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道化と冠  作者: 青螢
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黒鷺さんのファッションチェックとあれやこれ?

 とにもかくにも、攻略当日!!

 俺達はバッグに回復アイテムとか、なんかあった時用の替えの武器とかを詰め込んで中央大陸の棟の前に集合した。

 攻略メンバーだけじゃなく、見物人? 野次馬? 激励の人々? とかよくわかんない人たちも集まってて、塔の前は混雑気味。いつもは道端に転がってる人たちも、ちょっと不思議そうに首を伸ばしてこちらを伺ってる。

 早めについてしまった俺たちは、ちょっと暇を持て余し気味。そわそわしながら雑談しようとして、ちょいちょい気まずい雰囲気が漂ってる。

 それを無視して俺は、ちょっとみんなの装備をちら見……いや、ガン見する。さすがに高難度だと思われるし、初めてのダンジョンってこともあって気合入ってる人も多い。

 特に帽子屋。

 前は同じ色がないんじゃないかって感じにカラフルな装備だったけど、日常生活を送るにあたって、実はおとなしめの色合いの紳士スタイルにまとめていた帽子屋だった。しかし! 今は!! さらにおとなしい!!

 真っ黒なロングコートは足元まで、ブーツは紐まで真っ黒な編み上げタイプ。シルクハットも真っ黒だけど、青い、薄く輝くような薔薇が二輪飾られている。武器は魔導書って言われる本タイプ。装備品は全部普通に手に入る中で最高ランク。相当強力な物たちだ。完全に気合入ってますねー、こりゃ。

 顔は薄く白塗りで、右の頬に青い涙のマーク、左目の下には泣きぼくろのように小さな赤いハートマーク、アイシャドウは赤系統で、目の周りにラインストーンみたいな小さな石がちょいちょいと……。あ、これ魔石だ。魔石はいろいろ使えるのは知ってたけど、メイクにも使えるんだ?

「なんだい黒鷺? じろじろ見て?」

「いやさ、服だけなら大人しいなって思って?」

「何が起こるかわからないからね、ちょっといいものに変えてみたんだ。……趣味ではないけど!!」

「ないんだー……」

 確かに派手派手だったもんな。……アレ趣味だったのか。いや、趣味じゃなかったらやらないだろうけど、なんか、派手すぎとかそういう次元じゃなかったような……?

「まぁ、前のは派手すぎるとクレームも来ていたし、この機会に新調してしまおうかと思ってね。これは戦闘用だけど、日常用はまた違うのを用意したよ。君のおかげで、こういうのもそろえられるくらいに余裕ができたからね。ありがとう」

「いや、それはいんだけどさ……?」

 日常用はまた別って……それただの部屋着とかそういう意味じゃないよね? 普通にそこらへん行く戦闘服とか、日常着る用の普段着的な? いや、戦闘用の服で外出すればいいよね?

「はー、おしゃれさんめ……」

 俺もさすがに色々新調しようかな……。今はガチ戦闘服だけど、普段着も……あぁ、でも街中でPKができるとこもあるから、外出着は軽めの戦闘服で……後で考えようか。うん。

「あ、ねぇ! そのメイク、もしかしてなんか効果あるの?」

 服よりも目先の新しい発見を追及することにした。

「おや? よく気が付いたね?」

「いや、魔石使ってるでしょ?」

「? あぁ、石かい? アイシャドウにも練り込んであるんだ。キラキラしてるだろう?」

 そう言われてみれば涙マークもハートマークも、アイシャドウもちょっとキラキラしてる。

「本当だ。ラメじゃなくて? ……すごい、こだわりの一品?」

「ふふっ、サブ職『メイク師』聞いたことないかい?」

「さすがにないなー」

 そんなのもあんのかい……多すぎね、種類?

「効果値が低い上に珍しい職業だから、なり手が少ないんだろうね……。化粧品は手作りすればさらに効果が上がるから、少しこだわっているかな。……今度やってみるかい?」

「あっはは。化粧苦手なんだよね。こすっちゃいそうだし、ありがたいけどやめとく」

 でもちょっと化粧品作成は気になるなぁ。他のサブ職でも代用できるかな、その辺は。作ってみようかな……リップくらいは欲しいよね。あと化粧水とか?

