14.神隠しの噂
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苑内市楽島町の定点よりX-7Y-81の地点に「神隠し」の噂あり
調査を開始せよ
数か月前、「楽島遺跡」から重大な発見があった。
なんと出土したいくつかの痕跡が、縄文時代よりも前の時代のものである可能性が浮上してきたのである。
日本の歴史を揺るがすやもしれない大発見の裏で、起きていたある事件を僕達は調べていた。
「これ!かわいい…!」
土産屋で時田衣名がグッズを物色している間、僕は聞き込みに勤しんでいた。
「うーん、警察の人にも聞かれたんだけど、俺もそれ以上のことは知らなくて」
「そうですか…ありがとうございます」
衣名は「ヒモロギ」という巨石から手足が生えたようなキャラクターの小さいぬいぐるみを買っていた。
楽島町に住む「野履皓示」という男性が行方不明になった。
彼は昔親類とトラブルを起こして以来天涯孤独の人生を歩んできたようで、行方不明になったことに気づいたのは職場の上司だった。
捜索はされたが有益な情報は何もなく、今でも見つかっていない。
「何故こんなところに来ていたんだろうか」
彼の最後の目撃情報は楽島遺跡の発掘場所付近だということは分かっていた。
その後の例の大発見もあって、人々の関心は寧ろそちらに向いていたが。
「雰囲気、あるね…」
夜の「楽島神石」――森の中にある巨石は昼間に見るより大きく見えた。
僕達は近づいた。
と、巨石のすぐ下に何かが見えた。
それは…「手」。
半透明の手。
動いていた。
衣名はぱた、と倒れて気絶した。
僕は彼女をその場に寝かせて、より近づいた。
「…こ、どこ…?」
話し声が聞こえる。男性の声だ。
袖口から下だけの「彼」を、僕は「掴んだ」。
「…え!?」
声は驚いたように袖をつかむ僕の手を振り払おうとする。
僕は必死に彼を引っ張る。
しばらく格闘していると、まるで嵌っていた場所から抜け出したように僕は後ろ向きに転んだ。
「!しまっ…」
僕は袖を放してしまったか、と思ったが…彼はまだ僕の手の中にいた。
それ以上何か言うこともなく、彼は透き通るように消えてしまった。
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「いてて、全く…」
上司の神谷は、まだ猫には懐かれていないようだった。
野履皓示は戻ってきた。
あの日以来、普通に職場に戻ってきたそうだ。
だが…行方不明になっていた時期の記憶は一切なかった。
「そういえば、例の縄文時代より前の痕跡とやらは跡形もなく消え失せたとか。…何が何だか」
「まあ、人が戻ってきたならよかったです」
「それは、…うむ、そうだな」
衣名を抱えて帰る途中、巨石の方を見た。
石から半分透けたような腕が飛び出してきたかと思うと、しかしすぐに石の中へと吸い込まれていった。




