兎嬢攻略!
腐女子表現がありますので、苦手な方はご注意を。
んー、ただキャラ付けしたかっただけなのに、なぜこうなったのか……。
はい、性別バレタ! けど何とかなった! よっしゃ!! 美人に美人って言われた気もするが知ったこっちゃぁない! ハクの美意識はちょっとおかしいと思ってる!!
で、まぁ、これで俺の一番不安だったとこは片付いた感じもするし、一安心♪
んで、次の問題はあいつらなんで……よし、一応策のある兎嬢からいってみるか。
いつも通りにマントを羽織り、フードを被ってから出歩いた。もうこっちに慣れ始めて、フード無いと逆に不安になるってどーゆー……。
あいつから寄せられた情報を頼りに兎嬢の根城を探し出して、扉の前に立つ。
そこそこのグレードのホテル。でもそこそこはそこそこ。一番上のグレードだとセキュリティがしっかりしてるんだよねぇ。超高級だけど、それに見合った感じ。
招かれないと入れない、なんて、ヤバすぎでしょ。そんなことなくてよかったマジで。宿屋に話し通さなくても勝手に入って来れるもんね。
とりあえずノック。
こんこん。
はい、応答なし。ま、いいけどさ。いるのはさっきフロントで確認したし。……なんかリアルっぽく係りのNPCさんが対応してくれた。味もそうだけど、NPCもちょっとこだわってる? ゲーム封鎖したやつは、なんかリアル追求してる気がするなぁ。前はそんな対応してくれなかった気がするんだけど……。
まいっか。
グレードが高いとセキュリティだけじゃなくて、防音もすごい。ここはそんなことないはず。だから外で呼べば中にも伝わる。ま、周りの人にも聞こえるかもしれないけどー、それはそれで好都合。え? 周りの迷惑? 知ったこっちゃぁないぜ!!
「三日月先生? 三日月桃子せんせー! いらっしゃいませんか? 先生っ!!」
どんどんと遠慮なくドアをぶっ叩いて、あいつの秘密の名前を女っぽい声で叫ぶ。
がたんっ! どたどたどた!! ばんっ!!
中でずっこけるような音が聞こえた後、すぐにどたどたと大きな音がして、ドアが勢いよく開いた。
……こっち側に開いてたら頭にぶち当たるとこだった……。
「ちょっと誰でs……え、ホントに誰!?」
兎嬢は真っ黒黒スケな不審者を見て戸惑ったように誰? と繰り返している。
服装はブラウスにズボンと相変わらずだったが、少しよれている感じがした。
顔は、別に普通? 頬はこけてるし、少し現実っぽくはなったけど、若々しい。三十路だとは思えないなー←
「三日月せんせっ、ちょっとお話いいですかっ?」
思いっきりぶりっ子声で甘えるように言いつつ、俺がいつも持ってる杖を見せつけたら、誰かわかったようでさらに慌て始めた。
この杖、この世に一本しかないからなー。特定余裕すぎて笑う。
「え、あ、く、黒鷺さん!? なんでそれ!? てか、え、女の子!?」
と色々パニック状態になってしまった。うん、ちょっと愉快。
混乱状態なのをいいことに、無理やり兎嬢ごと部屋の中に入らせていただく。勝手にドアを壊して侵入は、システム上できない。けど、ドアが中から開かれれば出入りは自由だ。鍵が開いてる時の、リアルみたいだよね! 不親切だよね!!
