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道化と冠  作者: 青螢
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感謝 ~Side・White~

 色々ありすぎて、ぼんやりとした。

 クロは女の子で、ピエロの子の塔ができて、攻略してくれって桔梗さんに頭を下げられた?

 うー、頭がパンクする……。

「あー、ハク……?」

 ぼやっとクロを見上げる。気まずそうに視線をそらせて、何をどういえばいいか考えあぐねているようなクロが一人だけそこに立っていた。桔梗さんは帰ったらしい。

 そう、桔梗さん。怖かった。攻略に参加するのは……嫌だけど、それよりもあんな風にお願いされるのが怖かった。あのまま頷いてしまったとしても、絶対に途中で投げ出してしまいそうだし、それに……。

「ハク? えっと、怒ってる……? で、ですよね……えーっと……本当にごめんなさい」

 それに、クロと一緒じゃないと、俺、大勢の中にいられない……。

「ハク!? 泣くほど嫌だった!?」

「うっ、ひっく……ぅっ……」

 ヤダヤダヤダ。クロ、と、一緒じゃなくなる? ヤダ。でも、だって、だから……。

「クロっ、ごめっ、なさ……」

「え? え?」

「俺、出ていくから、からぁっ、誰にも言わないしっ、だぁら、時々でいいから会ってくれまぅか……っ?」

 しゃくりあげて、舌が回らなくて、聞き取りづらい言葉になっちゃって、最悪。

 でも、精一杯で、どうしても嫌で、だからどうしていいかわからなくて……?

「ハク、ハク! ちょっと、落ち着こう? な?」

 柔らかい何かが頬を撫でる感触がする。二の腕のあたりをあやすように軽く叩かれて、床に跪いたクロが顔を覗き込んでいた。

 涙で歪んだ視界のなかでも、やっと久しぶりにちゃんと見えたクロの瞳が心配そうに歪められているのがわかる。

 クロ、クロの顔全然綺麗だよ。吊り目だけど、優しそうだよ。かっこいいよ。なんで隠してたの? 

 なんで、俺には教えてくれなかったの……?

 桔梗さんは知ってるみたいだった。なのに、なんで? やっぱり俺はその程度の……?

「ごめんなさっ、ごめんなさい……っ」

「ハク……まじ、謝るのは俺の方だし、出ていくってなんで……」

「だって、女の子……」

 俺みたいな変なのと一緒になんて、嫌でしょ? 我慢してくれてたんだよね。ごめんなさい。家の中でもずっとマントつけさせて。

「あ? それだけ?」

「……?」

「そう、そっか。そこがやっぱ一番問題?」

「そう、じゃない……の……?」

 普通嫌なんじゃないの? だって……?

「まず一つ目。ハク、俺が女で、嫌? そこまでじゃないよな? 会いたいとか言ってくれるくらいには好んでくれてんだろ? それはうぬぼれすぎたか?」

「そんな! 俺、クロがいないとだめなくらいっ」

 すぐさま叫んでしまったが、二の腕を叩いていた手が少し強めになって、ヒステリーみたいになるのを押さえてくれた。

 大丈夫、分かってるって言ってくれてるみたいで安心する。

 クロは少し驚いたように目を見開いたけど、すぐにふわっと笑ってくれた。

「ん、そかそか。あんがとな。じゃ、次。数日一緒に過ごしたろ? なんか不都合あった?」

「ないっ。むしろ都合よすぎて、居心地がよすぎて……」

 これも即答。

「いやぁ、心砕いたかいがありましたなぁ。さて、じゃぁ、これで最後。このままここで暮らすのは嫌か?」

 少し茶化した言葉と、それに続く重たいけどやわらかい言葉。

 あぁ、言わせてる。俺が、言わせてるんだ。けど、嬉しい。でもやっぱり、そんなのだめだよ……。

「嫌じゃないっ、ずっと、クロと一緒にいたいくらいで、でも……」

「でも、なぁに?」

 ゆったりとした優しい言い方で、それに促されるように俺もゆっくり、ポツリポツリと言葉を紡ぐ。

「でも、クロは、嫌じゃないの? 俺、こんなだし……」

「最初に言っただろ? 嫌だったら一緒にいねぇってよ? 男女とか、関係なく、俺は一緒にいて楽しいぜ?」

「俺も、楽しいよ。でも、でもさ……」

「性別気にして、ハクがここにいるのヤダって言うのなら、俺は止めない。けど、俺が気にするでしょ、って言うのなら、それは違うからやめてくれ」

 クロの声が固くなった。

 あ……俺、また失敗した? クロ、傷つけた? 無神経?

 焦って震えそうになる俺を、またクロはなだめるように撫で叩いた。

「責めてるわけじゃない。怒ってるわけでもない。でもな、ハクは考えすぎてる。特に俺に対して、少し臆病すぎてる」

「だって、傷つけたくない……」

「それは、わかる。ありがとう。けどね、そんなに遠慮されると、信用されてないみたいで、少し悲しくなるから。だからな、もう少し甘えてくれていい。頼ってくれていいんだよ。嫌だったら突っぱねてるんだから。そう、言わなかったか?」

 知ってる。わかってる。クロ、優しいから。でも、やっぱりさ、人付き合いが苦手で、どこまでが許されるかよくわからなくて、どうしていいかわからなくて……。

「あのね、ハク、ごめんな。黙ってて」

 クロが唐突にまた謝った。流れちゃったから、やり直すみたいに、また謝った。

 それを聞いて、また涙があふれた。

「騙そうとしたわけじゃない。けど、唐突にこうなっちゃって、俺もどうしようかと思ってね。これで離れていっちゃったらどうしようかとビビっちゃってさ、俺も臆病だったかな。でも言わなきゃなーとは思ってたんだ。けど、最初のタイミング逃すとさ、次のタイミングをつかむのが難しくてね……ごめん。ごめんなさい」

