死に技能が生きると嬉しいですよね
閉じ込められた、だぁ? ナニソレドユコト?
頭にクエスチョンマーク浮かべながら、偵察組の方に顔を向ける。ついでにハクの隣によっておく。だから不安そうな顔しないでくれよぅ。
「どういうことだ? 何があった?」
桔梗さんが偵察組に近寄って事情聴取。相手は不安そうな顔で答えた。
「逆だよギルマス、なんもねぇんだよ……」
うーん、まぁ、そうだろうな?
一瞬で見回せるほど、ここには引っかかる何かがない。何もない。扉も、階段も、見当たらない。
……ここが最終回には思えないしな……。外から見た感じもっと高かったし、二階でラスボスもちょっと、盛り上がりに欠けるし。てか、こんだけうろついてんのにボス出てこないから、ボス部屋とも思えないしなぁ。
ナイナイ尽くしでやんなっちゃうぜ。
「いや……なんかあるだろ、ギミックとか……」
「何かありそうな宝箱も、なんかの像も、謎のくぼみもないんですよ?」
「……床とか?」
「床、か……?」
壁はなめらかな白で、でこぼこなんてないからギミックがありそうな感じではない。床は……タイルっぽい。色もいくつかあるようだから、何か模様になってる可能性はある。
後可能性あるのは、天井? うーん、模様も装飾もない白い平らな天井だけど、謎に光が降り注いでくる。電気とかは見当たらないけど、天井自体が光ってるのか? いや、光ってたとしても光源がないと探索できないし、これはゲーム的に仕方ない部分でもある気がする。壁に蝋燭がかかってるダンジョンもあるけど、それも雰囲気だしの意味が強そうだしな。絶対光届かないだろってとこもよく見えたりするし。しかたないね。
ってわけで、意味ありげなのは床しかないね。階段に蓋した板にはタイルとかはっていないから、ここは空白になっちゃうのかな? をーん?
「誰か空飛べる奴いないー?」
「飛べないけど写真機あるわよー。ラジコンみたいなあれ」
「飛ばして飛ばして!」
そんな感じで写真ゲッチュ。俺も似たようなの持ってるけど、便利だよね、上から写真撮れると。
写真機持ってた人が空中に画像を出してくれて、その前にみんな集まって首をひねる。
「……なに、これ?」
「これ太陽じゃない?」
「中に月があるように見えるんだけど」
「ヒント! ヒントはないのか!?」
「あっは、わかんない」
皆がごちゃごちゃ会話なのか独り言なのかを呟くから、学校の休み時間状態。わちゃわちゃしてる。そんなか俺は無言で首をひねった。
……何と言ったらいいのか……。
この部屋は丸くて白い。その真ん中くらいにオレンジや赤が混ざった丸があって、それを取り囲むように同じ色の直線がある。放射線状っていうの? 太陽の絵みたいな感じ。んで、真ん中の丸の中に、白とか水色が混ざった三日月があるように見える。
真ん中の丸はちょっと陰陽太極図に似てるかな? ……だからなんだってんだ!
「わけわかめん」
結局解決しなくてボソッと諦める。そしたら兎嬢が腕に抱き着いてきた。
「黒鷺さん頭良さげじゃないですかー何とかしてくださーい」
「俺パソコンには強いけどこういうのは……。誰かシャーロキアンいねぇの?」
「僕は時代劇とかばっか見てるから、推理物はちょっと……」
「私は雑食ですけどー、自分で推理するのはちょっと……」
女子三人でそういう会話をしているけど、解決策は完全に人任せって感じで落ち着いた。……おう、わっかんねぇぞ?
てか、ヒントこれだけ? ねぇ、足りてる? これ? 太陽と月でこれどうしろって?? てか本当に太陽と月ですよなぁ???
この絵だけだととっかかりもなさそうで、その場の全員で首をひねってる状態。シャーロキアンがいたとしても、これだけで何か推理できるもんなのか?
「太陽に……」「月に……」
頭を悩ませて静まり返った部屋の中、呆然とした呟きと、自信なさげな囁きが同時に吐き出された。
不思議そうに声の主を振り返ると、帽子屋が驚いたように、ハクが怪訝そうにお互いを見合っていた。
「……読める?」
「君こそなんで……」
二人がそれ以上言葉を発しないので、状況が進展しない。何があったかいまいち飲み込めない俺がぼんやり眺めてたら、後ろから小突かれた。
何かと思って振り返ると、桔梗さんが二人に向かって顎をしゃくる。
あー、はいはい。白狼サン担当の俺さんってか? わっかりましたー。聞きゃいいんでしょ、聞きゃぁよぉ。……このメンバーのリーダーなんだから桔梗さんが聞きゃいいのに、なんで俺に……。あぁ、ハクに警戒されてたか。でも他の奴でもいいじゃーん……って、憧れの白狼様だから積極的に近づく奴いないのけ?
