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道化と冠  作者: 青螢
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作戦会議は迷走中

 兎嬢に連れ去られている間に一応俺はハクに拉致られる旨のメールを送っておいたけど、大丈夫かな……。あんま離れていたくはないんだよなー。

 って、そうこぼしただけだったのに……。

「なんでそーなるの……?」

 なんか作戦会議場所が俺の家になってました。って、なんでやねんっ!!

「いいじゃないですか! ちょうど……夜ご飯の時間ですし!?」

「今四時半だぜ早くない!?」

 まだ結構明るいよ!? おやつの時間すぎてたった一時間半だよ!? 全然ご飯じゃねぇよ!

 てか、自分でもわかってるのか、少し詰まってんじゃねぇかよ兎嬢ぅぅうう!

「いや、話してたらいい時間になりますって!」

「完全夜飯目当てだよこの人……」

「バレテーラ」

「……」

 もはや何かを言う気にもなれん……。

 ハクにはお詫びメールを送っておいた。兎嬢みたいな女性には逆らったら負けなんだよ、うん。てか、まず逆らえないよね!

 帽子屋も急な呼び出しにもかかわらず、すでに待ち合わせ場所の『迷いの森』入り口にいるしよぉ。

 あれ、いつもの道化メイクも今日はお休み。っていうか、もしかしたら本当にただのメイクだったのかもしれないな。ゲーム上では装備みたいになってんのかと思ってたけど、洗ったら落ちて、そのまま~みたいな? いやまず、メイク道具とかってゲーム内にあるのか?

「やぁ、黒鷺。それと……三月」

 帽子屋は俺らを見てさらっと挨拶するかと思ったら、兎嬢だけにはやっぱりどう対応していいかわからないように顔を曇らせた。

 兎嬢もちょっと微妙な顔をしたけど、そこでやっと俺をひっつかんでいた手を離して(わかるか? ここまでずっと逃げないように捕獲されてたんだぜ……泣)、帽子屋に向き合った。

「久しぶりですね、帽子屋さん。えっと、その節は……あたってしまってごめんなさい」

 ぺこりと頭を下げた兎嬢は、顔をあげた後、ちょっと気まずそうに笑う。

「私、少し、焦っちゃってて……」

「いや、私も、頼りにならないマスターですまなかった」

 そう言って帽子屋も頭を下げる。

「いやいや! 大丈夫ですよ!! 名目だけのマスターですし!? 私たちにそんな上下なかったでしょう!?」

 兎嬢? それってフォローにしてもどうなのよ……。

「そうだが……」

 帽子屋さんも微妙な顔つきになっちまったし……。

「頼りにならなかったわけじゃなくて、頼りにしようと考えてなかっただけですから安心してください!」

 ……うん? 兎嬢? それある意味酷す……。

「そ、そうか、もはや眼中にないほど頼りにならないと……」

 どうしよう、帽子屋の背後にぶっ刺さった矢が見える。暗雲が見える。キノコまで生えてね? あ、目の錯覚。ソウデスネ。

「あ、ち、違うんですよ!? そう意味意味じゃ……」

「じゃあ、どういう意味だよって言うね!」

 思わず口に出してツッコんでしまった俺は悪くない。

「ちょ、黒鷺さん!?」

「お前の毒舌は、キャラじゃないってことはよぉくわかった。帽子屋は? まだなんか言いたいことあんの? 兎嬢に話させとくといいことないよ」

「酷くないですか!?」

 ぎゃんぎゃん吠えてくる兎嬢をさらっと無視して帽子屋の反応を見た。

「いや、これからは頼られるように努力しよう。三月。本当にすまなかった」

 もう一度頭を下げた帽子屋に、兎嬢は焦って、顔を赤らめつつ叫ぶ。

「でーすーかーらー!!」

 うん、らちあかんこれ、もうらちあかん!

「ほらお前ら、もうそれで仲直りは終了にしてくんない? ハク待たせてんだよ!」

「ごめんなさい」「すまん」

 しゅんっとしている二人を見て、やっと話が進むと安堵する。

「いい? この森は名前のごとく迷いやすいから、ちゃんと俺について来いよ? 一歩でも間違えるとどっかにとばされることもあるからな」

「どんだけめんどい所に住んでるんですか」

「うっせ黙れ。お前みたいに飯たかりに来るやつ避けだ」

 本当はただの趣味だ。土地の広さに引かれただけだ。

「……道覚えたらたかり放題……?」

 ゲームの時だったら、たかる必要ないじゃないですかー! とか言うツッコミが来ると思っていたが……こいつは、俺の予想外の所に目を光らせやがる。

「んなわけあるか」

「ですよねー!」

 当たり前だろ。何帽子屋も少し残念そうな表情してんだこら。

 今日だって嫌々作ってやんだからな。恩に着ろっ!!