「ちょ、勝手に!?」
「兎嬢紅茶派? やっぱり?」
声を通常黒鷺に戻して、バッグを漁る。
部屋の中は、うん、そこそこ広かった。小さいけどテーブルと、椅子も二脚あって、いい感じ。普通のビジネスホテルみたいな? あぁ、こっちは風呂もシャワーもないけど。
アイテム欄からボトルとカップを二つ取り出して、片方にはそのまま注いで、もう一つは兎嬢の返事を待つ。
「あ、いや、コーヒーも紅茶も牛乳無いと飲めませんけど」
「じゃ、ロイヤルミルクティー作ってきたからどうぞ。あ、アイスだけど」
「あ、はい、どうも……じゃなくてっ!!」
答えを聞いて注いだ方のカップを兎嬢の方に差し出すと、素直に受け取ってからツッコまれた。
ノリツッコミとは、やりおるのぉ……。
乾いた笑いを口に浮かべながら、勝手に椅子に座らせてもらう。紅茶ウメー。
「なんで黒鷺さんここにいるんですか!? て言うかなんであの名前知って!? てか、女の子なんですかぁ!? あ、でも声……結局どっちなんですかぁぁああ!!??」
んー、最後が一番力こもってね? え、そこ大事?
兎嬢はわざわざカップを置いてまで、机をどんっと叩き、身を乗り出して叫んでくる。
その勢いに押されて、まずは一番楽そうな質問から答えていくことにした。
「えっと、まず、はい、女です。一応? 声低いけど、女声も出せるし?」
ここでフードを外して素顔をさらす。リアルで男に間違われたことはないし、顔は普通の女っぽいと思うよ? 身長は高めかもしれないけど、方幅広かったりはしない、し……たぶん……。
「うっそー!! どっちかがネカマだとしても絶対フェンリルさんの方だと思ってたのに!!!!」
俺の向かい側の椅子に脱力したように座る兎嬢。その後、手をぶんぶん振り回しながら、自分の予想を言ってきた。
「それは俺も少し……」
女の子相手に無駄にコミュ障発揮してたし、思春期男子かよー、とか思ってたけど、あの庇護欲そそる感じは女の子かなー。うん、やっぱ女の子かなっ! って思ってた時期が俺にもありました。
上目使いとかあざとっ! って思ってた時期があ り ま し た !!
「でもあいつはガチ男子でした。えぇ、アバターのまんま……くっ」
くっそ美人です。鑑賞ものですよはい。でも可愛いんです。ぐふっ(吐血
「うっわー! 美男美女とか最悪じゃないですかー!! 爆発すればいいんですよー!!」
「まってなんか理不尽!? てか何が美男美女だよ! 超絶まけとるわ!!」
「うーん、確かにそうですね!! フェンリルさんは次元が違いました!! あれは美術品レベルですよ!!」
「断言されると、それはそれで傷つくような……。まぁ、事実なんだけどさ!? 俺も一応女的な心がなんとかかんとか~……」
あんな超絶美形と一緒にされると恐れ多すぎるけど、なんだろう。女として、男に1000%負けてるっていうのも、なんだかなー……。
俺もそれくらいの女心が……じゃなくてっ!! ここに来た目的忘れるべからず!!
「ていうか、兎嬢、帽子屋と連絡取ってやってくんない? あいつめっちゃ心配してて……」
「……」
それを言うと兎嬢の表情ははっきりと落ち込んだ。あのウサ耳がまだあったら完全に真下を向いてることだろうな。
「そうですか、心配……でもあんなこと言って逃げてきちゃいましたし……」
「三日月センセ、だめですよ? そんな後ろ向きじゃぁ……」きゃるん♡
「うわっ、きもっ!! てか、なんでその名前知ってるんですか?」
きもって、きもって言われた……。さすがにちょっと傷つく……。
でも、思い出したように睨みあげてくる兎嬢を見て、俺はにんまり口の端をあげた。こういうの好きなんだよなぁ。大切な情報を、なんでお前が盗みとれたんだ? みたいな表情。だぁいすき。
「三月ウサギ。本名、卯月美香。職業、普通のOL。しかしてその実態は!! 超大人気BL作家、三日月桃子先生なのであった!! なんつって」
いや、正確に言うと、八割くらいの普通の恋愛小説は普通に受けて、残り二割のBLが異様に受けたってだけなんだけどな。八割の方もドラマ化とかするくらい超人気作らしいけど、まぁ、こっちの方が弱みくさいだろ? 実際隠してるみたいだしな~。ってことでこっちを押す。
ともかく、そんなすんばらしい作家先生だったんですよ、兎嬢は!! 読んだことないけどな!!