「あぁ、そうだね。落ちないように設定もできるけど、効果をあげると手作業になって、落ちない設定にはできないからなぁ。化粧映え良さそうなんだけど、残念」

「じゃあ、はーい! 私にやってくださいよ! アリスも興味あります?」

 突然入り込んできた兎嬢、そして引っ張り込まれたアリス嬢。

「興味かぁ、あるにはあるけど……ちょっとハードル高くて」

 兎嬢はちょっとテンションが高い。閉じ込められてから化粧とかとは無縁状態だったけど、やっぱ嬉しいもんなのかねぇ?

 アリス嬢は可愛い物好きって言っても、さすがに化粧はハードル高いの? ……スカートの方が高くね? って思うのは俺だけ?

 まぁ、スカートは着ればそれで終わりだけど、化粧はちょっと違うし? 研究とかも必要だし? だからかな……?

 ちょい、っと首をひねりながらアリス嬢の服に視線を移す。

 ……一番気合入ってるのは帽子屋だけど、一番変わったのはアリス嬢だと思う。

 さすがにワンピースで攻略に行くのはそれこそハードル高かったのか、今日はズボンスタイルだ。ズボンスタイルというか……よさこいスタイル????

 上は、右は袖アリ、左はノースリーブみたいになってる着物、下は袴みたいに見えなくもない幅広のズボン。袖のない右腕には、長い手袋の手の部分がないみたいな? 長いリストバンド、みたいな? 布が巻かれてる。靴はゴツめのブーツみたいなやつ。打撃補正が入るかもって感じの。金の髪はポニーテールにして……なんというか、かっこいい。かっこいいけど、黒基調の中にちょっとずつ和風の柄が入ってるから、かわいくもある。

 すんごい似合ってる。カッコよくてかわいいって、最強じゃね? 金髪だと少し浮くと思うけど、なんか、似合ってるから問題ない感じもすごい(語彙力

「その装備だったらきりっとしたメイクも似合いそうだね。いつものかわいい感じもいいけど、こっちは大人っぽくてカッコかわいいよ」

「ですよねー!」

「ホントは袴にしようと思ったんだけど、ちょっと蹴りにくいかなって……」

 少し照れたように言い訳みたいなことをするアリス嬢はかわいい。……じゃなくて、えーっと、確かに肉弾戦ならちょっと袴は大変そう? 穿いたことないからわかんないけど!

 でもまぁ、袴にブーツでも大正ロマン? みたいな感じになっていいとは思うけど、ズボンの方が納得感あるよね。個人的な意見ですけども。

「かわいい子はなんでも似合うから、何でも良いのだよ」

 そう言って俺はアリス嬢にじゃれて寄り掛かる。アリス嬢ものってくれて、ふざけて押し返してきた。

「もー、そんなこと言ってさぁ!」

「あはは~。……で、兎嬢は……」

「おや、次は私の番ですか?」

 アリス嬢の装備をじっくり眺めて満足した俺は、兎嬢に視線を移した。移したら、ファッションチェックか何かと勘違いしたのか、兎嬢はなんかポーズをとってこっちを見てくる。

「……うん、変わらんね?」

「なんですって!?」

 兎嬢はただのゲーム時代と同じ、ブラウスに赤いタイ、黒いズボンに黒いヒールの靴。防御力なさそうな普段着みたいな装備品。

 こいつ、帽子屋みたいに派手だったわけでも、騎士職みたいに鎧とかの装備だったわけでもないから、普段着も戦闘服も変わらないんだよね。変える必要なくて。

 今はそれに加えて丈の短い、深緑のジャケットを羽織っているけど、やっぱり現実の道歩いても大丈夫なレベルで普通。ある意味平常でいいのかもね?

 あぁ、そうだ、ただのゲーム時代と違うコト。髪が少し癖っ毛になってる。

 元々現実では酷い天然パーマだったらしいんだけど、それが嫌でゲーム内ではストレートのぱっつんだったんだと。でもなんか閉じ込められてから、どんどん日時の経過とともに現実寄りの髪質になって……今では完全にストレートの面影もない。パーマかけたみたいに、ふわふわだ。前髪のぱっつん感も完全にない。

 どんまい。

 ……ドンマイとかそう言う前に、一体どうしてそうなった感あるな。VR機を使う際の検査に、髪質を調べるのなんてないはずだからゲームに組み込むのなんて無理だと思うんだけどなぁ?

