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卒業条件は、同級生の死の真相。  作者: 綴木 律
第二章 全会一致の代償
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第14話 全会一致試験

『第二試験を開始します』


 白い文字が消えた。


 間を置かず、次の表示が現れる。


『第二試験』


『全会一致試験』


 佐伯が小さく息を吐いた。


「名前からして嫌なんだけど」


 誰も否定しなかった。


 久世も中央モニターを見る。


 昨日、一組から一人が消えた。


 その翌朝。


 篠原がどうなったのかを確認する時間も与えず、次の試験が始まる。


 画面が切り替わる。


『本試験は、クラス単位で実施します』


『全六問』


『各問は二つの選択肢から一つを選択してください』


「二択?」


 高瀬が言った。


 黒田が椅子の背へ体を預ける。


「前より楽そうじゃねえか」


「まだ分からない」


 一条が言った。


 画面には続きがあった。


『各問の進行』


『討議 八分』


『匿名仮投票』


『仮投票結果 票数表示』


『再討議 五分』


『記名最終投票』


 佐伯が首を傾げる。


「投票、二回するの?」


「最初は匿名。最後は記名」


 天宮が答えた。


 続いて、一行増える。


『匿名仮投票後、記名最終投票まで回答を変更できます』


「最初に一回入れて、割れてたらもう一度話すんだ」


 高瀬が言った。


「でも最後は誰がどっちに入れたか分かる」


 匿名で一度、違いを隠す。


 人数だけを見せたあと、最後には名前付きで答えを出させる。


 久世は、その順番だけを頭に残した。


 次の表示が出た。


『得点条件』


『記名最終投票において全会一致が成立しなかった場合、その問は0点となります』


『全会一致が成立した場合、選択した回答に設定された得点を適用します』


 黒田が眉を寄せる。


「一人でも違ったらゼロかよ」


 佐伯の表情から、さっきまでの軽さが消えた。


「五対一でも?」


「全会一致にはならない」


 久世が答える。


 佐伯が少し黙った。


「それって、すごく責められない?」


 誰もすぐには返さなかった。


 全会一致を止めた一人。


 そうなれば、正しいかどうかとは別に、


 なぜ合わせなかったのか。


 なぜ自分だけ違うのか。


 説明を求められる。


 黒田が鼻を鳴らした。


「だったら最初から多数決で決めて、少ない方が合わせりゃいいだろ」


「それなら、この手順にする意味がない」


 一条が返す。


 黒田が顔をしかめる。


「じゃあ、何のためだよ」


 久世は画面を見る。


 誰が反対しているかは、最初は隠す。


 票数だけを見せる。


 そこから五分。


 最後は記名。


「一人が強い試験だな」


 久世が言った。


 一条がこちらを見る。


「強い?」


「最後まで反対できれば、その一人だけで全会一致を止められる」


 高瀬がぽつりと言った。


「昨日までは、一人に決めさせてたのに」


 久世はそちらを見る。


「今度は一人でも反対したら駄目なんだね」


 その言葉に、一条がわずかに視線を下げた。


 第一試験。


 一組の最後の回答。


 篠原。


 久世の頭に、昨日の処分区画が浮かんだ。


 青白い光。


 破裂音。


 平らになった波形。


 そして、誰もいなくなった床。


 昨日は、一人へ最後の決定を委ねた。


 今日は、全員で同じ答えを出せと言われている。


 久世はすぐに考えるのを止めた。


 二つをつなげる根拠はない。


 今は試験の規則だけを見る。


 佐伯が画面を見たまま言った。


「でも、全員で揃えれば点は入るんだよね?」


 少し間があった。


 真壁の声が返った。


「違う。全会一致は、選択した回答に設定された得点を成立させる条件にすぎない」


 佐伯が顔を上げる。


「各選択肢には個別の得点を設定している。ただし、その値は投票前には公開しない」


 真壁は続けた。


「全会一致すれば必ず加点されるわけではない。零点、あるいは減点となる可能性もある」


 教室に、短い沈黙が落ちた。


 黒田が舌打ちする。


「揃えりゃいいって話でもねえのかよ」


「どちらへ揃えるかまで考えろ、ってことだな」


 一条が言った。


 全員が同じ答えでも、それだけでは足りない。


 多数派に合わせれば安全とも限らない。


 一人だけ違う答えを持っている人間が、全員を損から止めている可能性もある。


 だから、票数だけでは決められない。


 モニターに、新しい表示が追加された。


『公開質問権』


 黒田が顔を上げた。


 佐伯が声に出して読む。


「公開……質問権?」


 表示が続く。


『本試験に限り、第1試験最下位クラスには、救済措置として追加権限を付与します』


『対象クラス 一組』


『公開質問権 全二回』


『第五問終了後 一回』


『第六問終了後 一回』


『公開質問による質問と回答は、全参加者へ公開されます』


『公開された質問と回答は、全参加者共通の公開記録として扱われます』


 佐伯が画面を見た。


「一組だけなんだ」


 高瀬が少し表情を曇らせる。


「じゃあ、一組が誰に聞くかは分からないんだよね」


「そこまでは書いてない」


 久世が答えた。


 黒田は画面を睨んだまま、椅子に深く座り直した。


「また質問かよ」


 誰が対象になるのか。


 何を聞かれるのか。


 それは、まだ分からない。


 ただ、聞かれた質問と答えは全員に知られる。


 それだけで、情報を持っている側には十分な圧力になる。


 一条が久世を見る。


「直人」


「うん」


「仮投票で割れた時、最初にやることだけ決めておこう」


 黒田が呆れたように言う。


「まだ問題も出てねえぞ」


「だからだよ」


 一条は落ち着いたままだった。


「内容じゃなく、割れた時の話だ」


 佐伯が訊く。


「多数派に合わせる、とか?」


「それは決めない」


 一条はすぐに答えた。


「少ない方から理由を聞く。多い方も、なぜその答えなのか説明する。それから決める」


 天宮が頷く。


「票数だけで答えを決めない、ということですね」


「そう」


 黒田が鼻を鳴らした。


「五分しかねえんだろ。そんな綺麗にいくかよ」


「いかなければ点が入らない」


 久世が言った。


 黒田がこちらを見る。


「分かってるよ」


「なら、最初から一人を黙らせるよりはいい」


 一瞬、黒田の目が細くなった。


 久世はそれ以上続けなかった。


 誰か一人を黙らせて、全員の答えにする。


 それで全会一致と呼べるのか。


 画面が切り替わる。


 六つの問題枠が並んだ。


 内容は、まだ開いていない。


 第五問と第六問の枠には、


『一組 公開質問権』


 の表示が付いていた。


 高瀬が小さく言う。


「何を聞かれるんだろう」


 黒田がすぐに返した。


「まだ俺たちが聞かれるって決まったわけじゃねえだろ」


「そうですね」


 天宮が言った。


「誰が対象になるのかは、まだ分かりません」


 久世は六つの枠を見る。


 一人に決めさせる試験ではない。


 多数派に従えば終わる試験でもない。


 違う意見を一度隠し、


 その違いを見せ、


 最後には名前を出して一つに揃えさせる。


 画面の一番上に、新しい文字が出た。


『第一問』


 六人が黙る。


 その下に、二つの選択肢が表示され始めた。


 久世は右親指から手を離した。


 今度は、


 六人で、一つの答えにしなければならない。

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