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第15話 一進一退

 …いよいよ、Cランク試験か。

 以前のDランク試験と違い、意外にも落ち着いていた。

 既に一度試験を経験していたからなのか、それとも戦いに自信が付いたからか。


「みんな、忘れ物はないか?」

「大丈夫です!」


 装備良し、ポーション良し、準備は整った!

 ギルドに向かう途中、仲間たちは期待と不安が入り混じる会話をしていたが、俺は軽く相槌を打つ程度にしておいた。

 ギルドへ入ると、早速受付を済ませ、1万Gを払うと、受付嬢が試験用の依頼を渡してきた。

 それを受け取り、内容を読む。


「ん~?"オークの集団が隣街イエットの近くで目撃された。いつ街を襲ってくるか分からないため、早めに殲滅して欲しい。報酬12000G"と書いてあるが、イエットってどこだ?」

「イエットは、ここから東側にある小さな街です。馬車で2時間程のところにあります」


 受付嬢が親切に教えてくれたが、肝心のオークの集団は、街の近くで目撃されただけで、正確な位置は分からないとの事。

 イエットの街がどういうところか分からないが、地形によっては探すのに時間がかかるかも知れない。

 だがここで悩んでいても仕方ないので、馬車に乗り込み、隣街へと向かった。


「ところで、イエットの街ってどんなところだ?」


 馬車に揺られながら、誰か知っているかと思って聞いてみるも、よく知らないという答えが多かった。

 そんな中、


「確か、序列最下位に近いぐらいの街だった気がします」


 …序列?初めて聞くし、女神から授かったこの世界での最低限の知識にも無さそうだ。

『序列』と口にしたクィナに、それは一体何なのかを聞くと、


「この国だけかも知れませんが、街にはそれぞれ序列がありまして、どれだけ国に貢献しているか、信頼度が高いかで序列が決まるらしいです」


 更に説明を求めると、嬉しそうに話しを続けてくれた。

 まずこの国には、街が70あり、首都である『セントラル』が序列1位。

 俺たちが住んでいるレギュンは序列11位。

 序列が更新される時期は特に決まっていないため、そこは不明。

 大体は、ギルドの規模で決まるらしいとの事だった。


「私もそこまで詳しくないので、ギルドの方に聞いた方が分かりやすいかと思います」

「いや、クィナも十分詳しいだろ。それに俺たちのいた街の序列が11位ってのはどこで知ったんだ?」

「ギルドの受付あたりに番号の書かれた札があるので、それで序列が分かります」


 へぇ~、全然気づかなかった。

 更に聞くと、砂漠近くにあったディザーという街の序列は50位だったと言う。

 つまり、今向かっている街は、ディザーのギルドより小規模、冒険者が少なく、Cランクすらいない可能性もあるというのが、彼女の見解だった。


 興味が湧いたので、セントラルや、その他の街も聞いてみた。

 首都というだけあって、Aランクの冒険者チームが3隊もいるということ。

 2位3位の街は副都心と呼ばれ、Aランクの冒険者チームがそれぞれ1隊ずついること。

 4位から13位まではBランクが最低1隊はいること。


「俺たちの街はBランクが3隊もいるのに、11位ってことは、他の街はBランクがもっと多いのか?」

「えっと…ちょっとそこまでは分からないです」


 そんな話をしているうちに、イエットの街に到着した。

 ディザーも小さい街だったが、このイエットという街は更に小さい。

 街の中に道はなく、大きな広場を低い柵で囲ったような村。

 そのため、ギルドも直ぐに見つかった。


 まずは情報収集のため、ギルドへ入り、オークの目撃について何か知らないかを聞くと


「おおっ!!依頼を受けた冒険者の方ですね」

「ああ、そうだ。それでどこら辺で見たとかは分からないか?」


 そう聞くと、あっさり目撃した場所の方向や特徴を教えてくれた。

 何も分からず、探しまくるという最悪な状況は避けられた訳だ。

 ついでに、さっきクィナが言っていた番号の書かれた札を探すと、確かに壁に"67”と書かれた札が掛けられていた。


 ついでに、冒険者名簿も見てみると、Eランクが1隊、Dランクが4隊だけでCランク以上はいなかった。

 う~~~ん、この街…大丈夫かぁ~?