「変わらないって、黒鷺さんこそ変わらないんじゃないですかぁ!? もうちょっとおしゃれに気を遣ったらどうなんです? 一応女性でしょ!?」

 一人首をひねってた俺に、兎嬢がぎゃんぎゃん吠え立てる。

「い、いや、変わらないって、別に悪口じゃないぜ? 特にコメントする場所がなかっただけで……」

「酷くないですか!? ジャケットとか一番目につく変化じゃないんですか? ちょっとくらいコメントしてくれてもいいでしょう! それでも男アバター使ってた人ですか!!」

「……兎嬢や……俺に男女どっちの役割求めてるワケ……?」

 てか、男アバター使ってるからって、女性をほめられるかと言われると……うん、無理かな?

「どっちもです!! 無理なら男でお願いします!!」

「え、そっち!?」

「そうですよ! アリスも黒鷺さんのことずっと男だと思ってましたもんね?」

「う、うん……」

 また巻き込まれたアリス嬢は、兎嬢の勢いに引き気味にうなずい……頷かれた……なんでや、こんなに女子力高いやろ……?

「料理もできるし、服も作れるし、アクセサリーも作るぞ。見ろ、女子力の塊だろ」

「いや、黒鷺? 君のは職人力とか言うんじゃないかな……?」

 苦笑い気味に入ってくる帽子屋のツッコミに、納得いかない!!

「ひ、ヒド!! お菓子だって作れるよ!? マカロンとか作っちゃうよ!?」

「お菓子イコール女子力ってのがまた安直ですよね」

「料理男子は今時ごろごろいるんだよ、クロさん」

「なん、だと……」

 女子力ってなんだっけ、と軽くショックを受けているけど、兎嬢の言葉は続く。

「というか、アクセサリー作るならつけましょうよ。というか、もうちょっと格好整えませんか? 可愛いじゃなくても、もうちょっと女性らしいというか……ほら、ちょうどメイク師さんもいることですし、おしゃれしません?」

 そう言う兎嬢は……くっ、シンプルだけどなんか女子っぽい雰囲気がある。ブラウスもちょこっとフリルがついてたり、タイも可愛いワンポイントの刺繍がついていたりしてる。ついでにいうと、一番の女性らしい感じは胸のデカさな気もしないでもないが……。

 おっおっ、服装には興味ないけど、なんか悔しいぞ? おっおっおっ?

 てか、うん、俺の服装を見てみる。

 表側は黒いローブで何もわからない。フードも被っているから顔も見えないし、重たい雰囲気かもしれない。が、これだって地布よりワントーン明るい色で、複雑な模様が織り込まれてるし、それなりにおしゃれ感あると思うんだけどなー?

 中身? 中身は……前と色違いの、黒いハイネックノースリーブと黒い皮っぽいズボン、編み上げブーツ。腰に杖。……あ! 左にハクにもらったピアス!! アクセサリーしてるじゃん!!

