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ラスボスに転生したら取引を持ち掛けられました!    ~転生後に推しが出来てもいいじゃないか!~  作者: 夕月


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第三十八話

「こんにちは、ルナさん。」

「メリンダ様!」

ルナの仮住まいにつくと、すぐさまルナが駆け寄ってきてくれる。

賢いが見た目通りの精神年齢をしているルナに思わず目を細めてしまう。

私は、彼女にまで影響が出る可能性を考えていなかった。

元々そこまで大事になると考えていなかった事や、知りえなかった情報がある事というのを踏まえたとしても、私の責任は重い。

だからこそ、必ずやり遂げる。

その前に。

「さて、まずは昼食にしましょうか。」

「はい!」



「今日もとても美味しかったです!」

「喜んでもらえて嬉しいわ。」

今日の昼食はサンドイッチだ。

本当はもう少し食べ応えのあるものにしようかとも思ったが、これからお菓子を食べるのであればこれぐらいの方が丁度いいだろう。

それに、あまり満腹にさせて舟をこがれてしまうのもいただけない。

騙し討ちの様な真似はせず、きちんと納得して来てもらいたいのだ。

例え、全てを話していないとしても。

「ルナさん、今日は私の屋敷に来てみませんか?」

「メリンダ様のお屋敷に、ですか?でも、私は…」

「殿下に許可は頂いておりますし、ちょっと変装していけば問題ありません。そのために、信頼できる者に協力を頼んでありますから。」

「でも…」

何かを気にして躊躇うルナ、これまでの私ならきっと平民であることを気にしているのだろうと考えただろう。

しかし、今は違う。

戦争の引き金になり得る存在が平民なわけがない、それをルナ自身が自覚しているのかいないのかは確証がない為分からないが、何かしら感じ取っている事は間違いないだろう。

「ルナさんは、私の屋敷に来たくはありませんか?」

「い、いえ!そういう訳ではないのです!メリンダ様のお屋敷ですし、とても素敵な場所だろうなって思います。でも、私が行くとその…危険というか、ご迷惑をおかけしてしまう気がして…」

「よかった。」

「え?」

「来たくないのではないかと心配してしまって。ですが、ご安心を。安全面は保証しますわ。私と同等かそれ以上の手練れがルナさんをお守りしますし、何より、ルナさんがルナさんだと気づかせなければいいこと。」

「私が、私じゃない?」

「論より証拠、ですわね。ちょっと立ってみてください。」

「は、はい。」

私に促され立ち上がるルナに、隠し持っていたネックレスを取り出す。

計画の擦り合わせ時にクーから指南されていた変装術、もとい、変装魔法を施すのだ。

とはいえ、変装魔法も上級に分類される魔法なので今の私では扱うことは難しいのでクーから貰ったネックレスを触媒に使わせてもらう。

「Imitate」

「っ!」

結晶から放たれる光に思わず目を閉じるが、光が収まった後に居たのはもう一人の私、いや、私の姿をしたルナだった。

ぶっつけ本番と言う事もあり、成功するか不安だったが何とかなったようで胸を撫で下ろす。

「さ、どうでしょう?」

「!!め、メリンダ様!?」

(あれ…?)

鏡に映る自分の姿に驚くルナの隣で、私が違和感に気づく。

ルナは姿形こそ私と瓜二つだが、声だけ変わっていなかったのだ。

やはり私の実力が足りていなかったのだろうが、まぁ問題はないだろう。

元々、私の自室で過ごしてもらう予定だしシアとレイには私の変装をした警護すべき女性と伝えてあるのだし。

「これなら、誰が見てもルナさんがルナさんだと分かりませんわ。」

「で、でも、声は私のままですよね?もし、お屋敷の方々に気づかれたら…」

「大丈夫。あまり威張れる事ではありませんが、今の私は自室から積極的に出る事を喜ばれていませんの。ですから、私が戻るまで私の自室で寛いでいてください。」

「!どこかに、行くんですか…?」

途端に不安になるルナ、それもそうだろう、五歳の子供にしてみれば知らない場所へ放り込まれることと同義なのだから。

だらか、安心させるように優しく微笑みながら言葉を続ける。

「はい。殿下の御使いをしなければならないのです。」

「お使い?」

「少し恥ずかしい事ですが、少し失敗をしてしまって…私でないとその場所へ行けなくなってしまったんです…」

「メリンダ様も、失敗することがあるのですか?」

「ありますよ、残念ながら。」

苦く笑うと何故かルナも微笑む。

ルナの中で私はどういう存在なのか気になるところだが、先程よりもリラックスしている今がチャンスだ。

「ですから私が留守の間、私の屋敷で楽しんでいてほしいのです。自室にはお菓子は勿論、沢山のレシピも用意してあります。その中で気になったものがあれば、次の機会にでも一緒に作りましょう。」

