ヒーローなんていない
気がついたら四月終ってました。月二回更新目標だったのに……。申し訳ありません。
そして書きためしていたのがなくなってきたので更新不定期になりそうです。すみません。
無事家に帰りついた。
「ふはっ、まっずっっっ!! なにこれ土くさっ!w うわっ! こっちは炭の味がするうwwwww これは何? 人知を超えた味にばくわらぁぁあああ!!」
ダイニングスペースにある机に今日の戦利品を並べて試食する。
サラダは土味。パンは炭味。プリンは言葉に表せない食感と味でございました。二個目も同じ味。たぶんコマンド式だからだろうなー。
いやぁ、まずいね!! これ以上ないってくらいのまずさだね!! 逆に笑いが止まらないくらいだね!!www
さっきっからハクが微妙な顔でこっちを見てくるのがわかるよ!! まずすぎて頭のネジ飛んじゃったんじゃね? っていう顔だね!! 面白いね!!
あー、変なテンションになっちまった……。トロピカルなジュースでも飲んで落ち着こう。
やっぱり市販品は壊滅的なんだな。餓死者続出もうなずける。これは食いたくないわ。だったらそこまで苦しくもないらしいし、死んだ方がいいかもしれない。
つってもこの負のスパイラルから抜け出せるわけじゃないんだけどな。
「ふぅ。すまんね、ハク」
「落ち、着いた……?」
うん、マジすまん。怯えさせちまったようだ。そ、そんなにテンションおかし……かったよね! ごめんね!!
「おけおけ。もう大丈夫。んで、まあ、アリス嬢のこと? 色々あったみたいなんだなぁ、これが」
やっとこさ話のできる状態になった俺は、アリス嬢のこと、帽子屋たちのことを説明してみた。なんで先に話さなかったのかって言うね! いや、だって、気になっちゃったんだもん(きゃるん)★ ……おえ、誰得やねん……。
とかそんなぶりっ子(笑)な内心をこれっぽっちも表面に出さずに話を進めると、だんだんハクの表情が曇っていく。
「だい、じょうぶ、なの……? 自殺って……。普通できないはずじゃ……」
数年前まではゲーム内での自殺が可能だった。窮地に陥った時には、自殺して、死に戻ることができた。敵に殺されるよりも、自分で死んだ方がペナルティが少なかったんだよね。
だけどそれが原因か、少し前、ちょっとした事件があった。
ゲーム内でよく自殺をするやつがいた。それ自体は結構よくあることだったけど、そいつはゲームと現実の境がわからなくなっちゃうダメなやつだった。
正確に言うと、ちょっと違うかもしれない。現実世界で窮地に陥って、錯乱したのか、そうだ、自殺しよう。っていう思考になっちゃったみたいでよー。ゲームでも簡単に自殺してたし、だから現実でも、みたいになったらしい。これが死に癖って言うやつ。
だからゲームが悪いとははっきり言えない。そいつは正常な判断ができなかったわけで、しかも簡単に逃げ出そうとする弱者だった。それだけといえば、それだけ。
だけどやっぱりマスコミに相当叩かれた。一時ゲームの存続自体危うくなたりもした。それで自殺はまずかろうと、運営が自殺禁止にした。
でもそれって直接的に死ねないってだけで、どこにでも抜け道があるわけ。アリス嬢の使った手がソレ。
HPを生贄に、膨大な力を手にするような魔法とかスキルがあるわけよ。そういうのは強力だから、なくすとなると今度はプレイヤーが大騒ぎするから廃止にはできない。
「ってわけさ。それでわざと死に戻りもできるし、純粋に力及ばずゲームオーバーってのもあるの」
「でも……」
「でも、故意にそれをやり続けたら、その事件の奴みたいになる可能性もあるわけ。錯乱してたかもしれないけど、癖になっていたのには違いねぇ。その癖が、リアルまで影響あるものになったら終わりだぜ」
そういやアリス嬢を見つけたあそこは、生き返り地点の神殿に近かった。もしかするとまた死んだのかもしれない。
早いとこ何とかしなくちゃだけど、無理やりとっ捕まえても無駄。根本的に解決しないとどうしようもないし、なんか対策考えないと……。
アリス嬢が逃げたことには少し心当たりがある。でもそれをどう使うか、それとも、使ったらその時点でアウトなのか。カードを切るのが難しい。
それに心当たりが正解だったとして、それがつっかえになるとしたら兎嬢の方を先に攻略しないといけないかもしれない。でもそれはその心当たりを勝手にばらすってことで……
あーあーあーあーあーあー。どこをどうすりゃ二人同時攻略できるのか……。俺ギャルゲーとか向いてねー。絶対フラグへし折る自信がある!! しかもこっちぁリアルだぜ!? 折ったらもう再起不能じゃんか! うわーーーん。
「じゃ、早く助けないと、だね」
「ん? うん? そーそー」
真剣なハクの声に我に返る。そう、早くしないと。時間をかけすぎるとより危ない。でも攻略がぁぁあ。
「クロが、助けるんでしょ?」
「そりゃ力になりたいとは思ってるよ? けど、俺はそこまで……」
「できるよ、クロなら」
正直言って、そこまでアリス嬢と仲がいいとは思ってなかった。帽子屋とも、兎嬢とも。友人じゃなくて、ちょっと仲が良さげな知り合い程度だろうって。
なのにそれをハクは断言してくれやがった。確信めいた笑みで、力強く頷いてくれやがった。
「クロは、俺を助けてくれた。だから、できるよ」
「……」
やめろ。やめてくれ。そんな純粋な目で見ないでくれよ。俺は善人じゃない。本当はめんどくさいとか思ったりしたんだぜ? どうでもいいとか思ったりしたんだぜ? それを知らないで……。
そりゃハクは、ハクのことは、気にかけてたから……。だから、だから……。
俺は、ヒーローじゃないんだよ。やめてくれよ……。
「クロ?」
一瞬どす黒い感情が浮かんだ。苦しかった。
でも、ダメだ。ハクには見せられない。純粋で、まっすぐで、俺を慕ってくれてるハクには。
「ううん。なんでもねぇ」
気を付けて、そっと笑む。大丈夫。慣れてる。黒鷺サンは飄々とした奴なんだから♪
「そうさな。何とかしないとな」
「うん、だから、あの、そういう時は、俺気にしなくていいからね。ちゃんと待ってるよ……?」
俺のちょっとした動揺には気が付かないでいてくれたようで、ハクは恥ずかしげに視線を伏せて、小さな声でそう告げた。
「ホントだぜ? いきなりいなくなんなよ、ビビるから」
今日のハクの大失態(仮)を引き出して、からかってやる。
「う、ご、ごめんなさい……」
「ん、反省してるならよろしい。さて、めしにすっか。何食いたい?」
さらっとハクの髪を撫でて席を立つ。
市販のまずさを押し流す、うんとおいしいものでも作ろう。おいしいものを食べて、楽しい気分になれば、きっときっと、悪い感情なんて消えてしまうから。




