表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道化と冠  作者: 青螢
62/69

そこにサボテンがあるからねっ!

「サボテンなんて登れんかよ!? てか、これサボテンかぁ!?」

 桔梗さんが正気を疑うかのような目で俺を見てくる。

 そんな熱い視線やめろよぅ、てれるー(棒

「サボテンだろ、この形! あの顔!!」

 The・サボテン。ゲームキャラクターに居そうなサボテン。あのデフォルメ感割と好き。あの虚無っぽい目が逆にかわいい気がする……。

 とか言ってる場合ではなく。

 近くで見てみると、サボテン(仮)の体はうねっている。たくさんの蔦が絶えず動いているようで、正直気持ち悪い。これで赤っぽい色だったらミミズみたいで、うげぇってなる。とっかかりも見当たらないし、上るのは少し難しそう。

 うねっているから、変なとこに足突っ込んだらそのまま呑み込まれそうだな、これ……。

「うーん、どうやって上んだこれ??」

「おめぇが言ってきたんだろうが!」

「そりゃここにサボテンがあるからしょうがないね!」

 Q.なぜサボテンに登るのですか?

 A.そこにサボテンがあるからさ!

「サボテンは山じゃねえんだよ!!」

 桔梗さんのツッコミが刺さる。イラつきゲージが急上昇。

 本体に近づいたから蔦の攻撃が結構厳しい。紙防御だから当たったらほんとまずいって。攻撃も補正かからない分弱いから、だんだん取りこぼしそうになってる。まずいまずいまずい……。

 そもそも作戦は伝えてたは伝えてたと思うんですよ? 今更ほんとに登るのか的なとこに戻られても困りますん。登るしかないんだよね!

 今使えるスキルを確認。よし、まぁ、行けるね。ちょっと無理があるかもだけど、やるだけやってみましょうかっとこさ。

「しかたないなぁ……桔梗さん、おもっきし振りかぶってクレメンス!!」

「は? ……行くぞ」

 変なこと言うのはいつものこと。慣れてる桔梗さんは、一瞬だけあっけにとられたけどすぐに察してくれた。周りの邪魔を一掃する。そして少しの時間を確保して、俺に向かって構えた。

「来い!」

「よっしゃ!!」

 タイミングを合わせて、桔梗さんの剣に乗る。そのまま相手のゴールにシュー……じゃなくて、打ち上げられた。バットみたいに? 剣士補正の筋力的なあれで、俺は結構高く飛び上がる。

「“壁渡”!」

 ブーツのかかとを打ち合わせて、スキル発動。物質がかわる境界線を地面とする、装備品のスキル。水面とか、壁も走れる。重力とか関係ないから便利だけど、その分持続時間が短いのが難点。

 さっさとしないと落ちるから!! そして地面がアリジゴクみたいになってるから、呑み込まれる前に次の脚出さないと!!

 地面からまっすぐ伸びるサボテン(仮)の胴を走り抜ける。

「“トリック! 防魔+素早さ!!”」

 もう一回素早さを上げて、一気に駆け上がる。

 足元不安定! こけてなんていらんないから頑張って、俺!

 蔦は体に取り付いた虫でも払うかのように俺を狙ってくる。耳元でブンって音が聞こえたときには、かなり肝が冷えたね。

 うん、うん……びびるよびびる。わかってる。でもゲームだし! これくらいは体験済みでしょ? イケるって。

 ギリギリで避けるって、ビビるけど、ぞくぞくする。楽しいって、よっしゃって、思うよね!!

 横に飛びのいたり、少し頭を下げたり、それでも足は止めない。時間が切れる前に頂上へ。

 目を通り過ぎたあたりで靴のスキルが切れた。でもご安心。ハクが察して小さな箱型結界を空中に設置。階段みたいに俺の進路上に次々と現れる。それを伝ってさらに上へ。

 最後の結界を踏み台に、ぐっと一回ためてから高く飛び上がる。

「“トリック! 力&知恵!!” “ムーン・サイズ”」

 ステータス入れ替えて。杖を攻撃特化型に変更。上からつるはしみたいに花に振り下ろした。

「ぐぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあああああ!?」

 蔦モンスターの悲鳴。花は結構弾力があって、鎌はぽよんとはじかれたけど、花自体は少し切れている。蔦の口……洞? からも汚い悲鳴らしきものが放たれた。うんうん、苦しんでるよね。

 結果は上々!! HPゲージも結構減りましたよっと。

 つまり、花は弱点。魔法攻撃は吸収するけど、物理攻撃は通る! えーと、なんだっけ? QED?

