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第二十九話

「……なっ!」


 アルダムの宣言に、マキシムは目を剥く。

 そして、その言葉を否定する言葉を求めるようにその目が周囲を見るが、その願いに答える人間はいなかった。


「万歳……!」


「スリラリア領、なんて良い名前だ……!」


 もうこの時には、貴族達はどの陣営に着くか決めていたが故に。


 たちまち起こる私達への歓声。

 それにマキシムの表情に信じられない、と言いたげな感情が浮かび。

 ……次の瞬間、その目は憎悪に変わった。


「お前ばかり……!」


 その言葉に主語は無かった。

 けれど、その視線の先を見れば一体誰に向けたものか容易に想像できる。

 公爵家当主、アルダム・バルタリア。

 若き英才たる彼に向けられた言葉だと。


「何も知らないくせに」


 そして、それが見当違いな言葉だと私は理解していた。


「……ライラ」


「貴方程度がアルダムを語れるなんて思わない方がいいわよ」


 にっこりと笑いながら、私はマキシムに吐き捨てる。

 その苦しみは私も知らない。

 けれど、少しなら想像することができてその少しだけでどれだけ酷いところからあがいてきたのか私も想像できた。

 故に私はにっこりと笑って告げる。


「こうなったのは貴方のせいよ」


「っ! この……」


 その瞬間、マキシムの顔に怒りが宿る。

 それを見ながら、私は思う。


 ……この男は、本当にいつまでも自分の責任を自覚しないのだろうな、と。


 本当なら私はここで追いつめるのをやめるつもりだった。

 これ以上マキシムを追いつめたところで何の意味もない、そう私は思っていたが故に。

 スリラリアを奪われた、私に裏切られた、アルダムに圧倒的に負けた。

 それで、いいと私は思っていた。

 だから。


「今から起こるのは、貴方が引き起こした出来事よ」


「何をするつもり……」


 そう問いかけるマキシムを無視して、私は前にでる。

 その最中に、奇しくもマキシムと同じように怪訝そうな表情をしたマリアと目があう。

 ここからはマリアとの打ち合わせに無かった出来事、その表情も当然だろう。


 ──今から行うのは、この一ヶ月で私が用意していたマキシムへの報復なのだから。


「もう一つ皆様に宣言、いえ、告発しないといけないことがあります」


 騒がしかった会場が、私の声によって静まりかえる。

 それを確認し、私は続ける。


「それはこの度私が離縁を決意した経緯に関わる話になり、皆様への善意の忠告の為の告発となります」


「おい、ライラ? 何を言って」


 焦った様子でマキシムがそう声をかけてきたのはその時だった。

 その態度はマキシムも何かを止めないといけないと感じた事を物語っており、私は内心少しは成長したのかと思う。

 ただ、もう遅かった。

 私はある書類、散々私を脅すのに使われたそれを持ち上げ叫ぶ。


「──ドリュード伯爵家は前公爵家当主ガズリアと関わりがあります」


 私の手にあるもの。

 それはかつて私を脅すためにマキシムが使ったガズリアの署名がされた書類。


 ……それを私は、意趣返しの為の道具として、今使っていた。

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