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道化と冠  作者: 青螢
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最初の晩餐

明けましておめでとうございます!!

今年も不定期ですが頑張ります。よろしくお願いします!

 家に入るとすぐ、二階からハクが下りてきた。

「大丈夫だった? どうなった?」

 眉をひそめた顔は、きっと俺にしかわからない変化なんだろうけど、心から本気で心配していることがわかる。優しい優しいハク。

 ……。

 フードを外して、ハクににっこりと笑いかける。安心させるように、ハクのための笑顔を。

「後はあいつら次第かなぁ。俺は最良の結果が報告されるって信じて、夜飯の準備をするかねぇ」

 そっとキッチンの方に歩き出す。ちょうどいいから服も最近のにチェンジ。

 なんか疲れた。別にいいけど、なんか疲れた。嫌いじゃないけど、なんか、疲れた……。耳をふさいで、目を閉じて、引きこもりたい気分。

 でも、ご飯の準備しないと。ハクもアリス嬢も、俺が作らないと、ご飯食べられないし。他の二人もそうなんだけど、アリス嬢はやっと一息つけるようになったみたいだし。

 あぁ、お風呂先に入りたいかな? そっちの準備もしないと。服はあるかな? タオルと一緒になんか用意しとくか……?

「クロ」

「んあ?」

 リビングへの扉に手をかけた時、ハクに呼び止められた。

「何? ハク?」

 何でか振り返ることができなかった。取っ手に触れたまま、少しうつむいて用を聞く。

 後ろで戸惑ってる雰囲気がする。なんか言いたいけど、きっと言葉が見つからないんだ。いつもそう。タイミングはピッタリなのに。言いたいものもきっと合ってるのに。でも、それが口から出て来なくて、焦って、言葉がどんどん消えていく。

 知ってる。ずっと一緒にいたから。でもきっと……。

 ハクが近づいてくる。それからそっと頭に手がのせられた。

「クロは、頑張った」

 ほら、持ち直すと強いから。ちゃんと考えられる。おろおろしないで、ちゃんと進める成長できる。

 あたたかい。外見は氷みたいな綺麗さだけど、中身は陽だまりみたいに心地いいあたたかさ。

 乾いてささくれた俺には沁みる。よくも、わるくも。

「大丈夫。きっとクロは大丈夫」

 恐る恐るといった調子で撫でられるとかなりくすぐったい。喉の奥でなんか変な声が出た。

「んぅー、ありがと……」

 まぁ、何でもいいんだけど、俺の事なんてさ。可愛いハクとアリス嬢のため、ちゃんと気合い入れなおしましょうかね! この渇きには目を瞑ろう。

時々、本当に時々、激しい渇きを覚えるだけのナニカなんだから……。

「クロ……」

「あー、そんな悲しそうな顔しないでくれよ。大丈夫だから」

 くるりと振り返って、逆に頭をかき混ぜてやる。

「でも、クロ……痛そう?」

「ぷっ……痛そうって何よ? 怪我してないしね。大丈夫大丈夫」

「……」

 そっちこそ、痛そうな顔。あー、鈍感じゃない子相手は大変。どうか気が付かないで。俺の弱さ、見つけないで。じゃなきゃ、もう立てない。

「さ、支度するべ! ハク、手伝って?」

「……うんっ」

 少々腑に落ちないものの、頼られて嬉しいのか元気よく返事をするハク。あー、これで誤魔化されてくれんかねぇ。

 厨房の方に進みながら考える。

 コワイコワイ。ゲームはゲームだけど、現実になったゲームは、距離がうっかり近づきすぎちゃいそう。厄介事に首つっこんでも距離をとれると思ってたけど、ハクは難しい。これならもっと注意しないと。ちゃんと『黒鷺』やんないと。じゃないと俺が現実持ち込んじゃいそう……。

 それはだめだよね! これは現実になっただけの、ゲームだ。楽しまないと!

 ……ね?


「「いただきまーす!!」」「「いただきます」」

「めしあがれー」

 あの後、なんだかんだまとまったのか、皆と一緒に食卓を囲んでいる。ちゃんと五人だぜ。よかったよかった。

 ハンバーグも好評で、次は食後のティータイム。帽子屋は紅茶、アリス嬢ははちみつ入りのホットミルク。兎嬢はカフェオレ。ハクはココア。俺はブラックコーヒー。無駄に広いこのレパートリーよ……。

 てか、誰かしら遠慮してくれよ。全部手作りなんだぞ? あ?

 まぁ、今日までだかんな。帽子屋メンバーめ……!

「いーじゃないですかぁ、黒鷺さん。ここに下宿させてくださいよぉ」

 今日までって宣言した途端に兎嬢が食い下がり始めた。どうしてもボロ宿生活には戻りたくないらしい。風呂どころかトイレもないだろうから気持ちはわかる。

 わかるけども! これ以上面倒事はごめんだぜ。

「断固として拒否させてもらおうか? 今日は泊めてやるからよ……」

 無駄に部屋はあるんだ。こっちじゃなくても別棟だって空けようと思えば空けられるんだ……。だが下宿は拒否だっつうの! 面倒なんて見ないぞ!?

「いいじゃないですかぁ。ほら、同性同士、なにかと……」

「なんもねぇよ。ちょっとごたごたはあったが、俺ら何とかなってるし、お前らも何とかしてくれや」

「ぐっ、ちょっとぉ、か弱い乙女がこんなに困ってるのに助けてくれないんですかぁ?」

 くねっとしてぶりっ子ポーズをする兎嬢を、正直キモいなと思って眺める。胸デカいし、男には受ける……かも? しれなくもなくもないかもしれないけど? 俺女だし。ぶりっこは、ねえ……?