 跳ね返された勢いをそのままにして、後ろに倒れて落ちていく。

 飛び降り自殺って、途中で怖くて気絶してから死ぬって聞くけど、今の俺は大丈夫。死なないってわかってるし。

 いや、そもそも死ぬつもりですらないし。

 地面とキッスする前に、体をひねって体勢を整える。リアルじゃできないぜ、こんな芸当。

 足を下にした瞬間、ハクからのフォローが入る。温かな風がふわりと俺を包んで、ゆっくりと地面に下ろしてくれた。ダメージなし! すぐさま蔦から離れる。一旦情報整理して、本番に備えますかっと。

 蔦からは目を離さないようにして、バックステップでいち、に、さんと。襲い掛かる蔦をかわしつつ。時に切り捨てて、桔梗さんのところまで戻った。

「どうなんだ?」

「あー、ちょい待ち」

 桔梗さんの陰に隠れて、極力何もしない時間を作る。まぁ、最前線でそこまで余裕なんて出ないですが。蔦の攻撃すごいすごい。紙防御なんでマジ被弾は勘弁。

 よし、とりあえず今かかった秒数確認。スキル発動時間と照らし合わせて……あー、一回寄り道したからその分は、このくらい引けばいいかな?

 うーん、ちょっと足りない。延長手段は用意してるけど、それもどこまできくかわからんしな。

 まぁ、でも、うん、範囲内っちゃ範囲内? ちょっと無茶が過ぎるかな?

「まだかよ!?」

 桔梗さんから催促がかかる。そりゃ俺の分も頑張ってくれてるわけだし、つらいよね。

 ちょっと作戦がお粗末な感じもあるけど……そこは気合で乗り切りましょう! 俺、考えるのは好きだけど、こういう戦闘なら割と脳筋特攻野郎なんで。

 てか、もう、考える時間もなさそうだしな……。

 次の一回で決めるといったからには、ここで決めないとダメ。でも長引けはその分他のコマが消える。使うかどうかはともかく。そもそもやる気失ってるやつも多いわけだし、長引かせるより力技でも終わらせた方が吉。

「ハク、とりあえずいこう」

「ん」

 たった一音だけど、とても力強くて、俺はとてもとっても安心なんだ。俺の雑な作戦でも、そのチートで何とかしてくれるってね。

 いったん立ち止まって、蔦の方に向き直る。ぐっと鎌を構えなおして……ギャグじゃないよ?

「オウル、戻って」

 影の色をした梟が、俺の肩にとまった。

 幻想級の特殊効果。普通の武器なら固有スキルがあったとしても一個。でも幻想級は二個持てる。その時点で破格だろうって? でも幻想級はチートにはならない。

 もちろんレアすぎるから普及してないってのもある。でもね、それ以上に、扱いが難しいんだって。持ってる上級者でもファッション扱いしちゃうレベルで。性能はぴか一なんだけど……まぁ、望まない方向なんだよね。

「“『知恵の梟』解放”!!」

 くるりと一回、杖で体の周りに円を描く。するとそこに魔法陣が現れた。繊細で、綺麗な、赤い光で構成されたその魔方陣は、鼓動するように明滅する。

 梟の目が開いた。禍々しくて、暗く沈んだ真っ赤な目。俺の鎌もそれに似た赤黒い炎に覆われる。

 幻想級は解放することでそのスキルが使える。オウルの場合は、毎秒5パーセントっていう割と大きめな負担と引き換えに、攻撃力を1.8倍にしてくれる。

 ……そう! 攻撃力!!

 そこらの武器が倍率1.5だからね! 1.8なんて結構高いよ!? さすが幻想級! 最高レア度! って感じ。

 でもね、これ杖なんだよね!! 杖の恩得はほぼ100%で魔攻になんだよね!! そりゃそうだ、魔法職が物理攻撃だなんてそうそうねーよ!!

 ま、俺は物理攻撃しますからちょうどいい相棒なんですが。

 オウルの開放が終了して、役目を終えた魔方陣が消えた。と、同時に走り出す。

「桔梗さん、行くよ!!」

 オウルのスキルは魔力が全部なくなるまで切れない。でも逆になくなったら終わりだから、切らさないように注意しないといけない。回復手段だって限られてるから。ゼロから復帰するのは大変だ!

 発動したら速攻特攻! 行きますこれからノンストップ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