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道化と冠  作者: 青螢
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お元気ですか?

 急いで待ち合わせ場所の噴水に行くと、ハクが縁に腰掛けて待っていた。フードを被っていなかったので一瞬で分かる。いや、なくてもわかるけど! ってか、何でフード外しちゃってんのよ、もー……。

「お待たせー! ……ハクっ!? なしたん!?」

 近くに寄ると、ハクの顔色が尋常でなく青ざめているのがわかった。急いで顔を覗き込む。

「あ、クロ……」

 本当に近く、傍に寄るまで気が付かなかったかのように、やっとぼんやり顔をあげた。

「ハク、なんかあった?」

「ううん。疲れた、だけ」

 力なく首を振り、ハクは立ち上がった。

「ごめん、何買うんだっけ?」

 首をかしげてこちらを伺うけれど、帰ったほうがいいんじゃないか? 微妙に焦点が合ってない。

「これからの生活に必要なもん……だけど、大丈夫か?」

「うん、きに、しないで」

「気にしないでっつってもよー……」

 元々肌は白かったけど、今は死にそうに青白い。貧血でも起こしてるのか。てか、この世界に貧血は存在するのか……。

「えと、部屋に置けるものって決まってたりする? 重さ、とか」

 話題を変えたいのだろう、唐突に質問された。一瞬虚を突かれる。

「へ? あ、いや、基本ないはず。あぁ、うん、あったとしても設定変えればほとんど何でもいけるぜ」

「あ、じゃ、じゃあね。一つ、おきたいものがあって……」

「ん?」

 ハクからお願いだなんて珍しいじゃないか!! いいよおじさんなんでも叶えてあげる!!←おい

 けどな、ハクよ……もじもじするな、毛先をいじるな、頬を赤らめるな! 顔色がよくなったのはいいが、そこらの女子よりも破壊力抜群だぞ!? 周りにいた女子何人か、赤い顔でくらっと来ちゃってるからな!?

「あの、えっと、あの……」

 もじもじもじ。

「えっと……」

 ハクがうまく言い出せないのは今に始まったことではないので根気よく待つ。えぇ、待ちますともよ。

 けどやっぱその破壊級の美形面を隠せ!! と言ってやりたい。くらっ、から、ばたっ、となる人が増えている。

 お、俺のせいじゃないよね!? ちゃんと隠せって言ったもんね、俺!?

「あの……お、大きい本棚が欲しいです!!」

 ハクにしては珍しく大きな声でそう頼んでくる。つっても普通の人の普通のトーンだけどね。

「お、おう、なんで敬語……」

「た、頼み事だから……たくさん本持ってるんだけど、床抜けちゃったりしないよね? 大丈夫? 置いてもいい?」

「大丈夫」

 床が抜けるとかそういう現象はゲームでは起きないかなぁ……。

 ハクは変にゲーム慣れしてないところがある。まぁ、これが初めてのゲームらしいし、家持ってないなら……いや、やっぱゲームやってなくてもそこまで現実味ださないよね、とか思わないのか? うーん、わからん。

「よかったぁ……」

 ほっとしたように口元を緩めるハク。……だからっ!!

 あーあーあー、近くの女性陣で立っている人は少ない。白狼様の激レア笑顔ですか? そりゃ立ってる方が無理デスネ。おーおー、流血沙汰ダゼ……。もちろん鼻血の海デスガ。

 こいつ、今が外だってこと忘れかけてないかあ……?

「クロ、行こ?」

 コテンと首を傾げるなぁ!!

「おけ。だが行く前にフードを被ろうか?」

「あ……」

 完全に忘れていたらしく、急いでフードを下す。羞恥のためか、耳まで赤かったぞよ。

 うん、俺もこっちのが落ち着くヨ。周りの視線がいつもの三倍くらいは痛いからなー。フタケタがなんばしよっとねってかー。うふふー。

「ま、いいの見つかった?」

 若干疲れつつも、嬉しそうなハクの様子に、まいっか、となる俺はもうだめな気がする。

 歩きながらハクに訊ねた。

「うん。一つしかなかったけど……」

「んー? 本そんな多いん? 似てるようなもん作れたら作ってやるよ?」

 レベル的にはほとんど問題ないとは思うけど、レシピと材料はどうだかなー。

「ん、足りなかったら、お願い」

「うっし」

 その後色々と店を回って、本棚は一つ買って、結局足りなそうだから追加で三つほど俺が作ることに。

 縁に動植物のモチーフが描かれている落ち着いた飴色の本棚だった。まぁ、ちょい複雑な細工だけど、できないこったないだろう。なんてったって薬膳料理細工師ですから!!(どやぁ

