表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/42

第19話 引き際が大事

 ドスッ!!

 リアギーが最後の一体を剣で突き刺す。


「これで終わりのようだな、フリート隊は大丈夫か?」

「ああ、なんとかな…」

「隊長~、リフレッシュ!」


 物陰で待っていたリリーが駆け付け、スタミナを回復してくれた。

 外と違い、ダンジョン内という限られた空間だと、リリーのようなヒーラーは戦闘に参加しにくい。


「Cランクになったばかりの割には、しっかり戦えてるじゃねぇか!」

「そうか?」


 俺達が倒した敵は、せいぜい5体。

 一方ガロン隊は20…いや、30近く。

 リアギー隊もかなり倒していたように見えた。


 そしてガロンの提案により、小休憩を取り、再び奥へと進む事になった。

 一体どこまで続くのだろうか?

 そんな事を考えていると、ガロン達は足を止める。

 どうやら次の広間のようだ。


「ありゃ~、サキュバスとインキュバスだな」

「ああ、インプもかなりいて厄介だな」


 エロいで有名なサキュバスか。

 どれどれ、アナライズっと。

 エロい格好をしたサキュバスはLv41、ナルシストっぽい感じのインキュバスはLv37。

 しかも多数いる。


「やはり、魅了とかやってくるのか?」

「ああ、それだけでなく、幻覚やドレインも使ってきて厄介だ。ここらが潮時だな」

「そうだな。引き返そう」


 え?

 そんな簡単に帰るのか?

 こっちは3隊、まあ俺達は戦力外だとしても、ガロン隊とリアギー隊はレベル的にもいけそうな感じもするが、これがベテランの引き際ってやつか?


「おい、ゲートを出せ、帰るぞ」

「はっ!ゲート!」


 ガロンが隊の人に声をかけると、ゲートが開いた。

 意外とゲート持ちって多いんだろうか?


 ゲートを通ると、ギルド近くに出た。

 次々とゲートから仲間たちが出てきて、やはり最後に術者が出て、ゲートは消滅した。

 俺がそのヒーラーらしき人物を見てると、


「どうよ、ゲートって魔法、便利だろ?」

「ああ、そうだな。俺たちもよくリリーのゲートを利用している」

「…なにぃ!?Bランクの魔法だぜっ!!いつの間に、そんな小さな子が!?」


 驚いた様子でリリーを見るも、何か納得したように頷いて、ギルドの中へを入っていった。

 依頼は達成していないと思うが、この場合どうなるんだ?

 一応、ガロンの後を付いて行くと、


「俺達の調査は終わった、一応俺たちの調査したところはこんな感じだ」


 それだけ言うと、何かの紙を提出。

 それを受け取った受付嬢は目を通し、お疲れ様とだけ言い、そこで話は終わった。


「え?依頼終わりなのか?」

「ああ、俺達の分はな」


 更に、さっきの紙は一体何かを聞くと、ダンジョンの構造やどんな敵が出たかを、待機していたヒーラーが紙に細かく書いていたという。


「別に、全部を明らかにする必要は無ぇ、どうせダンジョンの構造なんぞ変わっちまうからな」


 確かにっ!!

 つまり、大体の構造とどのぐらいの強さの敵がいるかが分かれば十分。できれば最深部まで行ければもっと良いが、それはルグルス隊次第との事だった。

 なら最初から、ルグルス隊だけで良いじゃないかと聞くと、


「未知のダンジョンは何が起こるか分からないからな。今回のように別れ道があった場合、彼の隊だけでは手間がかかる」


 ガロンの代わりにリアギーが、丁寧に教えてくれた。

 それに今回分かった事は、Cランクだけでは最深部に到達できないということだ。

 それだけでも十分な調査になるとも付け加えてきた。


「まあ、上でルグルス達を待とう」


 まるでルグルス隊がいつ戻って来る知ってるかのように彼らは2Fへと上がっていった。

 俺たちも続いて上がって行き、適当な席へ着く。

 待っている間、ガロンとリアギーが、今までどういう依頼を受けてきて、どういう敵と戦ってきたかを話し始めるが、正直興味が無かった。


 それから1時間もしないうちに、ルグルス隊がギルドへ戻ってきた。

 遠くから観察していると、報酬を受け取っている。

 それを手に、俺達のいるところへやってきて、


「みんなお疲れ、報酬は各隊5万Gずつでいいな」

「――えっ!?」

「どうした?」

「いや、俺達ほとんど役に立ってないというか…」


 誰がどう考えても、一番活躍したのはルグルス隊であり、一番役に立っていないのは俺達だ。

 とても同額貰うのは気が引けた。

 しかし俺の気持ちを汲み取ってか、


「依頼を受け、内容によって活躍できる時とそうでない時がある。お前はその度にか”役に立ってないから”と言って仲間に対して報酬額を変えるのか?」

「いや、それはない!確かに活躍度合いが違っても、仲間がいたから達成できる依頼も多かった」

「そうだろ。だからお前は俺達と同じ額の報酬を受け取る権利がある」


 ――っ!!

