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道化と冠  作者: 青螢
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ぴょんと兎が跳ねるように

「で、誰がどうやってあそこまで行く?」

 目的が決まったとしても、過程はどうしましょ?

 中央には多く人が集まっているけど、結構バラバラに人が点在してる。俺たちは後ろで待機って作戦たててるから、あんまり他のメンバーの注意を引けない。あんまりハクが動きすぎると、敵の注目が集まってどうしようもなくなっちゃうからなー。

 というか、作戦外の行動をとるとちょっと桔梗さんに怒られそう。未確認の情報流して混乱させたくもないし、俺ら横通るからって言う情報を浸透させるのも面倒だ。

 ひっそりこっそり、行くのが一番楽っちゃ楽。

 でもそれをどうやってするかって話よなあ。

「ぐるっと迂回するかい?」

 かなり広く人のいる範囲があるから、結構時間要りそうだけど……それが安全?

「はいはーい! 私に提案があります」

 急に兎嬢が手をあげて飛び跳ねる。

「私の武器に兎の人形があるんですよ! それでぴょんっと一っ跳びしてみません?」

 そう言って取り出したのはツギハギの茶色い兎の人形。

 兎嬢の職は人形を操る系だったはずだけど、効果は人形によっていろいろ。これは兎だし、足には自信があんのかね?

「それ、あっちまで届くの?」

 アリス嬢が俺の疑問を代わりにぶつけてくれる。

「わかりませんけど、やってみません? と言いますか、これ最近手に入れたばかりで使ってみたいんですよねー。三段ジャンプできるみたいですし」

 使いたいって方が本音だよね? え、なに、ぶっつけ本番?

 アリス嬢と帽子屋が呆れたように兎嬢を見ていた。

「まぁまぁ、物は試しです! あ、無理そうだったら助けてくださいね」

 ひんやりとした緯線をものともせず、兎嬢は人形を装備する。それから人形を三メートルくらいの大きさにして、それに乗った。

「いっきますよ!」

「人の意見は聞きましょうねー、兎嬢」

 試したくてうずうずが止まらなかった兎嬢をフォローをするため、仕方なく魔法を準備しておく。

 えっと、こういう時は簡易結界を用意して、落ちそうだったら足場を作ればいいかな。……それって地面認定されんのかぁ? 着地できたことになれば、またそっからジャンプできると思うんだけど……。

 とりあえず受け止められればいっか、と思考を停止して、兎嬢を見守る。

「きゃっ!?」

 人形の跳ぶ力に一瞬驚いたように可愛らしい悲鳴が聞こえたが……それからは順調だった。

 うん、順調。意外と脚力がすごい。一段目で中央の戦闘地域を軽く跳び、二段目目のジャンプで会談の付近へ。三段目は小さめにジャンプして、階段の上の方に着地した。

 なかなか有能じゃんか、あの人形? レア度いくつだろう? 手作り? なんかの景品かな? ……可愛いなぁ。

 うらやましげに眺めてたら、パーティでのボイスチャットがかかってきた。

「無事上れましたよ~! 特に敵影も見えません。ただのだだっ広い部屋ですね!」

 兎嬢の報告に俺たちは拍子抜け。

「簡単だなぁ」

「あぁ、やっぱり何もなかったんだ?」

「ちょっと!? クロちゃんたち何してんの!? 上れたって何!?」

 突然キンキン響く女の子ボイス。

 あ、パーティチャットって、リリア嬢も入ってんのか。忘れてた★

 真ん中らへんで頑張って皆をサポートしてたのに、急によくわからないチャットに巻き込まれたリリア嬢……なんか可哀想。焦って足元が一瞬おぼつかなくなってるのが遠くに見えた。

「あー、ごめん?」

「謝られても困るんだけど!?」

「えーっと、だな……?」

「ちょっと待ってください。先に説明させてくれません?」

 リリア嬢に説明をしようとしたらさえぎられた。んー、なんかあった? それなら登れるってぬか喜びさせてもあれだし、先に兎嬢に話してもらおうか。

「ちょっとまってリリア嬢。雑音だと思って聞き流しといて」

「~~~~っ、わかったわよ!」

 イライラしてるみたいだけど、こっちにかかわってる余裕はないのか、聞き分けがよくてよかった。

「はい、じゃあ失礼して……。私階段の上にいるんですけど、その横? に、石の板みたいなのがあって、私はそれ蓋に見えるんですけどね? なんかそれが、立てかけてあるんですよ?」

「蓋?」

「ええ。蓋に見えます。それで、私がそれに触ると、分数みたいなのが浮かんできて……分母が五十で分子が一です。それが出てくるんですよ」

 石の蓋が立てかけてある。今ここには減らない敵。追いかけてくるのを阻止できる? そのためのギミックか何か?

