第18話 ここからが本番
ルグルス隊がダンジョン入り口で立ち止まり、いつの間にか手に持った紙を広げ、
「ライト」
と一言。
すると、紙は溶けるように消え、代わりに光の玉が出てきて、暗闇を照らす。
瞬時にそれが『スクロール』だと分かった。
スクロールに書かれてある魔法を唱えると、MPを消費無しで、その魔法が使えるという消費アイテムだ。
ただし、魔法の効果は誰が使っても同じで、魔法使いのものよりは若干効力は低いとのことだ。
しかし、
「なぜわざわざスクロールを使うんだ?」
スクロールは安いものでも100G、高いものとなると1000Gを超えるものもある。
わざわざアイテムを使わずとも、魔法使いの誰かが使えば済む。
なんならクィナだって使える。
そう思って尋ねてみたが、
「俺の隊は、魔法使いがいない。仮にいたとしても、道具で代用できるならMPは温存しておくべきだ」
確かに、MPを温存できるなら温存したい。
くぅ~~~、常に金欠の俺には、そんな発想は無かったっ!!
ルグルス隊がダンジョンに入り、ガロン隊が続く、そしてリアギー隊も入る。
それぞれスクロールを使っていた。
「暗いですぅ~」
「今、明るくしますね。ライト」
俺たちはスクロールを持っていないため、魔法を使うしかなかった。
一瞬ルグルスが足を止め、俺たちの方を向いたと思ったが、直ぐに歩き出し、
「このダンジョンは、こういった通路が広間まで続いている。広間にはモンスターが待ち受けている。よくあるダンジョンだ」
まるで俺たちに聞かせるかのように話し始めた。
更にこのダンジョンは5層から成り立っていて、奥へ行くほど敵が強くなってるとも教えてくれた。
「もう直ぐ広間だが、敵がどのぐらいいるか見てみる」
各隊の隊長がルグルスの近くへと移動していたので、俺も移動し、広間を見る。
広間はたいまつが数本あり、少し明るくなっていた。
ダンジョン内で火を使っても大丈夫なのだろうか?
「あれはインプだな」
「俺たちが倒そうか?」
ガロンが前へ出ようとするが、ルグルスが手で制止した。
俺はというと、ゴブリンぐらいの大きさで羽の生えたインプというモンスターを見ていた。
薄暗いせいか認識まで少し時間はかかったが、Lv23というのが見えた。
今の俺達なら倒せるが、慣れないダンジョンということもあり、少し手間がかかりそうだ。
「俺たちが倒してくる、お前たちはここで待ってろ」
ルグルスがそう言うと、他のルグルス隊も前に出て、一気に広間へ飛び出した。
モンスターを叫び声と切り裂き音だけが聞こえ、ものの数秒で広間に静寂が訪れた。
「強い…」
「あっという間でしたね」
いつも間にか、俺の近くに来ていた仲間たちも、口をそろえるように、強い強いと声に出ていた。
隊長のルグルスはただ走っていただけで、近くのインプが倒れていった。
副隊長も攻撃は見えなかったが、一体ずつ確実に仕留める様子は見えた。
弓を持った男も、確実に遠くの敵を一撃で仕留めていってた。
ただ、恐らくヒーラーと思われる人だけは、特に何もすることがない感じだった。
「次は2層だ、行くぞ」
それだけ言うと、ルグルス達は再び奥へと進んで行った。
それよりも、一つの広間を一層という扱いなのか?
特に階段も無く、下り坂という感じもないまま、次に広間へたどり着いた。
あれだけの強さを誇りながらも、ルグルス隊は慎重に、広間の手前では足を止めて中の様子を見る。
「スケルトンナイトだな」
「次は俺が戦ってもいいか?」
「…いいだろう」
ガロンが戦うのか。
何度もギルドや酒場で話していたが、実際戦うところを見るのは始めてだ。
そんなガロンの相手となる敵はLv27と表示されていた。
「行くぞオラァ!!」
ガロンが大声を上げ、敵に突進していく!
そして殴る!蹴る!!
意外にも動きが速い!まさかの格闘家だったっ!!
他の仲間は剣や魔法を使っている事から、チーム構成は俺達と同じなんだろう。
「ふん!ざっとこんなもんだぜ!」
敵を殲滅させ、俺の方を見て親指を立てる。
もしかして、自分の強さを俺に見せるために戦ったのか?いや、まさかな…。
「ガハハ!フリート、見たか俺様の実力を!」
ああ…俺に見せるためだったんだな…。
いや、以前アナライズで見てたからLv34で強いってのは知ってるしっ!!
