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道化と冠  作者: 青螢
39/69

露見

 数日後の朝。はい、まだ一睡もしてない朝五時でございまーす。うわーい。深夜テンション通り越して徹夜明けテンションだぜひゃっふぅい。 

 俺は自分の部屋で色々作業をしてた。この世界で生活するにあたって必要なことをまとめたりねー。

 そしたら刹那からチャットが来た。

「やほやほ~お元気? おっはよぉ~!!」

「メールにしろやカス」

 異様なハイテンションが耳元で炸裂した結果、俺のテンションは地を這い、声さえも地を這った。

「ちょっとちょっと~それが依頼を成功させた俺への態度~!?」

「あー? 兎嬢みっかったの?」

 ここでテンションあげるべきなんだろうけど、ちょっとまだ戻らない。ってかこいつのテンションがうざすぎて戻る気がしない。

 みつかったかーそらよかたよかたー(棒

「あいしー! マシロ大陸フロー街南東にあるブルームって言う宿の二階、203号室!!」

「うわっ、仕事はやー、こまかー。あんがと」

 探してくれとは言ったけど、ちゃんと潜伏場所まで探り当ててくれるとは正直思ってなかったんだよねー。さすが変態。すばらしいー。

「おうよっ! じゃ、まー、今忙しいからまた今度っ」

「さんきゅー」

 適当に返事をしてチャットを切る。

「……」

 しばらくボーっとしてからやっと状況を飲み込んだ。

 そっか、見つかったのか兎嬢。アリス嬢見つけてから結構すぐだな? ……わぉ、ナイスタイミーング。で、済ませていいのか?

 まいっか。

 帽子屋にアリス嬢の事は連絡は入れたから、とりあえずもう少し日が昇ってからでいいか。

 居場所見つかってからちょっと様子見して? いや、少し気になるけど、どうしたらいいか、なんだよな。対策なしに行くにはちょいこう難易度すぎるん。

 じゃ、今日の計画としては、兎嬢かな、やっぱり。低難易度の方から行くのは定石。ってことでハクにお留守番を……頼んで大丈夫だよなぁ。落ち着いてきたし。

 朝飯食べて様子見よう。無理そうだったら今日はまったり過ごすか。

 てか居場所は発見したし、もう帽子屋に投げる? ……いや、たぶん兎嬢は任せてもいいだろうけど、アリス嬢は帽子屋じゃ無理かな。軽くトラウマってたし。説得とか無理っぽ。

 アリス嬢が救われないと帽子屋も救われねぇのか。やなサイクルだねぇ。

 はーーー。おけ。方針はこんな感じでいこう。……どんな感じだ? 

 いや、もうさすがに徹夜すぎる。眠すぎて思考まとまらん。

 さっきまでやっていた作業を投げ出して、大きく伸びをしてベッドに寝転がる。

 つっかれたー。少し休憩して、そしたらハクに朝飯作ったげないと……。


 ~Side・White~


 カーテンの隙間から差し込む光に起こされた。体を起こしてぼやーっと部屋を見回す。

 薄めのブルーと清潔感あふれる白に統一された部屋。

「……」

 なんだかんだ、色々クロにもらってしまった。本棚も、ラグも、布団も……安く買い取って、とか言ってたけど、絶対材料費の半分もないと思う。

 うー、色々恩返す分が増えていく……。

 もそもそと起き上がって、水色のトレーナーにグレーのスウェットズボンの部屋着から、綿っぽい素材の白いローブに服を変えた。

 服を変えるのもアイテム欄で楽々だから嬉しい。……これに慣れたら現実世界で大変かもなぁ……。

 ステータス画面に示された時間は九時。少し遅かったかな?

 洗面所に行って最低限の身支度を整えて、リビングに向かう。

「あれ?」

 クロの姿はそこにはなかった。毎回クロは俺より早く起きて、ご飯作ってたから少し意外だった。

 って、そんなこと思っちゃだめだよね。クロだって疲れてるんだろうし、なんかそれが当たり前とか思っちゃだめだよ。

「うんっ……」

 リビングの方の椅子に座ってメール画面を呼び出す。そこにやらなきゃいけないことをリストアップしたり、ちょっと心のドロドロを吐き出してたりして時間をつぶしたけど、なかなかクロは起きてこなかった。

 そんなに疲れてたのかな? そういえば、いつ寝てるんだろうって感じだったし……迷惑……いや、そういうことは考えないようにする! そっちの方が、たぶん、クロの負担が少ないし!

 できるだけポジティブ思考をして、クロに背負わせないって決めた。ゆっくり眠って、美味しいご飯を食べさせてもらって、たくさん温かい言葉をもらった。だからもう迷わない。決めた!!

 よしっ、ネガティブにならないように、頑張ろう!!