……なんでもいっか。ハイハイ今行きまーす。
「帽子屋、状況説明よろ」
こういう時はハクの前に喋りやすい人に話しかけましょう。ハクの解読してもいいけど、まぁ、通訳の手間が減るからね。楽だよね。喋ってくれればハクは補足すればいいだけだしね。
てか、帽子屋に話聞けばいいなら俺間に入る必要なくない? いらんくない? ハクが関わってる案件は全部俺持ちなの? そうなの??
ちょっと困惑してきた俺の事は放っておいて。帽子屋は俺の問いかけにちょっとハッとしたみたいに目を見張ってから、状況説明をし始めた。
「あ、あぁ、えっと……そうだな、太陽と月は、何色か混ざって形を成しているだろう? そのうちの一色を取り出してみると、文字になるんだ。太陽は赤。月は水色だな。重なってるとこは紫色に見える」
そう言われて画像を振り返る。……赤だけ見るようにしても、文字が見えるような気はしない。あー、でも、若干線状に赤が並んでるようにも見える、かな? 文章になってるのか、縞模様感ある。
「そう、か……?」
「古代文字」
ハクがボソッと呟く。
古代文字? 古代文字って、あの雰囲気出すための? ゲームの設定上の? ファンタジー的なよくわかんない絵図?
「……ハクさん、もしかして『考古学者』持ってマス?」
あのあってもなくても変わらない雰囲気出すための古代文字を読むためだけと言っては過言ではない、ゴミ職業と名高い『考古学者』を……!?
「クロが、遊びは大事って……」
ヤッだ俺のせい!? そうですね! 死に技能の『料理人』俺も持ってましたしね! おまいうだよね!! いやいいんだよ! ハクが楽しいんならいいんだよ!
注目されて嫌なのか、ハクがどんどん下を向いてなんだか恥ずかしそうだぞ。ごめんね!
「てか、帽子屋もそれ持ってんのかよ……」
注目の人物を分散させるために、帽子屋にも話しかける。
『料理人』だって持ってる奴いなかったのに、『考古学者』がここに二人もいるのは、なんか、ちょっと、料理人として虚しいぞ!?
「いや、あぁ、まぁ、そうだね?」
なんだか帽子屋は歯切れが悪い。視線を泳がせて、なんか後ろめたいことがあります! って面してる。おう、なんだよ、腹割って話そうぜ?
「レベル……」
ハクもおかしいと思ったのか、ジト目で帽子屋を見つめる。自分と同じサブ職持ってる奴見たことない&そんなさらっと読めるなんてお前どんだけ極めてんだよって言う目ですね。
……まって、そんな目するって、ハク相当自信があるな? そんな自信があるってお前、どんだけ極めてんだよ?? しかもその上を行くって、帽子屋どんだけ極めMAXなんだよ???
「悔しい」
まって、ハクが負け宣言ぶちかましたよ? ってことは帽子屋のが高いの? ハクってのめり込むタイプだからサブ職も相当レベル高いと思ってたけど、お前の方が高いの? 本当に???