 しかも……

「俺より年上の乙女ぇ?」

「その口ぬいつけっぞオルァ」

 おっと、歳の話は禁句だったか……。あまりの変貌ぶりに男性三人がドン引きしてるぞ……?

「あ……こほん。失礼。でもでもぉ、実際の話ですよ? こんな飯マズ状態じゃ生きてけないと言いますか……」

 さすがにぶりっ子はやめたが、それでもまだ食い下がってきた。それに続いて帽子屋も言いにくそうに口を開く。アリス嬢も。

「まぁ、それは私もお願いしたいんだが……」

「あ、僕も……」

 切実だもんな、飯マズ問題。現実世界じゃ栄養とか気にしなくても、うまいもんにあふれてたしね。

 俺も面倒な時はカップ麺とかだったけど、美味しいもんなぁ。

「まー、それはちょっと考えてるから安心してくれ。あ、あと家やるからお前らそこギルドハウスにでもしたら?」

「「「「……」」」」

 俺以外の奴らが目を見開いて俺を見つめる。

「え、あれ……?」

 俺なんかへんなこと言ったか?

「クロ……」

 おや、意外。ここでツッコむのは兎嬢だと思ってた。まさかのハクサンからのツッコミだぜ。

「家、一つで十分……」

 しみじみと、つぶやくように言われるとなんか悪いことしてる気分になるんだが。え、そんなおかしい?

「いやまぁ、全然使ってないんだけど。ここ建てる前に使ってたところだしなぁ。ってわけで、掃除はいらないと思うケド、気分的に風通しはした方がいいんじゃないかぁ?」

 そう言うとミニギルド会議が開かれた。

「くれると言うのならありがたいことではあるが……」

「さっすが黒鷺さんって感じですよねぇ……」

「無駄にスペック高いというか……チートだよね。チート」

「ま、いいんじゃないですか? フェンリルさんもチートですし」

「バランス? いや、それにしてもおかしくない?」

「おかしいね」「おかしいですよ」

 全部聞こえてるってか、隠す気もないのが腹立つな。

「ちなみに大きさって……?」

 恐る恐るアリス嬢が聞いてきた。

「ん? んー、三部屋ずつ二階の全六部屋プラスちょっとした地下室」

「二階建て!?」

「普通に一軒家……」

「地下室は必要だったのかい……?

「クロ……」

 俺悪くないよね!? 確かに無駄に広いかもしれないけど倉庫だったらそれくらい必要だよね!? ついでに言うとこじんまりとはしてるぜ? 都会の狭い土地感半端無かったからね……。

「あー、生活するには風呂とか、台所とかに、二部屋くらい潰さなきゃだけど。一人一部屋はギリあるでしょ」

「お風呂、お風呂作れちゃうんですね……」

 遠い目ながらもなんか、嬉しそうに笑い始めた三月嬢に引きたい。ドン引きしたい。けど、それをしたい俺の事を他の人が引いてる……。なんでなん? 俺悪くないヨ?

「僕は帽子屋さんと一緒でも大丈夫だけど……」

「私もそれで問題ないが……」

「私はさすがにあれですけど……。えーっと、でもぉ……」

「猫、兎……」

 無駄に言いよどむ感じに察する。

「いい? あんたら、他のギルドメンバーはもう諦めるか片手間に探すくらいじゃないとだめだぜ? じゃないとお前らがお陀仏だ。おわかり?」

 目の前の問題が片付いたから他のギルドメンバーにも目を向けたくなったんだろうけど、アリス嬢たちにこんだけ手間かけて、ぼろぼろになってんのに、無理だよね。俺くらいはバッサリ言っておこう。

 ハクから若干非難の視線を感じるけど、はっきり言っとかないと、ね。

「そう、わかってはいるさ……」

 あっさりと、諦めたような笑みを浮かべた帽子屋は、思った以上に沈んだ目をしていた。正直言って、闇落ち寸前に見えるんですが。

「わかってんならいいんだけど……」

 てか、それ以上言えなくね?

「だ、大丈夫ですよ! 無暗に探すよりも、拠点があったほうが集まりやすくなります。ね、帽子屋さん?」

「そうだよ! 僕みたいなのがいたら大変だし、頑張らないとね!!」

 この三人組は、本当バランスがいい。帽子屋を起点に左右でバランスとってる感じ? ヤジロベエみたいなもんかね。帽子屋がバランスを取らせるし、二人がいるから帽子屋もたっていられる。はまれば問題なくなるよね。

 俺はこいつらのギルド、この三人だけかと思うくらいにしか他のメンバーを見たことがない。だから正直、この三人だけで大丈夫じゃねぇかなー、とか思ってる。さすがに言えないけどさ。三人以上の事は、俺は関わる気ないぞ? だってそこまで必要性なさそうだし……。

 そんなこと考えてる薄情な俺の事は知らないで、帽子屋メンバーは決意を固めていった。

「……そうだな。また、そろうように」

「えぇ、私たちはよく三人でしたけど、ギルドは皆ですからね!」

「むっ、それならちゃんとお金ためて大きいギルドハウス買わないと……?」

「確かに……」

「まぁ、今は黒鷺さんに無償で! 借りるとして。皆が集まったらまた買えばいいんですよ! ね?」

「うんうん。そしたら僕は庭のある家がいいな。皆でバーべーキューとかしたくない?」

「わぁ、楽しそうですね!」

「そうだな……」

 楽しそうだから突っこみ損ねたが……無償でっていうの強調しやがった。ちゃっかりしてやがる。でも、借りる、ね。やるっつったけど、出ていく気しかないな。前向きならいいんじゃないの。

 さて、楽しそうなのは何よりだけど、家だけじゃ生活できないのはご存じだったよな?

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