第13話 ダンジョン挑戦
街へ戻りギルドで報酬を受け取った後、そのまま2Fへと上がった。
依頼達成後に仲間と話し合うのが、今では楽しみのひとつとなっている。
「ふっ、今回の依頼、楽勝だったな」
「そうっすね、流石フリート隊っす!」
完全に浮かれていた。
今から、Dランクの難しい依頼もこなせるんじゃないかと錯覚する程、浮かれていた。
そして今後どういう依頼を受けるかという話になった時、唐突にクィナが手を挙げ、
「ダンジョンに行ってみたいです!」
ふむ、ダンジョンか。冒険と言えばダンジョン、ダンジョンと言えば冒険、というぐらい定番の、あのダンジョンか。
しかしなぜ、今になってダンジョンに行きたいのか聞いてみると、
「実は『ライト』という魔法が使えるんですが、辺りを明るくするだけで、戦闘には役に立ちません!だからダンジョンに行きたいんです」
なんだ!その理由はぁぁぁぁ!!
だったら夜にライトの魔法使えばいいじゃんっ!!
なんでわざわざダンジョン?
「わかりますっ!せっかく覚えたスキルや魔法って、つい使いたくなりますよねっ!!」
「わかるぅ~~」
二人が同意するも、リリーが言うと前世でよく聞いた「わかる」に聞こえてしまう。
それはさておき、そう言われてみると、確かにその気持ちが分からないでもない。
実際俺も、ダンジョンというのは一度行ってみたかった。
だがしかし!!
ダンジョンとなると、進んだは良いが、戻れなくなって死亡、という危険が非常に高い気がする。
ここは受付嬢に聞いてみよう。
「あのぉ~、俺たちでも行けそうなダンジョンって、どこかある?」
「はい、西のダンジョンとかどうでしょう?ここら辺では一番簡単と言われています」
「ちなみに依頼とかは?」
「今はないですし、ダンジョンに関する依頼ってほとんどないんですよ」
なぜダンジョンに関する依頼がほとんどないかを聞くと、理由は簡単だった。
冒険者がお宝目的で勝手に入っていくからだと言う。
しかし、冒険者がお宝目当てで何度も入っているなら、宝は残っていないのではないかと聞くと、意外な答えが返ってきた。
「ダンジョンは早いところで数日、長いと何か月となりますが、中の構造が変わったり、新しい宝箱が現れたりするんですよ」
ダンジョンの構造が変わるという理由については、ギルドでも解明出来ていないらしく、一般的には魔界と繋がっていて、その影響ではないかという説が有力ということだった。
色々話を聞き終え、仲間のところへ戻り、
「ってことで、西のダンジョンが一番簡単らしい」
「構造が変わるということは、地図も無いということですね」
「そうだな」
既に誰かが宝を発見して、何も無いかも知れないし、まだ何か残ってるかも知れない。
どんな敵が出てくるかも分からない、依頼もない。
俺としては、行く意味があまりないと思うのだが、
「じゃあ、ちょっとだけ行ってみて、危なかったら引き返しましょう!」
「そうですね、それがいいですね」
「面白そうですぅ~」
う~む、好奇心の方が強いのか、取り合えず行ってみたい欲が強いようだ。
仕方ない、彼女たちのためにダンジョン行くか…。
はぁ~~、仕方ないな~、本当に仕方ないなぁ~!
西のダンジョンの場所は、街から1時間もしないところにあり、昼には到着した。
入り口には”西のダンジョン"という立札と結界用の札もいたるところにある。
恐らくダンジョン内のモンスターが出てこないようにするためのものだろう。
「ライト」
俺が入口を観察していると、早く中へと急かすように、クィナが魔法を使った。
明るい光が彼女の前に現れ、ふわふわと宙に浮き、ダンジョンの奥を照らしてくれる。
「それって、動かしたりできるのか?」
「はい、少しなら動かせます」
そう言うと、上下左右に光の玉を動かし奥に移動させたりもして見せたが、どこまでも移動できる訳ではなく、術者から離れれば離れる程、光が弱まる性質のようだ。
ちなみに触れようとしたが、ただの光のため触れなかったし、熱さも無かった。
ダンジョン内は空洞となっており、敵もいないが、直ぐに下り坂のような通路が1つだけあった。
幅的に並んで歩けるのは二人という感じのため、俺とトゥルニーが前を歩き、その後ろにクィナとリリー。
通路を歩いて行くと、曲道があり、ライトを先行させ奥を覗いてみる。
すると、再び大きな広間のようなところがあり、モンスターもいた。
見た目はスケルトンやゾンビといったアンデット系。
今まで一度も戦った事の無いタイプだ。
アナライズを使ってみると、Lv6とLv7だった。
「敵がいますね、ファイ――」
「待てっ!!」
ファイアボールを唱えようとしたクィナを制す。
こんな密閉空間で火なんぞ使ったら、酸素を奪われ、煙も充満すると予想したからだ。
前世の知識役立つぅ~~!転生者特権ってやつだなっ!!