「こ、個人情報ダダ漏れじゃないですかぁぁぁああああああ!?!?!?」
俺の持っている情報をさらけ出したら、徐々に表情をなくし、なんつって、のところで顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。
てへぺろっ★
「いやぁ、センセ、すごいですねぇ。BLなんて色々非難されることもあるでしょうに、先生の作品はいろんな人に受け入れられて……腐女子の憧れ! 腐女神ですね!!」テキトー
「なんで私があれなんて知ってるんですかぁ!! あぁ、お嫁にいけない……!!」
あ、あれ? 兎嬢、机に突っ伏してぐったりし始めちゃった。
「だ、誰にも言ってないぜ……?」
「あったりまえですよぉぉおおおお!!」
突っ伏したまま拳を握って机をだんだん叩いて嘆く。
えーっと、ごめん?
「ま、まぁまぁ、落ち着けよ。飲んで飲んで」
このセリフには酒が合いそうだけど、あいにく酒は持ってきてないんだよなぁ……。
え、レシピは一応あるけど? あー、飲み物は普通に作れるけど、酒もいけんのかな……アルコール再現可能? おぉ、気になる。帰ったらやってみるか。ちゃんと酔えるものができたら、桔梗さんのとこ持ってったろー。あの人、世ってストレス発散するタイプだからな~。
俺の勧めに従って、仕方ないなぁといった体でミルクティーに口をつける兎嬢。
「っ!? 味!? おいしっ!?」
一気に体を起こし、そのせいでカップから少し液体が零れ落ちるが、気にしない様子で俺に詰め寄ってくる兎嬢。おっふ、怖い←
「なんでおいしいんですか!!??」
「あ、ありがとう? ほらほら、拭いて……」
濡れタオルを渡してやる。が、シカトされた。ぐすん。この手はどこに持っていこう……。テーブルの上に置いときゃいい??
「なんで味が!?」
「あー、はい。たぶん料理人のスキル持ってるからだと思う」
「あ、なるほどぉ! ラノベにありがち設定ですね! なんです? 料理チートですか!? それで異世界攻略ですか!?」
やっと椅子に腰を落ち着けて、ノリノリで設定を追加していこうとする。俺に。
やめろ、そっちもいけるのか。NLとBLだけ極めておいてくれや……。
確かにこれは料理チートできるけど、してどうすんだ? って話だぜ。一番の目的なら金か? でもゲーム内だと無駄に金あるしなぁ……。次点は権力だろうけど、そんなもんないし、いらないし。
目的もないし、趣味の範囲内が一番いいな。楽しくて実用的。最高じゃね?
「チートなんてしませんヨ……。これでこの世界生き抜くのは、だいぶイージーモードになりましたケド」
大体異世界じゃありませんよ……いや、似たようなもんだけども。てかどっちにしろラノベではありがち……?
「なんでもいいですよぉ! そうだ! 明日から毎日朝、あなたの味噌汁が飲みたいです!!」
「……わぁ、どっかで聞いたプロポーズみたいですネ」
「そうですよ! いや、そうじゃなくてもこんなにおいしいご飯食べられるなら、養ってあげますからうち来ませんかぁ!?」
ある意味失礼な言葉じゃね?
「お断りします。狼さん養えるくらいに余裕あるんで。……で、兎嬢?」
「なんですかっ?」
「無駄にテンション高くしてるのはー、現実逃避か何かかな?」
「……」
「いい加減に帽子屋サンと向き合ってあげません? かわいそーですよー?」
兎嬢の口調をまねて、地味にちくちくつつくように言ってやる。
「だって……」
「メールだけでも、何とかしてください。でも、あなたと帽子屋、二人いないとアリスが死にます」
ここは普通に真面目トーンで。色々すっ飛ばして、本題の方をぶち込むと、やっと話を聞いてくれるようになったみたいだ。兎嬢は俺をいぶかしげに睨んでくる。
「……どういう意味ですか」
そうだよ、俺が来た本当の目的は、兎嬢よりも帽子屋よりも、アリス嬢のためなんだよ。
だって、兎嬢強かだし。まぁ、ボッチだといつかっぽっきり行きそうだけど、成人してるぶんアリス嬢よりマシだろ?
