第42話 あの日だけ
瀬戸は相馬を見た。それから、ほかの四人へ視線を向けた。
「七年前、岡崎以外に」
瀬戸は少し間を置いた。
「相馬があの夜、外に出てたって知ってたやつはいるか?」
水野が首を振った。
「私は知らなかった」
桐島も、首を横に振った。
田所は、一度だけ相馬を見た。
それから。
「少なくとも、俺は知らなかった」
瀬戸は岡崎を見た。
「お前は見た」
「うん」
「でも、出ていったところまで」
「そう」
岡崎は答えた。
「そのあと、どこに行ったかは知らない」
瀬戸が頷いた。今度は相馬へ向き直った。
「相馬」
「何?」
「お前、神谷が死んだこととは関係ないって言ったよな」
相馬は少しだけ間を置いた。
「言ったよ」
瀬戸は続ける。
「お前がそう言ってる以外に、何かあるのか?」
相馬は瀬戸を見た。
「何かって?」
「どこにいたとか、何してたとか、それを証明できること」
相馬は、すぐには答えなかった。
やがて、口を開いた。
「今、証明できるものは何もないよ。外に出て歩いていただけだから、そもそも証明と言われても難しいかな」
田所も口を挟まなかった。
瀬戸は相馬から視線を外さなかった。
「別に、関係あるって言ってるわけじゃない」
相馬は何も言わない。
「でも」
瀬戸は続けた。
「関係ないってのも、今はお前の話だけだろ」
相馬は、何も返さなかった。
瀬戸はもう一度、相馬を見た。
「もう一つ」
「うん」
「あの日だけだったのか?」
相馬の目が瀬戸へ向いた。
「何が?」
「夜に寮を抜けたの」
一瞬。
相馬は何も言わなかった。
それから。
「いや」
相馬は短く答えた。
「あの日だけじゃないよ」
桐島が相馬を見た。
瀬戸の眉がわずかに寄った。
「他にも出てたのか?」
「うん」
相馬は答えた。
「何度かは出たことある」
瀬戸がすぐに続けた。
「それを知ってるやつは?」
相馬が少し首を傾けた。
「知ってる?」
「他の日に、お前が外に出てるところを見たやつ」
相馬は少し考えた。
「さあ」
「いない?」
「そこまでは分からないよ」
相馬は言う。
「見られてたかどうかまでは、俺には分からないよ。岡崎みたいに見られてたことはあるかもしれないけどね」
瀬戸は岡崎を見た。
「あの日以外に外に出てたことも知ってたか?」
「知らない」
岡崎は答えた。
「他の日のことは知らない」
それ以上、この場から声は上がらなかった。
少なくとも、この中には相馬が夜に何度か抜け出していたことを知るものは居ないようだった。
瀬戸はゆっくり息を吐いた。
「あの日だけじゃない」
相馬へ視線を戻す。
「何度か外に出たことがある」
瀬戸は続ける。
「でも、それを今ここで確かめられるやつはいない」
相馬は、小さく頷いた。
「そうなるね」
瀬戸は、それ以上追わなかった。
「あの日だけじゃない」
さっきの相馬の言葉だけが、教室に残っていた。