 とまぁ、なんだかんだで家に到着。ここまでの道中長すぎだろ……。いつもは家の前まで瞬間移動できるような、ショートカット機能使ってるしな……。

 入り口の前で奴ら二人を少し待たせて、中にいるはずのハクを探す。リビングにいなかったから、部屋か?

「ハク? いる?」

 こんこん。がちゃ。

「あ、お帰り……?」

「ただーま。大丈夫? 暇してた?」

「ううん、いろいろ作ってたから……」

 そういうと少し体をずらして、いろいろ散らばっている机を見せるハク。

「アクセサリー? だったら作業部屋……って、まだ案内してなかったか。悪い」

 別館はサブ職用の作業部屋なんだよな……先に案内しておくべきだったわ。

「だ、大丈夫。それより帽子屋と兎さんは?」

 う、兎さん……だと……!? かわいすぎかっ!!

「く、クロ? 大丈夫?」

 悶えてる俺に遠慮がちに声が欠けられる。おうふ、すまん。

「わ、悪い」

 んー、これハクのキャラ崩壊してないか? フェンリル様大丈夫か? 指摘するべきか?

「待たせてて大丈夫? 俺のことは気にしなくていいから、早く行ってあげて?」

「いや、大丈夫でしょ。でもま、そろそろ行くけど、夜飯どうする? 一緒に食べて平気か? 嫌ならあいつらになんか持たせて帰らせるし」

 てか、なんで持たせてやんなきゃなんだっていうな。押しかけに食わせる飯はねぇっ! って。

「それはだめでしょ……」

 あら、呆れられてしまった。

「俺はへ、へいき、だよ……」

 無理してる感が半端じゃないが、自分で頑張ろうとしてるから何かを言うのはだめだろ。よし、頑張れハク!

「わかった。じゃ、そういうことで。飯になったら呼ぶな」

「う、ん」

「そいじゃ、また後で」

「が、頑張ってね?」

 首をかしげながら応援してくれるハク……可愛すぎかっ!!(ちょい錯乱

「おうよ! ありがとね!!」

 そうして俺は階下に二人を迎えに行った。


「……まさか女の子とは……」

 リビングに案内して邪魔なマントを取ったら、帽子屋に絶句された。おいこらなんか文句あっかよぉ。

「女の子って年でもないが……」

 ただのシャツとズボンスタイルの俺は、キッチンの方に引っ込んで紅茶を淹れながらツッコんだ。

 ん? 聞かなかったけど紅茶でいいんだよな? まさかのコーヒーがいいとか言わないよね? 麦茶とか言わないよね?

 不思議の国のアリスって、紅茶のイメージしかないんだけど。

「そうでしょー!? きりっと美人でイラッときますよねー!!」

 ダイニングの椅子に座って、足をばたつかせた兎嬢がハイテンションです。ナチュラルハイでしょうか。今日ずっとこんな感じです。

 足をバタバタしない! 子供かお前は!!

「なんなの? けなしてんの? 褒めてんの? どっちなの!?」

「両方です!!」

「腹立つなー!」

 そうこうしてる間に帽子屋も帽子を取って椅子に腰かけて、話しに参加する。

「いや、でも驚いたよ。前も会ったのに気が付かないなんて……」

「なんでかねー。気が付かれないんだよなー。変装うまい? ヤッタネ」

「そうですね。声も低いし、柄も悪いし、全っ然女の子に見えませんよー!」

「なんだろう、めっちゃけなされてる気がする」

「安心してください! 今のはすごくけなしてるだけです!!」

「おっしゃ表出ろ」

 本当失礼な奴! 口調が丁寧なのが余計にグサグサ来るなぁ!!

 なので兎嬢の紅茶だけ、すこぉし雑に入れる。正確には最後に残ったお茶を振っていれてやった。ふふん、渋かろう……。

「はいよ、ミルクと砂糖はご自由に」

「帽子屋さん、私の紅茶と変えてくれません?」

「嫌だよ」

 対面キッチンですから、見ようと思えば見えますものね。おほほほほ←

 皆で少し紅茶を飲んでリラックスし始めたかな、というところで、俺はなんてことないような顔で爆弾を投下した。しないと話進まないしね。

「さて、で、アリス嬢のことだけど」

 俺が言い出したら、途端に空気がズーンと重くなる。をいお前ら。やる気あんのかこるぁ。

「別にアリスの姿が云々くらいはどうでもいいんですけど、それをどう引き出すかですよね」

「あぁ、どこにいるかもわからないし……」

「あぁ、俺が知ってるそれは」

「はい??」「は?」

 あぁ、言ってなかったな。

「偶然見つけて、つけた」

「わぁ! ストーカーですね!!」

 兎嬢がはしゃいだ声をあげるのに、さすがにイラッときた俺は超絶低い声が出た。

「すぐに茶化すのやめろ」

 なんども現実逃避したって変わらないってことは、さっきわかったはずだろ? あ?