 他にも普段着を買おうとしたのだけれど、残念ながらそういうものはほとんど売れてしまっていた。残っているのはあまり肌触りがよくない粗悪品or防具系ばっか。

「やっぱ生活必需品的なやつは売れるか」

 いつもはあまり人が来ない、冒険するのには向かない、いわゆるおしゃれのための服屋でも物がなかった。半分以上は防御優先とかするから、あんまこういうのは売れないはずなんだがなー。

「うーん……」

「布も……あんまいいのねぇなぁ」

 素材屋にも寄ってみるが、そこまでよろしくない。綿・絹はもちろん、麻も結構少ないなー。皮とかじゃ意味ねぇし。無駄な高級品まで結構売れてるのが意外だ。いや、まぁ、こんな状況だしな。

「ごめん……」

「なんでハクが謝んの? しゃーねぇよ」

 ふむ。ちょっと柄とかは選べないけど、この際目をつぶってもらおうか。

「俺の手持ちでいいか? 帰ったらいろいろ見てくれない?」

「え?」

「裁縫的なサブ職持ってたからさー。あ、これ兎嬢に内緒ね。まぁ、気にいるかどうかはわかんないけど、作ったのもあるし、作ることもできるし……買い取って? それじゃだめか?」

「せっかく作ったの、いいの?」

「よくなかったら提案しねぇよ」

「いい、です。お願いします」

「だから敬語!」

「だって、だって……」

 とりあえず服とかについてはそれで任務終了。裁縫師のサブ職は今持ってなかったから後でジョブチェンしないと……。

 ともかく次は家具かな?

「あのままでも、いいよ?」

「どうせやんなら好きなようにやれよ? あれは間に合わせだし。好きな色とかあるでしょ?」

「うーん……」

 ハクは色々消極的なので俺が大いに押し付け……けふんけふん。引っ掻き回す! あれ、あんま変わってない? あ、そう。

 色々相談の結果、ハクの好きな色は水色と白。どうやら薄めの色が好みらしいことが判明。んで、寒色系。

 なのでカーテンとか布団とかはそう言う色でそろえることに。ベッド自体はそのままでも大丈夫そうだから、カバーを変える。

 それに加えて机と椅子を買っていた。普段は洋風の椅子生活らしい。床にはあまり座らないんだと。

 などなど、色々好みを聞きだして、いや、全部買わせるわけにはいかんから、半分ほどは俺の持ち物を安く買い取ってもらうことに。

 俺がどーのこーの言ってるのにな、金を一銭も払わねぇってないだろ? いや、実際払うわけではないんだが。

「そんなもん?」

「ん、大丈夫」

「おう、じゃ、帰るべ」

「ん」

 帰り道にジョブチェンして、それから思い出したので露店によって、パンとサラダとプリンを二個ずつ買っていく。

「おいしく、ないよ……?」

 ハクが嫌そうな顔で注意してくるが、ちょっと食べてみたかったの。気になるじゃん? どんなにまずいのか……。

「ふふふ、あれだよ、押すな押すなの心境?」

「??」

 やるなと言われりゃ余計にさ?

 まぁ、ハクはわかっていないみたいで首をかしげている。

「まま、チャレンジ精神は大事だぜよ……」

 そんなどうでもいい会話をしていた時。

「どわっ!?」

 急に風が強く吹いた。慌ててフードを押さえる。ハクは間に合わなかったようで美形面があらわに。

「何が……?」

「あれ」

 俺が周りを見回しているとハクが一点を指さした。

「ありゃりゃー」

 そこで喧嘩をしているやつらがいた。剣士風の男と、魔法使い風の少年だ。今のは少年の風魔法だと思われる。

 まったく、こんな街中で……あぶねぇなぁ。

 ここは戦闘禁止区域ではないので魔法使っても問題はない。だからと言って多方面に迷惑をかけると警邏隊とか言う警察みたいなやつらが動き出してくる、はずだ。今はその設定が生きているのかいないのか……。

 通報すればすぐ来るはずなんだけどなー。ためしにやってみるかー?