実際この世界での魔法で、酸素やら煙やらがどうなるかは分からないが、一応念のためだ。
しかし、それをどう説明すればいいか考えに考えた結果、
「ほら、煙とか出たら苦しくなるし、視界も悪くなるだろ」
「なるほど!流石ですフリート様!」
「ってことで、行くぞトゥルニー!」
剣を振ると、スケルトンはバラバラになり、ゾンビも動きが遅く、あっさり倒すことが出来た。
トゥルニーも俺と同じように、槍を振り回して倒しまくっていた。
「いや~、弱いっすね~!」
「確かにな」
この辺りで一番簡単なダンジョンと言われるだけの事はある。
しかし俺と出会った当時のトゥルニーなら、こんな敵相手でも苦戦したかも知れないと考えると、やはり強くなった実感がある。
ダンジョン内は、広間に敵、通路で移動、再び広間に敵という構造になっていた。
広い場所で戦えるのはありがたい。
しかし3つ目の広間の敵を倒したところで、行き止まりとなってしまった。
「もしかして、もう最深部ですか?」
「そのようだな」
一応隠し通路やお宝がないか、壁沿いに歩いて行くも、やはり何もない。
敵も弱いし、ダンジョンも浅い。
仮に宝があったとしても、既に他の冒険者が持ち去った後だろう。
しかしだとしたら、モンスターはどこからか出現したってことだろうか?
そんな事を考えながら、来た道を戻って行くと、ふたつ目の広間に、スケルトンとゾンビが1体ずつ出現していた。
「本当にこのアンデットはどこから湧いてくるんだ?」
「不思議ですね」
ガシャンッ!ズシャッ!!
敵をあっさり倒し、地上へと戻ってきた。
やはり地上に出ると安心感が違うなっ!!
「それでみんな、初ダンジョンの感想は?」
「物足りない感じでした」
「う~ん、活躍の機会がありませんでした」
「暗かったですぅ~」
そういう感想じゃなく、戦いやすい戦いにくいとか、そういうのを聞きたかったんだが、まあいい。
街へ戻り、酒場へと向かう。
特に強い敵と戦った訳ではないが、ダンジョンという暗闇を移動する事で、緊張やら気を張ったりもあり、俺を含めみんな少し疲れた様子があった。
「今思うと、ダンジョンって微妙だな」
「そうですね、視界も悪く戦いにくい感じがしました」
「火の魔法が使えないのは不便です」
「歩きにくかったですぅ~」
そうそう、こういう感想を聞きたかった。
食事をしながら、今更ながらにダンジョンへの不満を漏らしていると、
「フリート。君たちダンジョンへ行ってきたのか?」
今まで気づかなかったが、リアギーが後ろのから話しかけて来た。
隣の席だったが、お互い背中を合わせの席で、向こうも今まで気づいていなかったようだ。
一応、西のダンジョンに行き、どんな感じだったかを軽く説明すると、
「まあ、そうだな。ダンジョンは地上と違って、暗く狭い、行動範囲もかなり限られるから、同じモンスターでもダンジョンの方が戦いにくい」
というリアギー先輩のありがた~い言葉を頂いた。
更に続けて、
「もしダンジョンに興味があるなら、ルグルスに聞くといい」
「ルグルスって、Bランクの?」
「ああ、そうだ。ルグルス隊は、なぜかずっとダンジョンばかり行ってるからな。この街でルグルス以上にダンジョンに詳しい奴はいないだろう」
へぇ~~。
ダンジョンばかり行く冒険者は珍しい気がする。
依頼らしい依頼が多いとも思えないし、宝目当てだろうか?
とは言え、今のところ俺たちは、別のダンジョンへ行く予定もないし、頭の片隅にルグルス隊のことを入れておいた。




