第22話 山に住む剣豪
ギルドでは色々な事があった。
今回の防衛戦で最も活躍したヒュロス隊には、この街で最大級の勲章であるゴールド星バッチが与えられた。
ルグルス隊とオンカイム隊は、シルバー星バッチ。
ガロン隊、リアギー隊、そして俺の隊は、ブロンズ星バッチが与えられた。
と言っても、ギルドに来るのがバラバラだったので、偉い人から直接貰った訳でなく、ギルド員から渡されたものだからか、いまいち勲章の良さが分からない。
しかも、あれだけ頑張ったのに報酬やら賞金やらも出ないと来たもんだ。
そしてこれはギルドにいた冒険者から聞いた話だったが、今回の防衛戦で負傷者が数名出た事もあり、冒険者を辞めたり、隊が解散になったりしているところもあったとの事。
実際ギルド名簿を見てみると、Cランクは1隊、Dランクは3隊、Eランクは良く分からないが、減っていた。
「フリート様、勲章ですよ勲章!!おめでとうございます!!」
「流石隊長!」
「すごいですぅ~」
仲間たちは勲章を凄いと言うが、使い道が分からない。
一番驚いているクィナに、勲章の使い道を聞いてみたが、分からないらしい。
「で、でも、領主から直々のものですし、きっと何か良いことありますよっ!」
とは言うが、領主が防衛戦でやった事と言えば、正規兵を出したぐらいだ。
やはり有難みが薄い。
むしろ、防衛戦でかなりの数のモンスターを倒したから、俺たちのレベルも普段の依頼よりも上がっていて、俺のレベルは29になっていた。
依頼もやる気が起きず、ギルドの2Fでダラダラと時間を潰していると、
「この街の近くに、すごい剣豪がいるって噂だぜ」
「ああ、俺も聞いた!どのぐらい凄いかは知らないが、噂だとヒュロスと互角ぐらいの強さがあるって言ってる奴もいたな!」
という噂話が耳に入った。
ヒュロスと互角ぐらいっていうのは、かなり怪しいが、本当にそんな人がいるのだろうか?
噂をしている冒険者たちに詳しい話を聞くと、北西の山奥に住んでいるらしいということだった。
それを仲間にも伝えると、やはり信じられないという感じだった。
「依頼もやる気起きないし、ちょっと行ってみないか?」
「いいね!!行きましょうっ!」
「行くぅ~~」
初めて、この山に来てみたが、人が登れる道があった。
道なりに進むと、途中モンスターはいたが、Lv10前後なら、全く問題ない。
俺たちも強くなったもんだ。
かなりの高さまで来たところで、少し落ち着いた平地に出た。
「あれじゃないですか?」
先頭を歩くトゥルニーが小さな小屋を指す。
ただの山小屋と思っていたが、確かに人が住んでいてもおかしくない。
近づいてみるも、人の気配はなく、ドアをノックするも返事がない。
留守だろうか?
と思った瞬間、
「誰だ?」
背後から声を掛けられた。
いつの間に、背後を取られていたのかさえ気づかなかったが、ゆっくり振り向くと、皮鎧を装備し髭を生やした30代後半ぐらいの男が立っていた。
「ここに剣豪がいるという噂を聞いて来たんだが、あなたが噂の剣豪かい?」
極めて平静を装って聞いてみたが、内心警戒もしていた。
なぜならLv47と表示されていたからだ。
ヒュロスよりはレベルは少し落ちるが、ルグルスと同じレベル、今の俺達より遥かに強い。
何より冒険者でも何でもなく、善人か悪人かの判断すら付かない。
だから敵意が無い事を示しつつ対話を試みた。
「俺が噂の剣豪かどうかは分からないが、ここには俺しか住んでいない」
不愛想に答えるところを見ると、相手も俺達を警戒しているのかも知れない。
そこで、名乗ったあと、レギュンの街の冒険者であることと、仲間を紹介し、ここへ来た理由も話した。
そこでようやく男の表情も少し和らいだ気がした。
「俺はカインラスだ。少し前からここで暮らしている」
彼がなぜ、ここで暮らしているかは不明だが、今はそんな事はどうでもいい。
せっかくだから、少し手合わせしてもらいたいと願ったが、断られてしまった。
理由を聞くと、
「俺に得が無い」
とだけ答えた。
損得勘定で動くタイプか?