 とかぼんやりとしていたら少年の魔法第二弾(しかもさっきより強力)が周りを巻き込んで発動する。

「クロっ」

 ハクが急いで結界を張ってくれるから助かった。じゃなかったらさすがにフードがぶっ飛んじまいそうなほどの強風が叩き付けられる。

「大丈夫?」

「あんがとハク」

「ん」

 あ、え、ちょ!? 露店吹っ飛んじゃってるよ!? そこらへんでも悲鳴上がってるし!!

 ……あ! よかったね! スカートめくれそうだよ! ラッキースケベがあるかもね!! いや、その前に本体も飛んでいきそうだけ……ど……?

 悲鳴を上げて近くの柱やなんかに掴まって、風に負けないように堪えている人たちの中に、見覚えのある姿を見つける。

 風に巻きあげられるのは金色の長い髪、青いワンピースと白いエプロン飾り。青白ボーダーのニーハイソックスといったアリスっぽい恰好をした……。

「アリス嬢!?」

「え?」

 きょとんとしているハクを、今だけ少し無視させてもらって、急いで名前を確認する。近くにいるからちょっとしたステータス確認ができるんだぜ。

 って、やっぱ間違いない。アリス嬢だ!! なんでここに!?

 考えてる暇はない。風がやむ。そしたらアリス嬢はきっとどっかにいく。ここで見失っちゃこまるんだよ!!

 持っているアイテムを思い出して、今この状況で役に立つものを呼び出す。

「《使い切り召喚魔法陣》イヌゾンビ召喚!!」

 超絶レア度が高い、調教者じゃなくても一度だけ何かを召喚して従わせることが可能なアイテムを使って一匹のゾンビを呼び出した。

 イヌゾンビは鼻がよく、召喚者に忠実で、得物を追い回すのにすぐれている。ま、簡単に言えば追跡用の調教獣だな。攻撃力もそこそこ高いから、初心者憧れの品である。

 つっても、一回きりのだからあんまり性能いい子ではないけれど。しかも高いから!!

「アリス嬢を追って!」

 俺の言葉にイヌゾンビが走り出した。いつの間にかアリス嬢の姿は見えない。さっき一瞬風がやんだからその隙を逃さなかったのか……。

 イヌゾンビはギリ間に合ったかどうか。でも走り出したってことはちゃんと任務背負ったってことだよな。大丈夫、かな……。

「……」

 ご主人である俺はイヌゾンビの行方を目で確かめなくても追える。後で結果確認だな。

「ん、ごめん、ハク」

 おいてけぼりにしてしまったハクに謝罪する。

「……アリス嬢……アリス?」

 白狼様が降臨なされたらしく、っていうか、元はこっちなんだけど、口数の少ないハクが、無表情で俺に問いかけてきた。

 やっと通常運転かな? 逆に安心しちゃうぜ。さすがにもう鼻血の海は勘弁。

「そう。ちょっと、ね。詳しい事情はまた後で。今は帰ろう。これ以上ここにいたら本格的に巻き込まれそうだし」

 ハクの結界でまったく俺らに影響はないけど、周りはどんどん被害が拡大している。

 あー、ラッキースケベどころじゃないよ、ホント。

「追わない?」

 不安そうに言うのなら、聞かなくてもいいのに。

「大丈夫だよ。とりあえず場所だけ確認したいだけだから。今はハク優先、な?」

「……」

 罪悪感と不安と、喜びに瞳が揺れている。もちろん表情は皆無。瞳だけで判断。さすが外面が、悪い? 白狼様ですな。

 クスッと俺は笑って、拠点であるマイホームまでの転移魔法を発動した。

「帰ろう、ハク。俺らん家にな」

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