具体的な時間は分からないようだ。
「敵なんて待たずに、こっちから攻めちゃったらどうなんですか?」
「いや、厳しいだろ」
仮に攻めたとして、途中でMPが尽きる、スタミナが尽きる、毒や石化、まあこれ自体はゲートで逃げるという手もあるが、戻り先がレギュンの街になる。
そして、Dランク冒険者が付いてこれるかどうか…。
「何より、街から離れて、他の方面から突然モンスターが攻めて来た場合、何も出来なくなる」
俺の答えに納得したのか、深く頷いてくれた。
その後は、道具屋で必要なアイテムを買い、そして夜に備えて宿屋で休んでおく。
眠くなくても体を横にし、夜の戦いに備えておいた。
夜になり、不気味な静けさが訪れる。
既に街の人たちは、魔物の群れが来る事が知っているため、どこか落ち着かない様子の雰囲気がある。
そんな中、
カーンカーンカーンカーン!!!
「敵襲!!敵襲!!」
……来たかっ!!
俺たちは起き上がり、西側へと歩き出す。
レギュンの街と違い、門という立派なものはなく、簡易的な柵があるだけだ。
既に、この街で唯一のCランクの冒険者らしき人物が指揮を執っており、Dランクに指示を出しておいた。
アナライズで見てみると、Lv29と出ており、この街ではダントツに強い冒険者だ。
そんな彼に声を掛け、レギュンの街から来た事を伝えると、
「助かりますっ!あのガロンさんやリアギーさんより強いという報告も受けていますっ!俺は今回の指揮を執らせてもらうノキュルと言います」
薄暗くてよく見えないが、斧を持っていた。
体格自体は俺やリアギーとあまり変わらないが力があるのだろうか?
その後、彼の指示で、俺達の隊が先頭、ノキュル隊、更にその後ろにDランクの冒険者達、という配置になった。
「クィナ、敵が射程内に入ったら、ファイアストームを一発だけ撃つんだ」
「一発だけですか?」
「ああ、そうだ。二発撃てるだろうが、それだとMPがほぼ空になるだろ」
今回の防衛戦での最大戦力は俺達だ。
特に遠距離魔法を持つクィナが早々に撤退すると、苦しくなる可能性が高い。
配置に着く。
辺りをたいまつが照らしている。
だが遠くまで照らす程ではない。
そんな暗闇の中、モンスターの群れと思われる地響きだけが耳に届いた。
「来るぞっ!!」
後ろにいる冒険者にも聞こえるように声を上げた!!
未知のモンスターがいる上、俺たちが撤退する訳にもいかない緊張感の中、敵の姿が薄っすらと暗闇から浮かび上がって来た!!




