攻略ハジメ
うっかりしてたら年が明けてしまいました……。
話が全っ然進みませんが、今年もよろしくお願いします。
桔梗さんが前に立って、なんか、口上を述べてる。いわゆる、これから頑張ろうね! を難しく長ったらしく、格式ばってる感じに変えて言うだけの作業。
まぁ、あれだよね。雰囲気大事、的な? でも正直これ要るんですかね? 一致団結にはいるかもしれないが、まともに協力してこうとしてる俺らはともかく、ただ攻略のために集まった外部組はイラついてるのが丸わかり。んなもんいいから、とっとと行けやって言うのが顔に出てるし、貧乏ゆすりが酷い。
前から感じてたけど、こんなんでホント大丈夫かなぁ。足引っ張らないでほしいけど……。
「黒鷺……胃が痛い」
「でしょうな」
いよいよ入るという時に、ちょっとだけ桔梗さんが近寄ってきた。そして第一声が「胃が痛い」……。お疲れさんです。
「俺も前から蔑みの視線に耐えてんだぜ? 桔梗さん、もうちょっと頑張れよ~」
「お前は能天気そう……そういうの気にしない図太い精神持ってるから」
「言いなおしても変わってねぇんだけど?」
この人割と冷静じゃね? 真顔でそういう冗談言ってくるの、ホント殴りたいけど。
「クロちゃん」
桔梗さんの後ろから、ひょっこり姿を現したのはリリア嬢。ちょっと不安げに瞳が揺れている気がしないでもないけど、他は全くいつも通りに見える。
「やぁ、リリア嬢。これから頑張ってね、最前線でしょ?」
桔梗さんは一番危ない最前線を受け持ってる。まぁ、指揮者でもあるし、先陣切らないとっていう責任感もあると思うけど。……指揮者ってどっちかというと、後ろでふんぞり返ってるイメージある。でもリーダーは突っ走りつつ隊列整えさせるのが、上位ギルドの主流である。大変だよね。部下が有能なとこが多いってだけかもだけど。……あれ? 有能な部下今いる? ……頑張って桔梗さん。
そんな大変な桔梗さんのパーティだから、変則的にリリア嬢をプラスしてもいっか。みたいな判断になった。つっても、リリア嬢は俺らのパーティも気にしちゃうだろうから、一番胃が痛いのリリア嬢な気がしないでもない。胃が痛いって言うか、大忙し?
「うー、できるだけそっちも見るようにするから! 危なくなったら呼んでよね!?」
「気にしなさんなよ。俺達にはあの天下のハク様がついてるんだし、そーそー危なくなんねぇよ。……いや、もちろん俺も頑張りますけどね!?」
ちょぉっとしたお茶目な冗談で元気づけようと思ってただけなのに、だんだんリリア嬢の目が据わっていった。酷くない?
「もう! ちゃんとやってよ!! クロちゃんさぼり癖がすごいんだから!!」
「そんなさぼってたつもりはねぇんだけどなぁ……」
「わ か っ た の ?」
にっこり笑って念押ししてくるから、仕方ねぇって思って、おどけて敬礼する。
「いえす・まむ」
「苦しゅうない!」
この会話で合ってるかは分かんない。でもま、楽しそうだからいい? いいよね!
「ほら、お前ら行くぞ?」
「「いえす・さー!!」」
リリア嬢と笑い合って、塔の中に入っていく。
一階層。
中は思ったより広い。やっぱ、ダンジョンの外見と中身は一致してないことが多い。天井は二、三階分ありそうだし、平面的な広さはちょっと測れないくらい。んー、校庭二個分くらい? もっと広いかな? てか、学校によっても変わるか。とにかく広いってことで。
門をくぐってしばらく何も起きなかった。入ってきた門は閉じたけど、よくあることだからみんな気にしない。出禁って言われてたしね。
でも敵の姿が全く見えなかった。誰もいない。薄暗い、何もない、ただ広いだけの空間だった。
あ、右奥の方に螺旋階段を発見。あれで登るのか。……はてさて、何階層あることやら。
「おら、作戦通り陣形組め! 気ぃ抜くなよ!!」
狐の姐さ……兄さんがそう怒鳴った。狐蝶さんだっけ……狐の姐さんイメージがすごい。
そうだそうだ。観察も大事だけど、先に準備しておこう。
帽子屋たちに目くばせして、ハクを囲って外側を見張る。今のところ異常ナシ。とりあえずいくつか呪文を待機させて、麻痺爆弾を手にもっておく。
あ、そうそう。ただのゲーム時代とは違って、なんか魔法の待機がやりやすくなった。あと個数も増えた。でも逆にできない人もいるって噂。帽子屋は俺が何個もできるって言ったら、引きつった笑いを返してきた。不思議だよね。ハクはもっとできるみたいだけど? って言ったらorz状態になった。ワロタ。
とかまた思考が脱線し始めたところで、床に黒い靄が立ち込めた。そりゃもうびっしりと。隙間なく。
それらが一部一部でまとまっていって、形を成す。……総勢百五十の敵モンスターの出来上がり。観測スキル使ってきっちり計ったから、間違いなく百五十。
さすがにちょっと気を引き締めませんとなぁ! ……でもなぁ……?