 フードを避けて、銀色のピアスを見せびらかす。

「ほら、兎嬢! これは俺作ってないけど、アクセサリーつけてるよ! 格好整ってるよ!!」

「……見えてなきゃ意味なくないです?」

「…………いえす」

 論破。終了。わろた。

「それに、それは綺麗ですけど、髪留めは黒っぽい銀色に赤い石じゃなかったでしたっけ?」

「よく覚えてらっしゃる」

 黒っぽい銀色の筒状の金属に細かい模様、赤い石がはまってる髪飾り。俺の持ってる杖みたいでお気に入りなんだよなぁ。

「杖とお揃いなんですから、どうせなら髪留めと同じ色に揃えちゃえばどうです?」

「あ、いや、それは……」

「だめ」

 横からツン、と袖を引っ張られる。ハクがむすっとして兎嬢を睨んでいた。

 あー、大分除け者にされてたから、ちょっと……いや、かなり機嫌悪そう。てか、ちょっと泣きそう。

「そう、これ大事なもんなんだ。だから両方変えられないなぁ」

 耳元を押さえて、苦笑う。

 効果値も高いし、俺にあってるし、ハクが俺のために誂えてくれたんだ。弱かったとしても手放せない。

 髪留めも……外せない理由もあるし、手放せないよなぁ。

「むー、そうですか?」

 何か察したのか、兎嬢はあっさりと引き下がった。引き下がったけど、ハクはまだ俺の袖を引っ張ったままだ。

「えーっと、ハクぅ? どうかしましたかぁ?」

 ハクはそっぽ向いて、口をへの字に曲げて、俺の袖をツンツンツンツン引っ張る。……完全に拗ねてますわ。あー、どうしようか。

 ちょっと困って、ハクの服を眺める。いやぁ、人の装備品見るの好きなんだよね。見たことないのばっかだし、手作りとかだと参考にもなるし。

 まぁ、ハクさんは本当にいつも通りなんですけどね。

 髪には細かい髪飾りを編み込んでいて、しゃらりとなる音が涼やか。光によって青を含んだように見える、細かい刺繍の入った白いローブと、青い石の蛇が巻き付いた銀色の杖が『孤高の狼』である白狼様の象徴みたくなってる。特に蛇の杖。戦闘中の変化もレア故に。ハクしか持ってない最上級レアの杖だから。

 でもちょっと美形が過ぎるので、上に真っ白なマントを着せて、フードを深くかぶることを義務付けてます。……俺が強制していいかわからないけど、ちょっと! いや、かなり!! 心臓に悪いレベルでのイケメンすぎるんだよな。イケメンっつうか美形すぎて。

 無用な争いは避けるため、できる限りフードはかぶろうって約束した。意味は分かってないけど、約束は守ってくれてるようでよしよし。

「んー、ハクは綺麗よな」

「!?」

 真っ白な頬に手を伸ばすと、ハクは思い切りびくっとして後ずさる。

「人間、醜いより綺麗な方がいいけど、こんだけ美人じゃぁ人生イージーモードどころかハードモードじゃねぇ?」

 すっと目を細めて、後ずさった分を詰める。髪の毛を一房さらって、指先に巻きつけて弄んだ。

「????」

 焦ったように視線をさまよわせるハクは小動物みたいで……ちょっと、ちょっとだけ、い じ め る の が 楽 し い 。

 パシャッ! パシャパシャパシャ!!

「……あのー、兎嬢?」

 突然シャッター音が連続で響いてきたので、俺達二人、仲良く固まる。ぎぎっ、と錆びた人形みたいにぎこちなく首を動かして、兎嬢を見ると、撮影用の端末みたいなアイテムをこっちに向けてた。

「どうぞ!! そのまま! 続けてください!! こっちは気にしないで!!!!」

 鼻息荒くそう叫ぶ兎嬢だけど……いや、無理だよ!?

「続けねぇわ!! 何とってんだよ! 俺女だからね!?」

 そう言えば兎嬢は腐女子だったな。ネタにされてたな……やめてほしいなー!!

「大丈夫です! 私の中で黒鷺さんだいぶ男のカテゴリーなんで!」

「意味わかんねぇし、よく見ろ! フードの不審人物二人が接近してるだけであって、ぱっと見タダの布だからね!?」

「それこそ大丈夫です!! 私の脳内補完力甘く見ないでください!!」

「知らねーよそんな能力!!」

 標的をハクから兎嬢に映して、ギャーギャー言い合う。ついでに撮影端末を奪おうとちょっとした追いかけっこ。

 しばらくして兎嬢が華麗にトンズラこいたので、諦めてハクの元に戻った。

「あー、わるかったなぁ、ハク」

「……」

 兎嬢の勢いにのまれたのか、ハクはまだちょっと呆然としてる。いや、ホントすまん。

 ああいう冗談に免疫がないから、ちょっとからかうのは控えようと決めた。悪かった。本当にすみませんでしたー。

 そうこうしてる間にみんな集まったのか、集合がかかった。いつの間にかしれっと、兎嬢が帽子屋メンバーのとこに戻ってたのでいらぁっときたけど、もうさわげねぇと思って我慢。

 さて、やっと攻略開始かな?

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