もう1つ気になっている事を聞いた。
それは『バトル大会』に参加するかどうかだ。
レベルだけならオンカイムやヒュロスの方が確実に上だが『剣豪』とまで言われる程の人物、優勝候補になってもおかしくないし、賞金というメリットもある。
細かいルールは説明せず、優勝と準優勝の賞金だけ伝えると、少し考えてから、
「金は欲しいが、見世物になるつもりはない」
これもまた断ってきた。
彼なりの考え方があるのか?
こんなところに一人で住んでる事からも、人嫌いなのかも知れない。
他に聞くことも無いし、手合わせも出来なかったということで、俺たちは去る事にした。
もちろんゲートの魔法で!
「変わった人でしたね」
「本当に噂通りヒュロスさんと互角ぐらいの強さはありそうな雰囲気はありましたね」
「眠いですぅ~」
各々が感想を話している中、俺は別の事を考えていた。
冒険者でなくても、世の中には彼のような隠れ猛者が結構いるのかどうか。
そして彼は一体どこからやってきたのかだ。
まあ、聞いても答えてくれなさそうな感じ。
それから数日が過ぎ、カインラスに関する噂も減り始め、俺達は俺達で、Cランクの依頼を着々とこなしていた。
あの防衛戦に比べると、依頼内容はやはり何とでもなる、という考えになってしまう。
俺はLv32、トゥルニーとクィナはLv31、リリーがLv30と、全員のレベルが30以上となった。
新しいスキルや魔法も、それぞれレベル30辺りで覚えることから、ひとつの区切りになってるのかも知れない。
俺は『稲妻斬り』。高速で駆け抜けながら斬るというものだ。
トゥルニーは『落下突き』。大きく飛んで、落下しながら刺すため、とても威力が高い。
クィナは『ライトニング』。威力は低いが、魔法が発動すると同時に当たるような速度で、しかも一瞬麻痺効果もある。
リリーは『フライ』。宙に浮くことが出来るが、移動速度はかなり遅く、徒歩とあまり変わらない。
「強くなったし、新しいスキルも覚えた!バトル大会が楽しみだ!」
「いよいよ明日ですねっ!」
「フリート様とトゥルニーの活躍、しっかり見ていますね」
「応援するぅ~!頑張ってぇ~!」
少しわくわくしつつ、闘技場へやってきた。
既に参加は締め切られ、参加者全員の名前が載ってある。
しかも、優勝予想というものもあり、上位20名までの名前が載るようになっていた。
一体いつの間に、こんな投票があったかは不明だが、俺の知っている名前だけだと、
----------
1位:オンカイム、3863票
2位:ヒュロス、1697票
3位:ルグルス、634票
4位:セルシャ、611票
5位:ルーツェン、247票
6位:ラルバ、198票
7位:ガロン、33票
8位:リアギー、27票
11位:スラッド、14票
13位:フリート、11票
----------
「まあ、1位と2位がダントツだな」
「フリート様も13位に入っていますよっ!」
「私の名前が無いぃぃぃ~~!」
「隊長すごぉ~~い!」
オンカイムとヒュロスでほとんどの票を取っているものの、そんなヒュロスの2倍以上の票を取っているオンカイムは、一体どれだけ強いのだろうか?
次に目についたのは、ルグルス隊副隊長のラルバとCランクで一番レベルの高いガロンの差。
やはり、BランクとCランクで大きな差があると見た。
トゥルニーの名前が無いのは、知名度とかも大きく影響していると考えた。
実際、隊長の名前は上に来やすい感じがしている。
「まあ気にするな、俺たちはCランク上がって間もないし、他の人からすると判断付かないだろう。大会で見返してやろうぜ!」
「そうですねっ!!」
闘技場を後にし、明日の大会に備え、今日は早めに宿へ戻り休む事にした。
楽しみ半分、緊張半分。
今は大会の賞金よりも、二次予選を突破し、決勝トーナメント進出することを考えるようになっていた。