「行くぞぉ!!」
桔梗さんの掛け声とともに、いくつものパーティが敵の中に突っこんでいった。俺たちは後ろの方をキープ。戦況を見るのと、分析するのが俺らの役目。
降りかかる火の粉だけ払って、それもできるだけかからないように牽制しておく。
「……暇ですね!!」
しばらくして兎嬢が音を上げる。いや、実際暇なんですけど! 前の人たちががんばってくれるから正直そこまで牽制も必要ないし、敵もそこまで強いわけじゃないから分析もいらないレベル。
こりゃ暇ですわ!!
「……弱い」
ハクサンまでつまんなそうに呟いた。……我慢できないほどなんですね。ハクが愚痴るなんて珍しい。
「暇ではあるけど……さすがに長くないかい?」
「え、長い?」
帽子屋が首をかしげるように辺りを見回すのにつられて、アリス嬢もきょろきょろと首を回す。
「なんか蛇っぽい生き物でもいた?」
「そうじゃなくて……」
「あ、ムカデ!? ムカデですか!?」
「いや、だからそうじゃなくて……」
「帽子屋の話聞いてやれよ……」
とか言いつつ、観測スキルを発動する。
帽子屋の長いってのは、戦闘時間が長いって話だろう。桔梗さんだって何体もばっさばっさいってるのがわかる。とっくにあそこのパーティだけでも、倒した数は余裕で三十体超えてるはずだ。なのに全然減ってる気がしない。
最初が多いせいでそんな気がしてんのかと思ったけど、さすがに戦闘が長引きすぎだ。観測結果も敵が全然減ってないことを告げてくる。現在数百四十五。……完璧におかしい。
「増殖? 分裂? 幻覚? 後なんか案ある?」
「……復活?」
「うわ、めんどくせー……」
ちゃんと止めさして、経験値も貰えてる。ってことは、倒してることは確かなんだよな? んん、復活するなら終わりが見えない。
あー、よく見ると、倒した後の敵は黒い靄になってるような気がする。この部屋に入ってから、靄が出現して、それがモンスターになったように見えたから、靄をふっ飛ばさなきゃダメってことかなぁん?
不死って言われるヴァンパイア殺す方法もあるわけだし、この敵が復活する系統の敵でも、ちゃんと弱点あればいいんだけど……。
「復活……だったら逆に倒せてない、という案はどうだろう?」
帽子屋の笑いまじりの提案に、こっちは笑えませんヨ。
「げっ、そっちのがめんどくね?」
倒しても殺せないってこと? 何それ、リアルゾンビゲーム? いやでも、あれちゃんと弱点あるよなぁ。てか、手足捥いで、顎砕けばとりあえず対処できるし。
いやいや、経験値もらえてるから死んでるのは死んでるんじゃ? あー、死んだけど死んでないのか? それって経験値貰い放題じゃん? それはそれでウハウハチック。
でもそんなの今どうでもいいし。あー、対処対処……。原因わかんないと対策できないけど、原因わかっても対処の仕方はあんのかね……?
「むしろ倒す必要あるんですかね?」
「「「……え」」」「……?」
兎嬢の爆弾発言。固まる俺達。
「いえ、普通のフィールドみたいに、モンスターって無視できないんですかね? だって、ほら、階段はありますけど、ドアがあるようには見えませんよ? 上に行くための条件とかあるんですかね? あったとして、とりあえず通れるかどうかだけでも、見てから考えてもいいんじゃないです?」
……。
「その発想はなかった」
完全になかった。てか、どうやって倒すか、を前提に作戦たててたし。
ん? んー?? 確かに条件あるようには見えない。大体そう言うダンジョンはわかりやすく門とか、扉とかがあって、制限がありますアピールしてる。でもここただのらせん階段に見えるよなぁ。
敵もなんか、そこまで強くないわけで……数は多いけど、準備をちゃんとした四十二人のグループだったら問題ないレベル。だったらただの邪魔目的に思えなくも、ない? 門を守ってるように見えないし。
あれ、これってば……もしかしたらもしかするんじゃね?
「そういえば、最初に入ったパーティが瞬殺されたって聞いて、ヤバい、強い、倒せるのかな!? って思ってたけど、六人パーティだったよね……?」
「百五十って多いと思っていたが、四十二人だったらそこまで多いようには思えないな?」
「邪魔するやつはとっとと殺しちゃえ! って思ってましたが、純粋に戦力温存って言ったらスルーが一番ですよね?」
「……戦闘回避?」
完全に意見が一致してしまったようなので……。
「んだば、ちょっくらいってみます?」
「「行きますか!」」「行こうか」「……」
兎嬢とアリス嬢は拳を振り上げて、帽子屋はにんまり笑って、ハクはうっすら頷いて、同意を示す。
……まぁ、これで見えない壁とかにさえぎられて、上に行けなかったら爆笑もんなんですけども!!




