12.タイムマシンの噂
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桜宝市倉貸町の定点よりX-66Y-57の地点に「タイムマシン」の目撃情報あり
調査を開始せよ
山奥の寺で全ての娯楽を奪われての一週間の後、僕は復帰した。
「お祓い」の効果があって、気分は実に晴れやかだった。
倉貸あそびば公園の「タイムマシン」の調査は、なまりきっている体にムチを入れるための「復帰後初の仕事」としては都合のいいものだった。
僕は公園の子供たちが帰宅するのを待って「タイムマシン」に近づいた。
満月に照らされた公園の隅。
それは、公園の近くで伐採された「竹」を使用した「ベンチ」だった。
噂では…このベンチに座るとタイムスリップできる、という。
僕はそのベンチに触れようとして、しかし視界の端に何かが落ちてきて、ふとそれを見た。
それは公園に植わっている桜の木の葉だった。
それは振り子が触れたように一度揺れて、ベンチに落ち――なかった。
消えた。
ベンチに触れたか触れないかの間に、「桜の葉」は「消えた」のだ。
僕は後ずさった。
そして僕は、服のボタンを一つ取った。
カメラを構え、ハイスピード撮影に設定し、そのボタンをベンチに投げ込んだ。
こつっ。
ボタンは消えなかった。
「…なんだ?なにか違うのか?」
僕はボタンを拾い、気づいた。
さっき「桜の葉が消えた竹」と「違う竹」に、今のボタンは当たった。
僕はもう一度、あの竹にボタンを投げ入れる。
…消えた。
ベンチの腰かけには四本の竹が並んでおり、そのうち手前から三本目の竹に触れると消える。
僕はカメラを見た。
ボタンが落ちた瞬間、竹の表面が少しだけへこんだ。
その時、竹にひとりでに穴が開いて、ボタンを「吸い込んだ」のだ。
穴の中は、不気味に輝いていた。
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「倉貸の竹林は昔から行方不明者が多いそうだ。それで、こっちでも調査してみた」
上司の神谷が資料を共有する。
「あのベンチの竹に穴をあけたら、中から君の服のボタンが出てきたぞ。桜の葉は確認できなかったが」
資料にはあのベンチの変わり果てた姿があった。
「竹林の竹も切ってみたが、中になぜか動物の歯と毛が入っているものが数本あった。竹自体は見た目は何の変哲もない普通のものだったそうだが…ひとまずすべて焼却した」
神谷は二つのビニール袋を取り出して、僕に見せた。
「ところで…このボタンは君のものだよな。…じゃあ一緒に入っていたこれは?」
それらには「僕のボタン」と、「二粒の石ころ」が入っていた。
「僕のではないですね。それは?」
「それが、にわかには信じられないんだが…色々調べたらこれは『地球では見られない他天体由来の物質』…具体的には『月の石』だと分かったんだ」