 言われてから気づいた。

 俺は勝手に劣等感に駆られていたが、ルグルス達は俺たちを『仲間』だと思ってくれていた。

 これは彼がBランクだからとかではない、俺たちを対等な仲間と思ってくれてるということだ。


 俺は5万Gという報酬を受け取りつつ、いつか彼のような心構えが出来る冒険者になりたいと思った。

 俄然やる気が出てきて、受付嬢の元へと行き、


「何か調査依頼とかって無いか?」


 さっきのダンジョン調査は、あまりにも不完全燃焼過ぎたため、そう問いかけた。

 俺の問いに、受付嬢は調査依頼を探し始め、1枚の依頼書を俺の前に提示してくれた。


「これなんてどうでしょう?」

「どれどれ?”旧神殿に魔物が住み着いた。どんな魔物か調べてきて欲しい。報酬1万G"か」


 確か旧神殿は、西のダンジョンより少し奥にあったはずだ。

 ここからなら1時間ちょっと、馬車ならその半分の時間で行けるだろう。

 今はまだ昼だし、今日中に終わらせることもできるだろう。


 馬車に乗り、旧神殿近くへとたどり着いた。

 遠目からでも、少し大きめの建物のため、道に迷うことは無かった。

 更に近づくと、少し崩れた部分もあるが、神殿としてまだ使えそうに見えた。


「さて、今回はこの中にいる敵を見るだけだ。調査だけで1万Gだから、俺たちの手に負えない敵がいる可能性が高い」


 と、持論を述べ、クィナとリリーには待機してもらい、俺とトゥルニーだけで行く事にした。

 もしどうしようもなく強い敵がいた場合、俺が声を掛けたら、直ぐにゲートを出し、いつでも逃げれるように指示も出しておいた。


「トゥルニー、間違っても戦おうとするなよ」

「分かってますって」


 その神殿は、外からでも広間が見える程、開放的な空間になっていた。

 隠れる場所はほとんどないため、側面に回り込み中を見る。

 しかし、敵らしい姿は見えない。


「いないな」

「少し入ってみますか?」


 彼女の案には少し不安も覚えたが、他に手段が無いため、中へと入っていった。

 その刹那、


「オオオオォォォォォーーーッ!!」


 怒号が俺の体を貫いた!

 この声だけで分かる…俺達の敵う相手じゃないっ!!


「逃げるぞっ!!」

「は、はいっ!」


 広間を駆け抜け、神殿を抜けようとするも、後ろから大きな影が迫ってくる!!

 まるで巨大な悪魔だ!

 アナライズで強さを見ると、Lv63と出ていた!!


「マジかよっ!!」


 まともに戦って勝てる相手でもなく、このままでは追いつかれる!!


「ファイアボール!!」


 物陰から身を出したクィナが、追っ手に向かって魔法を放った!

 しかしその魔法は、巨大な手で簡単に弾かれた。


「リリー!!」

「はいですぅ~!ゲート!」

「トゥルニーは先に行けっ!!疾風剣っ!!」


 少しでも足止めをするつもりで放つも、何事も無かったかのように俺に近づき、鋭い爪で攻撃を仕掛けてきたっ!

 咄嗟に後ろへ飛ぶも間に合わず、


「ぐあっ!!」


 幸い、その攻撃はプレートに当たったため、致命傷にはならなかったものの、大きく後ろへ飛ばされた。

 お陰で、ゲートは目の前だっ!!


「みんな、ゲートに入れっ!!」


 俺の命令とともに次々とゲートに入り、俺はリリーを拾い上げ、そのままゲートへ飛び込んだ。

 直ぐにゲートは閉じ、安堵のため息を吐く。


「…何だあの敵は?」


 俺が愚痴るように吐くと、


「恐らくグレーターデーモンです」


 と、クィナが答えた。

 正真正銘、上位の悪魔だ。

 リリーを下ろし、胸元を見る。

 買ったばかりのブレストプレートに大きな爪痕が残っていた。

 もしこれが無ければ今頃、死んでいたかも知れない。

 運が良かっただけだろうか?

 改めて引き際の大事さを痛感した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