「取り合えず、試験を最優先する。オークが目撃された場所へ行くぞ!」

「はいっ!」


 ギルド員の話によると、街の東側に道があり、行商人がその道を移動、少し開けた場所で遠くで見たということだった。

 確かに東側から道が続いている。

 しかし、辺りは草原以外何もないから常に開けており、少し開けた場所というのが良く分からない。


 だが、オークなら以前戦った事があるから、外見も強さもLv22ということも分かっている。

 言い換えると、今回の依頼内容は、オーク以外にも強い敵がいるのが俺の中で確定している。


「オークって種類はいるのか?例えば、強いオークとかさ」

「私知ってるよっ!オークジェネラルとかオークキングとかね!見た事ないけどねっ!」


 なるほど。

 集団行動しているということは、そのどちらか、あるいは両方いる可能性があるな。

 どっちの方が強いかは、イメージ的にキングと付いている方だろう。


 俺の本来の作戦は、もしとても強い敵がいた場合、遠距離攻撃をするだけして、リリーのゲートで逃げる。更にその敵の弱点になりそうな武器または道具をそろえ攻撃してはゲートで逃げるというものだった。


 しかし、隣街まで来た事で、その作戦が使えなくなった。

 リリーのゲートは必ずレギュンの街の宿屋まで戻ってしまう。

 再びこの街へ来るとなると、馬車で2時間だけでなく、馬車代まで掛かってしまう。


「フリート様、難しい顔をして、どうかしましたか?」

「あ、いや、少し考え事をしていただけだ」


 俺は平静を装って答えた。

 ひとつの作戦が使えなくなったが、報酬額から考えれば、敵の強さは大体Lv30前後なのはまず間違いない。

 それにいくら敵が強くても、所詮は豚野郎。足は遅い!


 色々戦い方を考えていると、草原が途切れている場所へと出た。

 まるでここで休憩しろと言うような感じの、少し開けた場所。

 ――っ!!


「ここが少し開けた場所かっ!!」

「あー、なるほど!」

「言われてみれば、少し開けてますね」

「隊長~、疲れたですぅ~」


 リリーは、ここで休憩する気なのか、疲れたアピールをしてきた。

 くっ…これからが大変だというのに、両手を俺に伸ばし、抱っこ要求までしてきやがったっ!!

 ひょい!


「疲れただろ、敵が見つかるまで休んでていいからなっ」

「はいですぅ~」

「あー!また直ぐ甘やかす~!」

「いいじゃないですか」


 さて、敵はどこだろうか?

 と、探すまでもなかった。

 オークらしき集団が、丸太っぽいものを運んで、家っぽいものを作っていた。

 幸い、作業に夢中なのか、俺たちに気づいていない。


「…ファイアストームで丸焼きにしちまうか?」

「そうですね。行きます!焼肉に必要な火よ、嵐とともに敵を丸焼きにする刻!ファイアストーム!!」


 う~ん、これ詠唱なのかな~?

 だが、魔法はちゃん発動し、オークたちの足元から炎が立ち上る。

 突然の攻撃に、オークたちもパニック状態なのか、どこへ逃げればいいかも分からず、次々と地に倒れて行く。


「クィナ、良くやった。休んでていいぞ」

「いえ、大丈夫です。まだファイアボールぐらいなら撃てます」

「でも、もう全部倒せそうな勢いじゃないですか?」


 楽観的なトゥルニーとは対照的に、俺は炎の中を見ていた。

 すると予想通り、

 ドガッ!!

 という音とともに、作り立ての建物が吹き飛び、炎の奥から巨体が現れた。


「グオオオオオオッ!!!」


 俺たちに気づいたのか、巨体が駆けてくる!

 普通のオークより二回り大きい!!

 片手にこん棒、いや、丸太か?

 そんな事よりアナライズで強さを見る!Lv32と出ているが、先制攻撃の炎で、体のあちこちが焦げているのが分かる。

 リリーを下ろし、


「トゥルニー!油断するなよ!行くぞ!!」

「分かってますって!!」


 俺たちも巨体に向かって駆けながら、疾風剣を放つ。

 しかし、でかいオークは攻撃が見えているのかのように、それをジャンプし避けた。


「先に足を狙うぞ!」

「了解っす!!強撃っ!!」


 ハルバードが敵の足を払うように襲い掛かるも、それを後方に飛んで避けた!

 オークの癖に意外と身軽だな!!

 更に追撃しようとしたところ、敵の棍棒がブンと音を立てる!!

 間一髪のところで俺たちも避けた。


「近づけねぇ!!」

「結構厄介な敵ですねっ!」


 ブラッドベアの時は、そこまで苦戦しなかったのに、レベルが4違うだけで、こうも強さに差が出るのかっ!!

 俺は真っ向からでは倒すのは難しいと判断した。

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