「!!はい!」



「ただいま、シア、レイ。」

「お帰りなさいませ、お嬢様。」

「お帰りなさいませ。」

「こちらが件のお客様よ。ルナ、こちらは私が信頼する優秀な二人なの。困ったことがあったら遠慮なく言ってね。」

「ようこそお越しくださいました。シアと申します。」

「レ、レイ、です…」

「は、初めまして。ルナと申します。」

「!?」

(?)

いつも通りのシアと違ってレイはどこか緊張していると思いきや、ルナの自己紹介に驚いている。

先入観を抱かせない為にルナの階級は伝えていないから、平民が平民らしからぬ完璧な挨拶をしている事に驚いていると言う事はないだろう。

一体何をそんなに驚いているのか首を傾げつつ一瞬過った、もし外見が私なのに慎ましい仕草をしている事に驚いているからという可能性に思わず拳を作る。

(本当にそうなら、その頭上に暗器の雨を降らせてやるわ。)

私の不穏な考えを読み取ったのか、少しだけ青い顔をするレイに詰め寄りたい気持ちを抑える。

というか、そんなことをしている暇はないのだ。

「それじゃあ、私も行ってくるわね。」

「メリンダ様、どうかお気をつけて。」

「お嬢様、くれぐれもお気を付けを。」

「無暗に突っ込んで行っちゃだめですよ。」

「分かっているわ、ありがとう。シア、レイ、くれぐれもルナさんをよろしくね?」

「「はい。」」

「……行ってきます。」

力強く頷く二人を満足げに見つめながら、ルナの仮住まいへと再び戻った。



「Imitate」

ルナの仮住まいに到着すると、すぐに変装魔法を発動する。

だが、やはり外見は完璧なのに声は私のままだった。

相手がルナをどれぐらい知っているかにもよるが、下手をすれば一発で私がルナではないとバレてしまうだろう。

(う~ん…どうしよう…)

「お嬢、だよな?」

「!クー。」

「あ?なんだその声。」

流石と言うかなんというか、音も無く背後に現れたオルセン副騎士団長の姿をしたクー。

声のかけ方からしてやはり外見は完璧に変装できているようだが、その分声の違和感が目立ってしまうのだろう。

時間もない事だし手短に事の次第を伝えると暫く考え込むと、徐に首に手を伸ばされた。

「っ!?」

「じっとしてろ。」

急所を触れられたことでビクリと反応する私に、クーが平然と声をかける。

脚を差し出した時はえらい違いだと現実逃避をしている傍で、首に向かって光が放たれる。

痛くも痒くもない光が収まると、私の声はルナの声になっていた。

「まぁ!」

「これでいいだろう。だが、もって数日だ、ボロが出ないように気を付けろよ。」

「勿論です。」

「…」

「クー?」

「何でもねぇ、そろそろ行くぞ。」

「はい。」

一瞬、何とも言えない微妙な顔をしたもののすぐにいつもの調子に戻る。

クーといいレイといい、なんだか煮え切らない態度に違和感を持ちつつも、今は兎に角無事に役目を果たすことに集中すべきだと気合を入れた。



(この辺り、よね。)

今回の計画のストーリーは私扮するルナが何かを探すように賊に襲われた場所までのこのこ出てきた所を拉致されるというものだ。

予め転移魔法の残滓から探知は完了しており、そこから相手が探知に気づいている事も確認済みだ。

しかも、拘留した賊がルナを保護するつもりだったという旨の供述をし始めたらしいが、警戒態勢がいつもより高い王宮内では扱いが格段に変わる事にはならない。

どうやって仲間を手引きするのかは分からないが、だんまりを続けることもできない以上仕方のない選択だったのかもしれないし、こちらにとってはむしろ好都合だ。

相手にしてみれば探知されたのだから動かざるを得ない、けれど、魔物暴走の疑いで警戒態勢は常よりも引き上げられている。

そこにもし穴があったら?

