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卒業条件は、同級生の死の真相。  作者: 綴木 律
第二章 全会一致の代償
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第23話 忘れ物

 黒田が神谷の所持品に触れた。


 その事実だけを残して、第五問は終わった。


 画面が切り替わる。


『第六問』


『説明を評価するとき、一貫性を重視するか、検証可能性を重視するか』


『A 一貫性を重視する』


『B 検証可能性を重視する』


 第2試験、最後の一問だった。


 八分の討議が始まる。


 一組で意見を交わすのは、四人。


 三浦の席は空いたままだった。


 あの席を視界に入れたまま、誰も議論を必要以上に広げようとはしなかった。


 細かな議論を重ねる必要はなかった。


 それ以上の出来事にまだ全員の整理が追いついていない。


 説明が途中で変わらないことを重く見るのか。


 それとも、外から確かめられることを重く見るのか。


 藤崎は画面の文字を見る。


 検証可能性。


 説明なら、言葉にすることはできる。


 でも、その言葉が確かなものかどうかは別だった。


 八分が終わる。


 匿名仮投票。


 四人が回答を入れる。


 票数が表示された。


 誰がどちらを選んだのかは分からない。


 そこから五分。


 短い再討議を経て、記名最終投票へ移る。


 形だけの回答を合わせるだけの討議。


 御影。


 成海。


 白川。


 藤崎。


 四人とも、B。


『一組 全会一致成立』


 二組もB。


 三組はA。


 四組はB。


 四つのクラスすべてで、全会一致が成立した。


 これで、第2試験の六問すべてが終わった。


 けれど、一組にはまだ一つ残っていた。


 第六問のあとに使える、二回目の公開質問権。


 第2試験で一組に与えられていた、最後の一回。


「切り替えよう、っていうのも違うとは思うけど」


 御影が切り出した。


「残念だけど今の状況は待ってくれない。それなら今は向き合うしかないと思う。」


 成海が静かに頷く。


「この後もどんな試験があるかは分からない。でも七年前のことが関係しているのだけは分かる」


「だからこそ、最後の公開質問は黒田からもっと情報を聞かないといけないと思う」


 藤崎に目を向ける。


「質問者は私だったよね。大丈夫、ちゃんと聞いてくるよ」


 当たり前の確認をしただけだった。


 それでも、今の一組には言葉にしておくことの意味はあった。


*


 質問者は、藤崎優花。


 対象は、黒田岳。


 藤崎はすぐには質問しなかった。


 黒田はすでに認めている。


 神谷悠斗の所持品に触れたことを。


 今度、聞くべきことは一つしかなかった。


 七年前から曖昧なまま残っている、その先。


 聞けば、返ってくる言葉で何かが変わるかもしれない。


 それでも、今ここで聞くしかない。


 藤崎が顔を上げる。


 公開質問として、その問いが全参加者へ共有される。


「七年前、神谷悠斗の所持品に触れたのは、なぜですか」


 それだけだった。


 問うのは、触れた理由だけだった。


 返事まで、少し間があった。


 藤崎は待つ。


 数秒のはずなのに、黒田の言葉を待つ時間だけが長く感じられた。


 黒田は前の質問で、接触したことまでは認めた。


 それ以上は話さない、と線を引いた。


 今回問われているのは、その線の向こう側だった。


 やがて、黒田が答えた。


「忘れ物を探してただけだ」


 答えは返ってきた。


 けれど、藤崎の中では何ひとつ腑に落ちなかった。


 これで終わった。


 そう思える答えではなかった。


「……それだけでは、確かめようがないですね」


 白川が言った。


 成海も短く息を吐く。


「説明にはなってる。でも、それが本当かは別だ」


 御影は何も言わず、藤崎を見る。


 黒田も続けなかった。


 それ以上の理由は語られない。


 質問と回答は、二回目の公開質問として全参加者共通の記録になった。


 けれど。


 記録になったのは、


 黒田がそう説明した、


 という事実までだった。


 藤崎は自分の端末を見る。


 申請画面を開こうとは思わなかった。


 答えは返ってきた。


 でも、これではない。


 自分が確かめたかったものに届いた感覚が、どこにもなかった。


「忘れ物……」


 白川が小さく繰り返した。


 それ以上は言わなかった。


 成海も黙っている。


 藤崎は黒田へ問いを重ねなかった。


 公開質問は、これで終わりだった。


 第2試験で一組に与えられた二回の権利も、すべて使い終えた。


 一回目。


 黒田は、神谷の所持品に触れたと認めた。


 二回目。


 黒田は、忘れ物を探していたと説明した。


 事実は、一つ増えた。


 説明も、一つ増えた。


 けれど。


 黒田が七年前、


 本当に忘れ物を探していただけなのか。


 嘘であれば本当は何をするためにそこへ行ったのか。


 その答えだけは、


 まだ出ていなかった。

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