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卒業条件は、同級生の死の真相。  作者: 綴木 律
第二章 全会一致の代償
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第19話 第三非常階段

沈黙は、そのまま教室に残った。


 三浦は前方のモニターを見ていた。


 返事はない。


 画面も変わらない。


 聞こえていなかったのか。


 それとも、答えるつもりがないのか。


 どちらかは分からない。


 三浦は小さく息を吐いた。


 まあ、返ってこないなら、それはそれで仕方がない。


 そう思って視線を外しかけた時だった。


 前方のモニターが切り替わった。


 三浦は顔を上げる。


 教室にいた全員の視線が、同じ画面へ向いた。


 表示された名前は、一人分だけだった。


『三浦拓海』


 その下へ、続けて文字が並ぶ。


『施設管理上の確認事項があります』


『解錠された経路を進んでください』


『解錠経路の通行は、次問開始まで許可します』


『解錠経路外への立入は、引き続き禁止します』


 三浦は黙って最後まで読んだ。


 自分の名前。


 施設管理上の確認事項。


 さっき、自分から管理者へ声をかけた。


 そのあとで、これだ。


 なら。


 さっきの件への対応だろう。


 少なくとも、そう考えるのが一番自然だった。


 何について確認するのかまでは書かれていない。


 ここで答えるとも書かれていない。


 ただ、自分が呼ばれている。


 それだけだった。


「三浦」


 成海が呼んだ。


「ん?」


「行くのか」


 三浦はもう一度モニターを見る。


 表示は変わっていない。


「俺の名前、出てるしな」


 椅子を引いた。


「行ってくる」


 成海は短く頷いた。


 ほかの三人も、止めなかった。


 三浦自身にも、誰かを連れていく理由はなかった。


 呼ばれているのは自分だ。


 それに、画面には解錠経路の通行許可まで出ている。


 その直後。


 教室の扉から、電子錠の外れる音がした。


*


 廊下へ出る。


 振り返ると、教室の扉はまだ開いていた。


 三浦は前を向いた。


 すぐ先の横扉には、施錠されたままのものがある。


 反対側も閉じている。


 進めるのは、一方向だけだった。


 なるほど。


 解錠された経路を進め。


 そういうことらしい。


 三浦は、そのまま歩き出した。


 途中で新しい表示は出なかった。


 声も流れない。


 ただ、通れる場所だけが続いていた。


 曲がる。


 進む。


 閉じた扉の前ではなく、通れる方へ。


 それを繰り返す。


 立会区画へ移動した時とは違う経路だった。


 だからといって、それ自体がおかしいわけではない。


 今回は処分の立会ではない。


 施設管理上の確認。


 何をどこで確認するのか、三浦には知らされていない。


 なら、前と同じ場所へ向かう理由もなかった。


 それでも。


 教室から離れるにつれて、人の気配が薄くなっていった。


 ほかのクラスの声も聞こえない。


 足音だけが残る。


 自分のものだけだ。


 三浦は一度、歩く速度を緩めた。


 前には、また扉がある。


 閉まっている扉。


 その隣に、通れる方。


 通知どおりだ。


 迷う余地はない。


 だから、そのまま進んだ。


*


 しばらくして、三浦は足を止めた。


 廊下の先に、もう次の分岐はなかった。


 正面に扉が一つある。


 ここまでと同じように、その扉だけが通れる状態になっている。


 三浦は周囲を見た。


 管理用の窓口らしいものはない。


 人もいない。


 机もない。


 確認を受けるような場所には見えなかった。


「……ここ?」


 返事はない。


 当然だった。


 ここまで、一度も案内は追加されていない。


 三浦は扉へ近づく。


 その横に、小さな表示板があった。


 何気なく目を向ける。


 そこで足が止まった。


『第三非常階段』


 三浦は文字を見たまま、少しだけ眉を寄せた。


 非常階段。


 施設管理上の確認。


 二つの言葉が、すぐにはつながらない。


「管理上の確認って、ここでするのか?」


 小さく言った。


 もちろん、誰も答えない。


 三浦は背後を見る。


 自分が歩いてきた廊下が、そのまま続いている。


 閉じられた扉。


 通ってきた経路。


 ここまで、通知と違うことは何もなかった。


 自分の名前が出た。


 解錠経路の通行は許可されていた。


 そして、その開いている経路を進んできた。


 その先が、ここだった。


 三浦は再び扉を見る。


『第三非常階段』


 施錠されている様子はない。


 少しだけ迷ってから、


 三浦は、その扉の取っ手へ手を掛けた。

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