↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
卒業条件は、同級生の死の真相。  作者: 綴木 律
第二章 全会一致の代償
22/43

第22話 触れた男

 三浦の表示は、まだ変わっていなかった。


 施設側では、


『三浦拓海』


『参加中・通信不良』


 第2試験では、


『投票認証不能』


 成海が確認した現実と、二つの表示。


 どれも噛み合っていない。


 理由も分からないままだった。


 それでも、試験だけは止まらなかった。


 一組の画面が切り替わる。


『第五問』


『人物を判断するとき、本人の説明を重視するか、確認できた行動を重視するか』


『A 本人の説明を重視する』


『B 確認できた行動を重視する』


 白川が画面を見た。


「……次か」


 誰も三浦の話を蒸し返さなかった。


 解決したからではない。


 何も解決していない。


 ただ、第五問はもう始まっていた。


 八分の討議。


 四人は、表示された二つの選択肢について必要な範囲だけ意見を交わした。


 三浦のことが頭から消えたわけではない。


 むしろ、さっきまでそこにいた人間が一人いなくなった重さが、会話の間に残っていた。


 八分が終わる。


 匿名仮投票。


 四人がそれぞれ回答を入力する。


 票数が表示された。


 誰がどちらを選んだかは分からない。


 その数字を見たあと、五分の再討議へ移る。


 御影は画面を見たまま言った。


「私はAでいく」


 成海が頷く。


「俺もAだ」


 白川も短く答えた。


「Aでいい」


 藤崎は少しだけ考えてから、


「……私もA」


 と答えた。


 五分が終わる。


 記名最終投票。


 御影咲。


 成海圭吾。


 白川誠。


 藤崎優花。


 四人がAを選び、回答を確定した。


『一組 全会一致成立』


 やがて、二組、三組、四組もそれぞれ全会一致を成立させた。


 第五問も、四つのクラスすべてで成立した。


 その直後。


 第2試験は次の設問には進まなかった。


 一組に与えられていた公開質問の機会が来た。


 質問者は、御影咲。


 対象は、黒田岳。


 御影はすぐには口を開かなかった。


 七年前。


 神谷悠斗の荷物保管場所付近から立ち去る黒田の姿を、御影は見ている。


 見たのは、それだけだった。


 黒田が何をしていたのかまでは見ていない。


 何かに触れる瞬間を見たわけでもない。


 だからこそ。


 自分の記憶だけでは、届かない。


 必要なのは、黒田本人の言葉だった。


 御影が顔を上げる。


 公開質問として、その問いは全参加者へ共有された。


「七年前、あなたは神谷悠斗の所持品に接触しましたか?」


 余計な言葉は付けなかった。


 理由も聞かない。


 何をしたのかも聞かない。


 触れたのか。


 触れていないのか。


 それだけだった。


 すぐには返事がなかった。


 黒田がどういう顔をしているのか、一組からは分からない。


 ただ、公開質問は終わっていない。


 御影は待った。


 白川も。


 藤崎も。


 成海も。


 誰も口を挟まなかった。


 やがて、黒田が答えた。


「……ああ。触れた」


 それ以上は話さない、と線を引くような、短い答えだった。


 御影は動かなかった。


 黒田は続けない。


 なぜ触れたのか。


 何をしていたのか。


 それについては、一言も話さなかった。


 けれど。


 一つだけは、本人の口から明言された。


 七年前。


 黒田岳は、神谷悠斗の所持品に接触した。


 御影の質問と黒田の回答は、公開質問として全参加者共通の記録になった。


 御影に与えられていた個人合格条件。


『黒田に神谷所持品への接触を明言させる。』


 条件は、満たされた。


 御影は申請画面を開く。


 証拠指定欄。


 指定するのは、今の公開回答。


 黒田岳本人が、神谷悠斗の所持品への接触を認めた記録。


 それを指定する。


 御影は申請を確定した。


『達成申請を受理しました』


 短い判定を挟む。


 そして。


『個人合格条件 達成』


『御影咲』


『通常退学対象外』


 藤崎が御影を見る。


 白川も画面へ視線を向けた。


 成海は何も言わなかった。


 御影も、すぐには言葉を出さない。


 自分の条件は達成した。


 けれど。


 七年前に何があったのかが分かったわけではない。


 分かったのは、一つだけだった。


 黒田本人が、


 神谷の所持品に触れたと認めた。


 なぜ触れたのか。


 その答えだけは、まだどこにもなかった。

続きが気になった方は、ブックマーク・評価で応援いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。