「んー?」

 結構時間経つかな、と思って時計を確認したらだいたい十時十七分。

 お腹減ってきちゃった……。クロが料理作ってくれるって言ってたけど、やっぱ料理人の職業とったほうがいいよね。でも育てるのにどんだけかかるのかな……。というか、現実で料理したことないんだけど、大丈夫かな……?

 でも自分でも何とかしないと不便だよね。よし、クロに教えてもらえないか頼んで……。あれ、教えてもらうのと、何も言わずに作ってもらうの、どっちの方がクロの負担にならないんだろう?

 うーん、悩みどころ?

 ――――ッ

「……ん?」

 何か音がする。

 ――コンコンッ

 ノックする音。外から? あ、玄関かな?

 誰か来たのかな? 出た方がいい? でもここあんまり人が来ないって言ってたし……いや、だから確信を持ってきてるってこと? ってことはお客?

 ――――――ガッ!!

「!?」

 ドア蹴った!? 殴った? なんかすごい音がしたけど!?

 この家は破壊不能オブジェクトみたいになっているはずだし、許可がないと人は入れないって聞いたから、無駄、だよね?

 あ、二階の窓から外見ればいいのか。そしたら誰かわかるかも。……数少ない知り合いだとうれしいなー。

 気配を殺して玄関に面した窓を覗く。真下だったから少し見づらかったけど、窓を全開にして身を乗り出せばぎりぎり見えた。

 そこには、見覚えのある紋章が……。

「……あれ、クロのギルドの……?」

 小さくつぶやいただけだったのに、下にいた人には聞かれていたみたいで、その人はきょろきょろとあたりを見回した。

 見つかる前に引っ込んで、下に降りて、玄関の扉を開ける。

「お、白狼?」

 ギルドマスターだ。名前は確か、桔梗。年上っぽいし、いつも眉間にしわがあるから怖いけど、今はちょっと驚いた表情をしているのでそこまで怖くない。

「……」

 俺は無言でうなずいた。やっぱりクロ意外だと言葉が出てきにくい。改善しないと、なんだけど……。

「あー、黒鷺いるか?」

 ちょっと気まずそうに視線をそらしながら桔梗さんはそう聞いてきた。

 ……ドアを蹴ったのは報告しないよ。そっと足を下したのも気が付いてないから大丈夫だよ……。

「……寝てる。起こす?」

 うー、また人見知りが……。頑張ろうって決めたのに……。

「頼めるか?」

「ん」

 許可がないからきっと入れないんだろう、そうお願いされた俺は頷いてまた中に引っ込んだ。

 クロの部屋の扉をノックして、呼びかけてみる。

「クロ、お客さん。……クロー?」

 強めに叩いたり、大きめに呼びかけたりしたけれど、まったくこれっぽっちも、反応が返ってこない。

 ちょっと何かを思って、ノブを回したら、回っちゃった……。鍵かけてないの……?

 入っちゃダメって言われたけど、だって、お客さん来てるし……。えぇい! 入っちゃえ!!

「クロー! 桔梗さん来てるよー!! クロってばー!!」

 入ってしまうと決めても、そっと入り口から一歩進んで、できるだけ中を見ないように大声で叫ぶ程度。それでも動きがないからちょっとずつ中に進んでいく。

「んぅんー……?」

 うなり声が聞こえて、そっと目を開く。中は意外と狭かった。たぶん、俺の部屋の方が広い。なんでだろう?

 白と黒のモノトーンで統一された、スタイリッシュな空間。かっこいい。

 ほぼ正方形の部屋で、奥側に大きな窓。窓近くの開いている場所には本棚。左の方には壁を向いたアルミっぽい机とキャスターがついた、学校のパソコン室とかにありそうな椅子。机の上にはデスクトップのパソコンとノートパソコン。ドアを開けて右側には、黒いパイプベッド……。

「く、クロ……?」

 意外と近い所にあったベッドの上、久しぶりにクロの素顔を見た気がする。

 ベッドに寝転がったクロはなぜか毛布の上にいた。着ているのは寝間着か、黒い薄手のパーカーにパイル地のショートパンツ。パーカーにはフードがあったけど、さすがに寝るときにはつけてないみたい。

 クロ小顔? 綺麗……って、え?

 小さくて白い顔はなんだか可愛らしくて、そういえば、ズボンから伸びる足とかがしなやかに丸みを帯びていて、それにそれに……少し下がったパーカーのファスナーからちらっと見える白くて柔らかそうなまる……

「んぁ、ハク……?」

 うっすらと開いた結構つり気味の大きな目が、ぼんやりと彷徨った。それが俺の視線と絡んだとき、

「ご、ごめんなさぁああああい!!」

 全力で謝って部屋を飛び出していた。


 クロが、クロが……女の子だったなんて!!!!!!!!

 いやぁ、性別問題もっと早くやるはずだったんですけどね。思ったようには話が動かず……あはっ☆(おい

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