「すみません」

 ……やりすぎた。ものすごいしゅんとさせてしまった!

「えとー」

「やはり女の子とは思えないな」

 フォローなのかなんなのか、帽子屋はしみじみそう呟く。うん、フォローじゃなかったら怒るぜ?

「……失礼ですねっ」

 思いっきりぶりっ子声で言ったらやっぱり引かれるー。はい、ですよね!!

「こほん、気を取り直して……」

 どうしよう、俺がハズイ。赤面しちまうよぅ。

 紅茶を飲んで気を落ち着かせる。

「でもよぉ、マジな話。他人を拒否っちまってると思うんだよねー。もしかして、アリス嬢が神殿送りになってるの、餓死だったりしたら、よりとっかかりが見つからないぞ」

 ゲームが封鎖されてからもう半月は過ぎた? 現実だと飯を食わなくても水さえあればそこそこ生き延びれるんだったか? 一週間だっけ?

 でもゲームだと食料と飲料の区別はない。つまり、餓死者ってのは水も飲んでないってこと。それは生きようとしてないってことに近い。まずいからって食料拒否するやつらもいるけど、水くらいは味関係ないはずだからな。それに、数は少ないが、果物だってあるんだ。何も口にしないなんて、本当に死のうとしてるってわけ。

 そこらにあふれかえってる餓死者ってのは、大体が生きる気力なくした奴ら。アリス嬢がそれだと、もう話を聞いてくれる可能性もないかもしれん。

「だが、ちゃんと部屋には戻っているのだろう? それなら……」

「死んでも姿を隠したいって言ったら、さらにヤバくないですか?」

「……」

 あー、マジでとっかかりが見当たらねー……。

「そうだ! 黒鷺さん!」

 ぴこんっ、と頭の上に電球マークが出そうな勢いで兎嬢が俺の方を向く。

「あ?」

「黒鷺さんはどうして最初隠してたんです? というか、私の場合はすぐにさらしてましたけど、何でさらす気になったんですか?」

 詰まったら経験者に聞けってか?

「そらー、男として接してたのに、急に女でしたーとか言われたら対応に困るだろ? って言うのが一つ。あと、俺、あんま自分の顔好きじゃねぇの。それがもう一つな」

「自分の顔が好きな人の方が少数だと思いますけど?」

「んー、でもほら、俺結構吊り目じゃん? ガラ悪いじゃねえの。子供に何回泣かれたことか……」

 だからガキは嫌いなんだ! 理不尽すぎるだろう! 何も悪いことしてねぇのになんで泣くんだ、こっちが泣きてぇよ……ぐすん。

「確かに悪人面ですね!」

「兎嬢、喧嘩売ってんなら言い値で買ってやんぞ?」

「えー、いいんですかぁ? たっかいですよー?」

 また茶化しに走った兎嬢と、それに乗ってしまった俺を、今度は帽子屋がきちんと止めてくれた。いいね、大人の余裕だね! ……俺も兎嬢もそこそこな年だと思うんだが。いや、俺より兎嬢の方がけふんけふん。

「こらこら二人とも。そう噛みつきあってても話は進まないだろう?」

「「……」」

「で、さらしたのはどうしてなんだ?」

「ハクにはばれちまって、そしたらしょうがないじゃん? 兎嬢は……だって、黒マントの不審者に、腹割って話そうって気になる?」

 しかも兎嬢は、普通じゃ話なんて聞いてくれないような状態だったろ? だから無駄に個人情報を盾に取ったりして、相手があっけにとられているうちに押し入ったんだ。

 それくらいのインパクトがないとなぁ。無理やり入るなら、それなりに捨てるものもないと。

 んでもって、押し入るなら不信感を持たれちゃダメっしょ。味方ですよーアピールしないとなぁ。

「……それは、確かにな……」

 帽子屋もちょっと引きつり気味だが、納得した顔で頷いてくる。

 その後かなり沈黙して、何かを考えこみ始めた。……ま、大体予想つきますけど。

「黒鷺……頼みがある」

 意を決したように顔をあげる帽子屋に、俺は嫌だけど、仕方ないって視線を送っておいた。

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