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第21話 指名手配エルフがうちに転がり込んできた件

「……まあ、いいわ」


 刹那は紅茶を一口飲み、まるで思いついたように言った。


「晩ご飯、食べて帰りなさい」


「えっ、いいの?」


 エリュアールが本気で驚いた顔をする。


 ついさっきまで“耳を削ぐ”と脅されていた相手とは思えない反応だった。


「まあね……」


 刹那はふっと笑う。


 その笑みは穏やかで、逆に少し怖い。


 正人は空気を変えようと、何気なくテレビのリモコンを手に取った。


「なんかニュースでも見る?」


 電源を入れた瞬間。


 画面いっぱいに赤いテロップが躍る。


【速報】【火災発生 テロの可能性】


「うわっ」


 三人の視線が一斉にテレビへ向く。


 スタジオのキャスターが慌ただしく原稿を読み上げていた。


『現場の岡部さん、そちらはどうですか!?』


 画面が切り替わる。


 夜の街。


 赤色灯が乱れ飛び、消防車、救急車、パトカーが入り乱れている。


 若い女性リポーターがヘルメット姿で叫んだ。


『こちら現場です! 謎の爆発の後、火災が発生! 現在も消火活動が続いております!』


 背後では、黒煙を上げる雑居ビル。


 窓ガラスは吹き飛び、炎がいくつもの階から噴き出していた。


『幸いにも死傷者は一名も確認されておらず、奇跡的との見方も――』


 そこで正人の顔色が変わる。


「……このビル」


 エリュアールも口を半開きにした。


「さっきまでいた場所じゃない……?」


 刹那が静かに視線を逸らす。


「……似た建物なんじゃない?」


「窓吹き飛んでる階数まで一致してるけど!?」と正人。


「…………」


「…………」


 刹那とエリュアール、同時に顔を背けた。


 絶対知っているやつの反応だった。


 すると再びニュース画面が切り替わる。


【警察から逃走した容疑者とみられる人物の映像】


「え?」


 防犯カメラ映像。


 そこに映っていたのは――


 中折れ帽。

 トレンチコート。

 時代錯誤なモダン・フィルムノワール風スタイル。


 そして目立ちすぎる金髪。


 エリュアール本人だった。


「ぶっ!!」


 本人が紅茶を吹いた。


 キャスターが真面目な声で言う。


『金髪の女性とみられます』


 コメンテーターが頷く。


『この時期にこの装いは、かなり不自然ですね』


「服装批評されてる!?」


『複数の組織から犯行声明も届いており――』


「なんで複数!?」


『警察はテロの可能性も視野に、この人物の行方を追っています』


『現在、防犯カメラ映像から足取りを――』


 部屋の空気が凍った。


 正人、刹那、エリュアール。


 三人とも固まる。


 そして、ギギギ……と音がしそうなほどぎこちなく、エリュアールが二人を見た。


「あ、あのさ……」


 珍しく弱々しい声だった。


「しばらく……ここに泊めてもらえない?」


 沈黙。


 正人と刹那が顔を見合わせる。


 数秒後。


「……うん、いいよ」


 正人が先に答えた。


 刹那も肩をすくめる。


「あんたが捕まると、こっちまで面倒になるし」


「やったぁ……」


 エリュアールは本気で泣きそうな顔になった。


 だが次の瞬間、刹那がにっこり笑う。


「ただし条件があるわ」


「な、何?」


「正人に色目使わないこと」


「使わないわよ!!」


「あと家事全般やりなさい」


「えっ」


「掃除、洗濯、ゴミ出し」


「ちょ、ちょっと待って! 亡命条件が重い!!」


「嫌なら警察に出頭しなさい」


「やります!!」


 即答だった。


 こうして――


 一般人たぶん成川正人。


 ヤンデレ危険物セーラー服・刹那。


 そして全国指名手配一歩手前のポンコツエルフ・エリュアール。


 三人の、奇妙すぎる同居生活が幕を開けた。





☆ここまで、読んでくださり、ありがとうございました。


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