表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/40

第三十話

 その書類を目にし、次の瞬間起きたのはどよめきでも悲鳴でもなく。

 ……沈黙だった。


 噂好きで、騒ぐのが大好きな貴族達の沈黙。

 それこそが何よりガズリアという存在の異質さを物語っていた。


「ちが、これは……!」


 そして、その事態にはさすがのマキシムの状況を理解せずにはいられなかった。

 私の手から書類を奪いとり、叫ぶ。

 見られないように隠しながら。


「……あれは、あの人の署名だった」


 しかし、先頭にいた貴族がぼそりと漏らした言葉を区切りに一斉に会場をざわめきが支配する。

 それも、先ほどと違う嫌悪感と忌避に満ちた言葉が。


「皆様に信じろ、そうは言いません」


 その会場の中、私はあえて顔を曇らせたまま続ける。


「……ただ、私は手遅れと判断して離縁を決意致しました。皆様が巻き込まれることのないようだけは、私は祈っております」


 そこで私は言葉を切る。

 他にもガズリアとの証拠は用意していた。

 ただ、もう必要ないことを私は理解していた。


「違う! 騒ぐな! 私は少し話した……! 違う、そんな事実など無い!」


 そうしなくても、もうマキシム本人が全てを悪化させてくれていたのだから。

 そんなマキシムを冷ややかに見つめながら私は思う。

 本当ならここまでする気は私にはなかったのに、と。


 妻に裏切られたかわいそうな夫。

 それが私がマキシムに残す最後の置きみやげのつもりだった。

 その立場であれば、マキシムに同情する人間もいるだろう。

 特に女性の立場が弱いこの社会だと私を敵視する人間も多い。


 そうなれば、マキシムは被害者のまま立場が必要異常に悪化することはなかった。

 私が悪者でこの件が終わらせるつもりで、最後の慈悲位は残すつもりだった。


 ──そう、ガズリアの名前で脅すことさえなければ。


「おい、あれ本当か……」


「ああ、確かにあれはあの人の署名だった」


「……つまり、豊穣の女神がこんな行動にでたのは」


 先ほどまで貴族達が私の機嫌を取っていたのは私が目の前にいたから。

 心の内では増長した女が、と思っていた人間もいただろう。

 その空気が一気に変わっていく。

 全てはマキシムの自業自得ではないか、と。


「私は、そんな……。これは勘違いで」


 その空気の中、顔色を真っ青にしたマキシム。

 その様子が、今更になってようやくガズリアとつきあう意味を理解した事を物語っていた。

 しかし、もう全てが遅かった。

 地獄の様な顔色で周囲を見渡すマキシム。


「勘違いである、そう本当に誓えるかマキシム」


 ──とどめを刺すような、冷え切ったアルダムのの声が響いたのは、その時だった。

 ストックがなくなってしまったので、次回から火、土の週2話投稿になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