マジかよお前って目で見てたら、桔梗さんが声を出した。
「なんのサブ職かは知らねぇが、なんかヒントになりそうか?」
「あ、あぁ、たぶん……ヒントどころか鍵になるのじゃないかな?」
「そうか。なら読んでもらえないか? できればさくさく攻略したい」
「……分かった。そうだな、私の方が読めるようだし、狼クンには月の文章をまかせてもいいかな?」
「了承……」
面積で言ったら太陽の方が大きいわけだし、月の方が労力は少ないのか? そのことにちょっとハクは不満げだけど、仕方ないってわかってるのかすぐに返事をする。
ハクは何かスキルでも発動してるのか、操作するように空中で手をさまよわせた。反対に帽子屋は微動だにせず視線だけを画像に走らせる。
……なんだろう、本当に、帽子屋の熟練度合いが異常に見える。不思議。いつもチートはハク様なんだけども。あ、料理人MAXの俺が言うなって? ごっめーん★
「んー……これ、魔法かな?」
一通り読み終わったのか、帽子屋が考えるように首をひねった。
ハクがまだ読み終わってないみたいで、口をへの字に曲げる。……ガンバッテネ。
「魔法ってなんだ?」
「呪文のように見えるよ。狼クン温存するなら詠唱はさせない方がいいと思うな」
「はいはーい、じゃあ、俺よみます!」
そう言って外部組の一人が手をあげた。神父服を着た彼は、ニコニコ優しげに微笑んでる。でもちょっとハクは嫌そうに一歩後ずさった。
「白狼様とお近づきになれるチャーンス?」
「ふふっ、狼クンのハードルは異様だからそんなことじゃどうにもならないと思うよ」
何故か帽子屋が辛辣な言葉で牽制した。なんで? まいいけど。
「終った」
ハクが紙に写した呪文らしき文言を神父服に手渡す。
せめて言葉を交わせるとでも思ってたのか、神父服はえ、これだけ? って顔してる。なんとなくざまぁ。
「じゃあ、私が先に五節詠んでから、次に太陽と月の呪文を一緒にって感じかな。詠むときになったら肩叩いてあげるよ」
「……はーい、了解でーす」
帽子屋は真顔で、神父服は不満そうに、部屋の中央に立った。
「詠むよ。“太陽に輝けるは 永久に続く栄光 緑育てる恵みの光 頂点に輝ける 無欠の王”」
とん、と神父の肩が叩かれ、二人の詠唱が重なる。
「「“月に力あり その光 隠す力あり されど奢ることなかれ すべてを隠す力は無し”」」
月の呪文はそこで終わりなのか、神父が口を閉じて帽子屋を見上げた。
「“漏れ出でる光を見よ 光に照らされる導を見つけよ それが反逆者たちに力を与えるだろう”」
最後は呪文というよりも、なんか、予言みたいだった。こういう呪文もあるんだな、とか興味深く聞いてたら、周りが少し暗くなる。
きょろきょろして、気が付く。上が、天井が、どんどん黒い影に侵されていく。
「おわ、なんだ!?」
「えーっと、日食?」
「あ! なるほど、月が太陽の光を隠す?」
「見て見て! なんか光ってるよ!!」
上に気を取られてて、下を見ていなかった。黒い丸い影が天井の中央に陣取ったころ、誰かがそれに気が付いて床を指差す。
黒い影は天井より少し小さめで、影の隙間から光が漏れ出ている。それに照らされて、床の模様の一部が淡く輝いていた。
急いで誰かが空中写真を撮ってみると、その光が部屋の一部に魔方陣を描いていることがわかる。魔方陣の縁に、陣とは違う、文字みたいな模様が刻まれていることも。
「転移陣だね! 黒鷺、真っ先に犠牲者……実験体になってくれよ?」
「やぁやぁ帽子屋さん、うっかり本音出ちゃってるし、建前もかーなーりー、酷いこと言ってるぜ?」
次の道を見つけて、帽子屋がウキウキとして話しかけてくる。イラッと来て俺は笑顔で足を踏んづけてやった。躱された。ちくせう、誰が犠牲者だ、実験体だ!!
「で、あれも文字?」
「呪文だね。それで転移するんじゃないかな」
「“進め 天への梯子 おちるには 汚れた血”」
ハクが後ろから読み方を教えてくれる。……何とも言えない嫌な気分だの。
「汚れた血? おちる? 天への梯子ってのも、なんか、縁起悪いなぁ」
天への梯子上るのに、おちるってのがなぁ……おちる? 落下死? そんで天国に上るって? うーん、なんだかちょっと違う気もするけど、それしか思いつかねぇぜ。ふーきーつー。
「だからこそ犠牲者だね?」
「おいこら」
俺の想像を知ってか知らずか、にんまり笑う帽子屋に、もう一回足踏みをお見舞いしてやる。……避けられた。ちぃっ!
「まぁ、行かないことにはどうしようもねぇし。行くぞ」
俺達の話を聞いてた桔梗さんが先陣切るみたい。ヤダカッコいい。そこにしびれる憧れるぅ?
桔梗さんはハクにもう一度呪文を確認して、魔法陣の中央に足を進める。呪文を唱えると、桔梗さんの姿が掻き消えた。
転移は本当にするみたいだね? でもその先に何があるかなんてよくわからんし……、桔梗さんがボッチで魔物の巣に放り込まれたら可哀想だから俺達もさっさと行くことにする。
さぁて、何が待ち受けているのかな?