アリス嬢はまだ、親の庇護下にある子供なんだぜ?
「アリス嬢が何度も自殺してるらしい」
「そんなことできるわけないはずでしょう?」
「抜け穴はある」
「そうでしょうけど、だからって……あぁ、昔の事件ですか」
やっぱ知ってたか。知らないやつの方が少ないはずだもんな。
その当時やってた人も、それよりも後の人も、こういうゲームの危険性の代表例として、いろんなところで知らされる大きな事件だからな。
……知らないハクみたいなやつのが超少数。
「そういうこと」
「それと私に何の関係が? 私が説得したら自殺をやめるとでも?」
鼻で笑うように、自嘲するように、見下すように、兎嬢は俺を睨み続ける。自己防衛手段なんだろうけど、なぁ? 怯えてるなら、もっとちゃんと隠した方がいいぜ。だってそんなの、弱点丸出しみたいじゃねぇか。
「アリス嬢は何かに怯えていたらしい。しかも姿を隠して。さて、何が思い浮かぶ?」
ちなみに目の前に姿を隠してた代表例がいます。はい、俺です。
最初にマント被ってたから兎嬢もそれに気が付いたみたいだった。
「ネカマ……? いや、黒鷺さんはネナベですか」
「そうだなぁ、アリス嬢も本当のところはわからねぇけど、俺はそう思ってる。声も出さなかったみたいだし、その可能性が高そうじゃね? ま、俺がそうだから、同類かなーって思ってるだけだけど。他にも外見が醜悪である、とか言う理由も考えられるから、断言はできないし、しちゃいけねぇだろうけど」
「そう、ですね。慎重に考えないといけませんね。でも後遺症が残ったら大変ですから、早く行動しないと」
真剣な表情で考え始めた兎嬢の顔は、仲間の心配をする年上の顔だった。
「わかりました。帽子屋さんと会って話してみます。でもどういう対応が最善なのか……」
その表情に安心して、俺はクスッと笑いを漏らす。
外見だけだったら、受け止められるとでも思ったのかね。
「兎嬢は?」
「え?」
「兎嬢は、例えばアリス嬢が、そうだなぁ、どんなに醜い顔だったとしても、今まで通りに接せられるの?」
その言葉に、兎嬢は腹黒い、輝くような笑顔で答えてくださいやがりました。
「私を誰だと思ってるんです? あの大作家・三日月桃子ですよ? 妄想の中ではどんな掛け算でも萌えられるんですからね!!」
んー、なんかシリアスを一気にぶち壊しにするような発言が聞こえた気がするけど、まぁ、いっか。いや、よくないけど。てかちょっと違う気もするんだけど……。
「……でも、現実と妄想は違うんじゃねぇの?」
「それこそ妄想力でカバーですよ!!」どーんっ
「わぉ、ある意味そんけーだわ」
なんかこれでいいのか感はあるけど、こんだけ力いっぱい宣言してんだから大丈夫か。
「んじゃま、頑張って」
片手をあげて、さっと席を立とうとしたら兎嬢に捕まえられて、さらに胸倉をつかまれた。
「ぐえっ」
「協力してくれるんじゃないんですかぁ!?」
「いや、しますっ、しますっけどぉっ」
がくがく揺すられて舌噛んだ! いてぇ!!
「今から三人会議ですよ!!」
「え、ちょ、今からぁ!?」
うちにハク待たせてるんですぅ!!
だが俺の抗議なんて、口に出す猶予さえもらえなかった。
「ほらほら行きますよ!!」
立ち上がってダッシュする兎嬢に引きずられた俺は、何とかフードを被るだけで精いっぱい。
ご、ごめんよハク……ちょっと遅くなるかもしれない……いやその前に首絞められて死ぬかもしれない(襟首つかまれ




