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11.死後の世界の噂

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二野市にのし飯切町めしきりちょうの定点よりX-40Y47の地点に「死後の世界」の噂あり

調査を開始せよ


飯切洞穴という小さなほら穴の中にある湧水の泉を覗くと、死後の世界が見えるという。

僕と時田衣名は噂の泉の前にやってきた。

「本当に覗くの?」

彼女は不安そうに聞いてきた。

僕は返事の代わりに覗き込んだ。

「…」

特に変わったことはない。

ただ浅い泉の中一面に黒っぽい砂利が溜まっているだけだ。

「…?」

砂利ではない。

小さな粒、それは動いている。

ひしめき合うというのがもっともそれらしいか。

「これは…人の頭…?」

その砂利は全て、「人の頭のてっぺん」だった。

「彼ら彼女ら」を、はるか上空から覗いていたのだ。

僕はこれ以上見てはいけないような気がして、顔を引っ込めようとした。

「待って」

洞穴の中にはっきりと、声が響いた。

「行かないでくれ」

別の声だ。

「見られないといけないんだ」

「視線がないと」

「誰かが見ている限り我らは」

「私たちの太陽」

「素敵な二つの瞳」

「ひとつは日、ひとつは月」

「どうか私たちを見守ってください」

「永遠に」「永遠に」「永遠に」


「帰ろう」

衣名の声だった。

洞穴中に響き渡るたくさんの人々の声に食いつかれたように離れられない僕を、彼女は引っ張って外へ出る。

僕が覗くのをやめると、声は小さくなっていった。

「ごめんなさい」

衣名は洞穴の奥に向かってそう呟いた。


***********************************************************


「真相など誰にも知りようがないが…なんだかもの悲しい話だ」

上司の神谷はそう呟いた。

「しかし、時田君の咄嗟の判断には頭が下がるな」

横で聞いていた衣名は得意げだった。

「後で別の人間が調べたが、あの泉には特に何もいなかったようだ。もうどこにもいなくなってしまったのかもしれないな」

外は曇天で、風景はモノクロのようにも見えた。

「あの、これを見てください」

僕は金魚鉢を持ってきて、二人に見せた。

「見えますか」

「?金魚鉢だろう?金魚が二匹泳いでいる」

「…そうですか」

僕はそれ以上、何も言わなかった。

衣名は不思議そうに僕を見つめていた。


「見なければ…もっと見なければ…皆が『光』を奪い合って殺しあってしまう…」


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