 クロも、怯えることがあるんだ。いつもどんな敵にも迷わず突っこむのに、迷ってくれたんだ。

 なんかうれしい……。

「クロ……ごめんなさい。また、勝手なことばっかり言って……ネガティブしないようにって思ったのに……」

「わかってる。そういう性格ってことも、いきなり変われないってことも。俺だってそんな時あるしね」

 そう言ってクロは茶目っ気たっぷりにウインクをして見せた。……サマになってマス……。

「んー、ついでだからこれも言っておこうと思います」

 クロは立ち上がって、少し離れて息を整えてから言い始めた。

「ハク、俺にはそうそう簡単にいえないような秘密があります。もしかすると、この先ばれることがあるやもしれません。これはとっても大変な秘密です。いい? 誰であろうと、俺からは、簡単に、言えない秘密だから。そこは勘違いするなよ? もちろん、知ってる人はいるけどな」

 秘密ってなんだろう。知ってる人って……桔梗さん? 一体どんな関係なんだろう。なんか、悔しい。もやもやする。

「ばれたら軽蔑されるかもしれない秘密」

 そんなに? でも、絶対俺はクロのこと軽蔑なんてしない。断言できる。

 だって、それは過去のことなんだから。それがあっても、今のクロが俺のこと大事にしてくれているのはわかってるし、クロが俺の恩人であるのには変わらない。

 だから絶対、俺は、クロのこと好きなままだ。だから、大丈夫だもん。

「クロ……」

「聞いて、ハク。いい? それを知る前でも後でも、愛想尽かしたら、いつでもこの家は出てっていい。だからさ、それまでは、一緒にこの家にいてくれませんか……?」

 そこでクロは片膝をついて、どこかの王子様がするみたいに手を差し出してきた。

 よっぽど間抜けな顔をしてたんだろうか、動かない俺を見て、クロはクスッと吹き出した。

「ふふっ、ちょっとプロポーズみたいだったか?」

「……似合イスギデスヨ王子様」

 なんかかっこよくて、こっちがドキドキします……。

 ちょっと視線が彷徨って、カタコト言葉になっちゃったのは仕方がないと思う。涙もすっかり引っ込んだし、なんか顔がほてってる気がするのは、きっと涙が渇いて塩っぽいからだ。

「ぷっ、なんだそれ! まぁ、いいや! それで返事は、オヒメサマ?」

「こ、こちらこそお願いシマス……?」

 クロの手に、そっと手を重ねた。

 そのままグイッと引っ張り上げられて、ダイニングの方に歩き出す。

「じゃ、朝ごはんにしましょうか、姫様? 何食べたい? その前に顔洗ってくる?」

「えっと、す、スクランブルエッグがいいな」

「イエス・マイプリンセス」

 うー、なんか楽しそう……。でも俺はなんか恥ずかしいよ……。

「顔洗ってきます……」

 ここはとりあえず逃げておこう。

「いってらっしゃい」

 ……放しちゃった手が寂しいのは、俺がまだ甘えすぎだから。


「そういえば……」

 リクエストのスクランブルエッグをつつきながら、思い出す。

「何? どうかした?」

「いや、全然気が付かなかったなって……」

 クロが女の子って、普通もっと早く気が付くべきだったような……。あんなことがなかったらもっと長い間気が付かなかったような気がするし、鈍感すぎる?

 いや、体型はマントでまったくわからなかったし、口元くらいしか見えてなかったし、手は……確かに少し小さいけど、指が長くてすらっとしてるし……。

 他人と付き合いがなさ過ぎたからかな……全然わからない。

「いんや……隠すようにしてたし、気が付かなくて正解な気もするけど」

 苦笑いのクロと話していて、最初にアバターが変わった時を思い出して、やっと気が付いた。

「あ、分かった! 声だ」

「声ぇ?」

「だって、最初に叫んでたでしょ? あの時からあんまりアバターの時と声変わってなかったから」

 そうだ、最初からクロの声は低かった。男っぽかった。だから気が付かなかったのかもしれない。

 アバターが男だったって言う思い込みもあるし、分かるところが変わってなかったから気が付かなかったのかも。

「あー、そうだな。少し低めに設定してたはしてたけど、そんなに変えてはなかったなー。……ちゃんと女っぽい声も出せるぞ? 地声はちょぉぉぉおおっと低いが」

 自分でも気にしているのか、ちょっとの所にかなり力が入ってた。

「すごいね?」

「両声類ってやつ? 男女どっちの声も出せるって言うあれ。どっかの動画サイト発祥だったっけか」

 俺が知らないのに気が付いて、わざわざクロは文字を打って出してくれた。

 なるほど、こんなものがあるのか。ネットの世界は広いな……。

「クロ、まだ顔隠すの?」

「家の中ではやらないつもりだけど、まぁ、うーん、追々?」

「クロ美人なのに……」

「っ!? げほっ」

 何故かクロがむせた。むっ、なんか言ったかな?

「クロ?」

「あー、もうっ! はいっ、今日はやることがたくさんあります!! なので俺はとっとと飯を食って、行くことにしました!!」

 そう言うと、俺よりも少ない量だったから、もうすでに食べ終わってコーヒーを飲んでいたクロは、その飲んでいたコーヒーも急いで飲み干して席を立った。

「ちょ、ちょっと待って! 俺も行くっ!!」

 急ごうとしたけれど、いろいろ理由を説明され、今日はお留守番を任された。

 早めに帰って来てくれるらしいけど、少しさみしい。でもネガティブはやめるって言ったし、また迷惑かけたから、頑張るもん!!

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