 分数? 兎嬢が触ると出てくる……。

 ぱっと思い浮かんだのが、某引っこ抜いて戦わせて食べられちゃうゲーム。まぁ、五十人集めれば動かせるんじゃね、その蓋。みたいな。

「ふむ、分母は必要人数でもあらわしているのかな? もう一人くらい行けばわかるだろうか」

 帽子屋が顎に手を当てて考えている。

「兎嬢一回帰ってきて、もう一人くらいのせてけない?」

「行けると思いますよ。でも乗せるならアリスでお願いしますね」

 ってなことでもう一往復。

「あ、分子が二になりました」

「二人で触ってるよ」

 ……じゃあもう確定でいいかな? いいよね? てか暇なんだよね正直。とっとと二階いっちゃおうぜ? めんどくせえ。

「リリア嬢、今の流れ聞いてた?」

「聞いてたわよ。何? 五十人そろえれば動かせるのね? ……この時間無駄だったってことでファイナルアンサー?」

「いえーす、ざっつらいっ」

「はぁ……」

 俺もため息つきたいワ。

「あたしがギルマスに連絡するわね。クロちゃんたちは……しんがり少し手前かしら?」

「了解だー」

 その後すぐに行動開始。俺たちは迂回するように階段に行って、数人を残して上へ急ぐ。

 二階は本当に何もない。もう半分以上の人が上に上がっているけど、特に何も起こっていない。数人が偵察組として、全員上に上がり次第見回りに行くようだ。と言っても何もないから偵察も何もなさそうに思えるけど。

 階段を上がる人間を敵は追いかけて来る。でも後に残った数人の人に足止めをされていた。といっても、数が多いから全部残して上に行くのは難しそう。

「クロ、やる?」

「まぁ、いんじゃね? 少しくらい」

 ハクさんが守られ御姫様ポジションに飽きてきたのか、俺にお伺いを立ててくる。

 いくら温存つっても、ちょぉっとくらいいいでしょ。装備の効果ですぐ回復するだろうしな。

「桔梗さん、早く上がって」

 一番最後のパーティの、さらに最後を務めようとする桔梗さんに声をかける。

「つってもよ……」

 強くはないがわらわら来る敵にうんざりしたような声で桔梗さんが答えた。

 全然減らないから必ず数匹が追い付いてきてうざい。完全には振りきれない。

 だって桔梗さん近接がメインだし、振り切るのにそこまで向いてるとは思えないしな。

「はよ。ハクさんがぶっちしてくれるってよ」

「あ?」

「もういいや、やっちゃえハク!」

「ん」

 ハクが杖を構えて階段の上から桔梗さんたちごと狙い撃つ。一応味方認定されてるからハクの攻撃は桔梗さんたちには当たらない。……でもまぁ、いきなり攻撃されたらビビると思うけどね?

 詠唱無しの、最少魔力の、初心者でも使えるような、ザコ魔法。それでもチートなハク様は、中級魔法のレーザーみたいな威力がある。不思議。

 白い光の光線が敵を一気に消滅させて、なんもいない道を作った。

「桔梗さん、早く上がって?」

 急に視界を真っ白に染め上げられた、ぷらす、チートな威力に呆然としてる桔梗さんに、俺はもう一度同じ言葉をかける。

 眉を顰めながら桔梗さんは前にいた人たちをどやしつけて階段を駆け上がった。

 待機してた人たちが慌てて階段を閉め切る。……これで完全に分断された、かな?

 ためしにちょっと蓋に触れてみるけど、もう分数は現れない。壊せるのかな、とも思ったけど、どうも破壊不能オブジェに変化しているもよう。

 ……これ、どんどん帰れなくなってないか?

 敵を分断する目的だったけど、自分たちで自分たちを閉じ込めたような気分になって、少し不安を感じる。外界から分断されたのは俺達、ってね?? わろえねぇぞ。

「黒鷺!」

 むすっとしてたら桔梗さんが強引に肩を引く。

「なぁに? 俺今ちょっと考え事を……」

 文句を言う俺の事なんか気にせず、桔梗さんは内緒話をするポーズだ。ひそひそ話しかけてくるのはいいけどさ、ハクがつまんなそうですよ? ただでさえ暇なのに、話し相手の俺を取るなよ……。いや、今話してなかったけどさ。

「なんだよ今の魔法。温存って言う予定だったろ!?」

「はぁ? あれハクの最弱魔法よ? てか最初から使えるような、超初心者用。もう回復してんじゃね?」

 あれで消費するのは一パーセントにも満たない、ごく少量の魔力だ。三秒あればもう完璧に戻ってるはず。

「嘘だろ?」

「マジもん」

 しばし沈黙。

 うんうんわかるよその気持ち。ハクの魔法っておかしいよね。前々からだったけど、何度見てもおかしいと思うよ。ぜったいなんかバグでしょ? そんなレベル。

 すぐバグ疑うってよくないかもだけど、ハクのは絶対に何かがおかしい。数値を違法にいじってないって証拠あるからなおさら。

 何でかな? まぁ、わかんないけども。

「……いや、前より強くなってないか?」

「え?」

 同意するような顔を見られたのか、桔梗さんが頷きかけた。でもその前に、眉をひそめて否定する。

 前より強い? いつから、何が?

「わからんが、俺が前見たより強くなってる気がする。最近だ。その時からレベルも変わってないはず……」

「……おかしいでしょ。見間違えじゃ?」

「その可能性はあるが……あぁ、まぁ、どの道、でたらめに強いのには変わらねぇな。はぁ、温存する意味なくねぇか? そんなに強いならもうちょっと手伝ってもらうか……?」

 ぶつぶつと攻略プランを考え直し始めた桔梗さんから少し離れて、俺はまた違うことを考える。

 レベルが変わってないのに強くなってるわけがない。イベントとかでスキルポイント貰って、それをどうこうすれば強くはなるけど、まずそんなイベントを最近はやってない。だから強くなってるはずがない。

 だから桔梗さんは前から強かったって自分を納得させた。

 でも、そんなこと言われたら気になっちゃうなぁ。そう? 強くなってるかな? どうなんだろ……。

 気になるけど、前の威力とか覚えてないよ。異様に強かった印象に隠れてしまう。

 さて、どうやって検証しようか。とか思ってたら、二階偵察組が声を上げた。

「やっべぇ!! 閉じ込められた!?」

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