しかし、知っていても、普通に強い。
他のガロン隊メンバーも、傷も負っている様子もなく…??
「リフレッシュ。隊長、張り切りすぎです」
「いいじゃねぇかよ」
…ああ、意外と全力だった訳ね。
だとしても、俺達より遥かに強いのは確かだ。
そして何事も無かったのように再びルグルスは奥へと進み、広間の前で足を止める。
ちらりと物陰から広間を見て、
「ゴブリンとホブゴブリンだな」
「雑魚だなっ!」
あーあ、ガロンが大きな声を出すから、敵に気づかれた。
まあ、ゴブリンは確かに今の俺達から見ても雑魚だ。
しかし、3メートルはあろうかというホブゴブリンはLv29で、ゴブリンとのレベル差は20もある。
そんなホブゴブリンが数体、慎重に戦えば何とかなりそうだが、小さいゴブリンが意外と邪魔に思える。
「ふんっ!」
「オラッ!!」
ルグルス隊とガロン隊が前に出て、敵を蹴散らして行く。
少しは苦戦するかと思ったが、全くそんな様子もなく、あっさり殲滅させていた。
そして、
「隠し通路はこっちだ」
と、何も無さそうな壁に向かって歩き出すが、そのまま壁の中に入っていくように姿を消した。
俺たちも続くように近づいてみると、壁と壁の間に通路があった。
反対方向には目立つような大きな通路がある一方、この薄暗さでは、ただの壁にしか見えず、確かに気づきにくい。
そんな通路を少し歩いて行くと、小さな広間に出た。
そこで通路が二つに別れていた。
「俺たちは左側を行く。ガロンたちは右側を」
「ああ、任せなっ!」
そう言って、ルグルス隊は、左の通路へと消えて行った。
普通は隊を2つずつに分けて行くものだと思っていたが、確かにルグルス隊の強さを考えれば、この分け方の方が良いのだろう。いや、これでもルグルス隊の方が強いだろう。
「さて、フリート。ここからが本番だ」
「そうだぞ!ルグルス隊がいねぇからな、危ねぇって思ったら無理せず退く!これは絶対だ!」
「ああ、分かった」
リアギーの言う『本番』っていうのは、ルグルス隊に頼れないからという事だったか。
右側の通路に入ると、今までよりも少し狭いが、やはり敵はいない。
やがて先頭を歩くガロンが足を止め、広間があることを手を振り合図した。
俺も近くまで行き、広間を覗くと、人型と犬のようなモンスターがそれぞれ数体ずついた。
「あれは?」
俺がそう問うと、ライカンスロープとブラックウルフだと教えてくれた。
今までより広間がやや狭い分、部屋は明るく、敵の姿がはっきり見えていた。
ライカンスロープと呼ばれる人狼はLv33、ブラックウルフはLv28と、中々に強そうだ。
「俺が中央をやる、リアギーとフリートは左右の敵をやれ!」
「フリート隊は無理するなよ。引き気味に戦って時間を稼ぐだけでもいい」
「ああ、分かった」
完全に戦力外通告を食らった。
だが、二人の隊より明らかに弱いもの事実。
「トゥルニー、前に出過ぎないように戦うぞ」
「了解ですっ!!」
「行くぞぉぉぉー!!」
ガロンの雄たけびを合図に、各自モンスターへと攻撃を仕掛ける!
ガロン隊が中央に駆けて行くため、周りの敵もガロン達の方へと向かうが、直ぐにリアギー隊の一人が弓矢で攻撃。
俺たちも、右側へと回り込み、
「疾風剣!」
「アイスアロー!」
ガロンの方へ向かう敵に攻撃を当て、敵を引き付ける。
それでもガロン隊が一番多くの敵と戦っているが、俺たちも助けに行ける程の余裕はない。
ガロンより一回り大きいライカンスロープが俺の方へと向かって来た!!
「はぁぁぁぁ!オーラブレイド!高速剣っ!!」
ガガガガガッ!!ズシャーッ!!
今の俺の最大威力の攻撃だ。まともに攻撃が入ったため、一撃で仕留めることが出来たが、
「…ふぅ~」
やはり疲労感はある。
一旦呼吸を落ち着かせてから、ブラックウルフも一匹しとめた。
「旋風戟!!」
トゥルニーも槍を振り回し、上手く時間稼ぎをしながら、敵の注意を引いている。
その間にクィナのアイスアローが敵に刺さり、俺がとどめを刺す。
出し惜しみをせず戦っているためか、一体ずつ確実に仕留めれていた。