潜入する側から見れば拘留されている側が上手い事やってくれたのだと思う事だろう。

そうしてその穴から侵入した先には、なんと目的の人物が居るではないか。

これを好機と思わない人間はいないが、相手も馬鹿ではないだろう。

少しの違和感で相手に気取られる可能性がある。

つまり私がいかに不自然なく拉致されるかにかかっているのだ。

(えっと、確かこの辺りでアンシュルとルナが賊に襲われてクーと私が助太刀したんだったわね。で、転移跡はあっちだからルートとしては……こっち?)

何かを探す、では漠然的過ぎて演技感満載の動きになりそうだったので私の中で転移跡に突き刺した暗器を探すという目的に切り替えた。

お陰で事情を知らない者が見ても何かを探していると言う事に関しては、違和感を持たれずに済んでいるみたいで偶々通りかかった人に何か探しているのかと声をかけられた程だ。

どうだ私の演技力は!と内心でドヤりながら少しずつ目的の場所まで歩みを進める。

木の上から見た時は分からなかったけれど、転移跡はかなり草木が茂っていたようでかなり歩きにくい。

(もう少し開けた場所で転移しなさいよね!!見つかっちゃダメってのは分かるけども、歩きにくいったらありゃしないわ。)

ムスッと顔を歪ませるのを何とか堪えながら慎重に、少しずつ進んでようやく目的の場所まで辿り着いた。

だが、安心するのはまだ早い。

あくまで探し物はフェイク、本来の目的は拉致されることのなのだから。

「そんな所で何をしているのかな?お嬢さん。」

「!!」

「おっと、驚かせてしまったかな?すまない、俺はしがない商人でね。偶々ここを通りかかったんだが、どうも困っている様に見えて声をかけさせてもらったんだ。」

「あ…ご親切に、ありがとう、ございます…でも、ただ探し物をしているだけなので、ご心配なく…」

「探し物?それは大切なものなのかい?」

「えっと……はい…」

「そいつは大変だ、俺も手伝おう。一人より二人の方が早く見つかるだろ?」

「でも、ご迷惑が…」

「なぁに気にするな。目的地はここからすぐ近くだし、俺は探し物が得意だからな。すぐに見つかるさ。」

人好きする笑顔を浮かばながら、半ば強引に探し物の手伝いを行う男性。

この男性が敵ならばいいが、そうでないのなら面倒だ。

かといってもし離れた場所から様子を伺われていたら不自然に誤魔化して違和感を持たれてしまうかもしれない。

どうする?と考えていると、背後から男性が声をかけてきた。

「お嬢さん、もしかしてあれかい?」

「え?」

「ほら、あの木の傍にある。」

示された場所には何もなかった。

場所が悪いのかと木の傍へ向かうと、途端に意識が黒く塗りつぶされた。



「ははっ!!こんな簡単にとっ捕まってくれるたぁ拍子抜けだな。」

「おい、無駄話してないでさっさとずらかるぞ。」

「分かってるって。」

意識のない少女を木の上から降りてきた仲間が持ってきた袋の中に入れると、肩に担ぐ。

傍から見れば商人が商品を運んでいる風を装うためだ。

夜が深い時ならば闇に紛れてそのまま移動できるが、朝ではないにしてもまだ明るい今は人の目を気にしなければならない。

「よし、いいぞ。」

「おっしゃ。」

違和感のないように整え終えると、すぐにその場を後にする。

本当なら転移でさっさと移動したいところだが魔力残滓で探知をされた以上、無暗に魔法を使う事は出来ない。

その為、もう少し先に商人に扮した仲間の馬車を待機させ多くの商品の中に紛れ込ませて攫う事にしたのだ。

検問で中を改められることも織り込み済みなので、ちょっとやそっとじゃバレないように細工済み。

「ターゲットは?」

「無事確保。」

「よい、乗れ。」

「それにしても簡単に済んだな。」

「魔物暴走の疑いがあるってんで騎士連中の殆どを出兵させたと聞いた、恐らくそのせいだろうな。」

「タイミングはバッチリってことか。魔物もいい時に動いてくれたもんだ。」

「ちげぇねぇ。」

ガハハハッ!!と下品な笑い声が木霊する馬車を、遠くから一人の男が鋭く睨みつけている。

その眼光は人を殺せるのではないかと思えるほど鋭く、苛烈だった。

読んでいただきありがとうございました!

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