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道化と冠  作者: 青螢
19/69

道化の遊戯

【王様はね! 何でもしていいの! だからね、み~んな~!! ゲームしよう☆】

 はい? イミフ。“だから”ってどこにつながってんの?

【この世界を封鎖します☆】

 背後に、きゃるん♡ とでもつけたいようなぶりっ子ポーズでそう言った。

 少しの沈黙。その後ざわめきが徐々に起こる。皆半信半疑……というより、そんな冗談信じると思ってんの? って感じかな。ありえないっていう、ゲームへの信頼? それとも自分には起こるはずないって? それともそれとも……話が呑み込めていない?

 なんにしても、あーぁ、俺もフィクションだと思ってたぜ? なのに実際に閉じ込められることになるとはな。警戒は十分だったはずだろうに、それを上回る腕だったのか、完全にやられた。

 色々な状況を見て、俺も俺の腕を信じて、それでも対応できないこの状態。完璧にアウトーって感じ。

 でもそれで、簡単に、諦めて、受け入れた俺は異常かもしれない。悔しいとは思うけど、もうどうでもいいかって。半笑いであっそ、って流せる程度のダメージしか受けてないって、おかしい? おかしいよね?

 まぁ、今初めて知るわけじゃないからかもしれないけどね。いや、それともフィクションとノンフィクションの区別があいまいな廃ゲーマーってことかな? あはは……。

 あー、どっちでもいいけど、やっぱり動揺してるみたい。なんか変に言い訳しまくり? いいんだよ、な封鎖されようが、デスゲームにされようが。それは本当。

 でもちょっと困るかなぁ。死ぬのは諦めるけど、仕事ほっぽるのは主義じゃないし……。

【うるさいなぁっ!! ちゃんとあたしの話聞いてよ!?】

 一人称が変わった。キンキンのアニメ声が耳に痛い。

【まったく!! これだから低俗な人間風情は……!!】

 いやキミ何者? 

 次の話は取り繕うように咳払いから始められた。

【えー、こほん。いーぃ? ちゃんと私の話聞くのよ? わかった? ではでは……。

 この世界を封鎖って言うのはゲーム世界で生活してって言うことよ? 現実には戻れないの。何人か試したデショ? ログアウトボタンがあろうとなかろうと、押そうが押すまいが、結局ここに逆戻り。お分かり?】

 ゆっくり言い聞かせるように女の子が話すから、半分以上は飲み込んだのだろう。集まった人は大勢いるのにほぼ無音の状態ができた。

【あぁ、安心しなさい! ちゃんと個体登録の時に住所を登録した人は、そこに救急車とかを向かわせているわ!! きゃっ、あたくしって親切ぅ~★☆★ あ、でも、そこに嘘の情報かいたり、その後住所が変わって、変更まだーって人は、無理だからね? 偶然見つかればいい方ね☆】

「みつかんなかったらどーなんのー?」

 俺は静寂の中、ちょっとした好奇心で聞いてみる。皆も聞きたいところだろ? 気になるよな? 気になるけど聞きたくない? ある程度予想できるもんな。

 俺は後ろの方だったし、適当に魔法使っていろんな方向から声が聞こえるように細工したから俺の方に、周りのみんなの視線が向くことはなかった。

 どうせならスピーカーもやればよかったのに、聞こえなかったらいいやって思ってたから音量はそのままで。若干女の子とは遠いかなぁ、とか思っていたけど、少し視線をさまよわせた後、俺とばっちり視線を合わせてきた。

 ……なんでばれてんのん……。いや、気のせいだよね、たぶん!!

【それはね~、ぽくっ、ぽくっ、ぽくっ、ち~ん★ ご愁傷さまで~す★☆★】

 deathよね~。

 ご丁寧に後ろに木魚と天使のイラストまではってくださってるぜ。和か洋くらい分けてくれよ。

 ざわめきの中に悲鳴が混じり始める。何人か倒れたりもしているようだ。ちょっとした騒ぎが起こる。

【あはっ! 君面白いね~☆】

 そらどーも。嬉しくねぇわ。

 だってこれ完全にロックオンされてるじゃん、俺。個別認識されてんじゃん。目ぇつけられてんじゃん。おーのぉー。

【面白いからもう一個くらい質問許したゲルよ~☆!!】

 ん、そら嬉しいな。こいつは漫画とかによくある、ただただ理不尽なやつではなさそうだ。

 さて、せっかくのチャンスだ。何を聞こう。

 あんた何考えてこんなことやったの? って言うのが一番聞きたいけど……いや、やり方も聞きたい。でもそれだと皆から怒られそうだな。脱出の仕方でも聞く?

「ん~。保留とか、ダメ?」

 理不尽なやつじゃないならある程度いろんな説明はしてくれそうだし、それを今俺が聞くとただの無駄遣い。それは嫌だからダメもとで聞いてみる。

【んふふ~っ♪ しょうがないなぁ! 今回だけだぞ♡】

「あ、あざーす……」

 い、意外といいやつ!?

【その代り秘密にしたいことは言わないことにするぞ☆ 無理だったら変更可! ホントうちってば太っ腹やんけ~☆】

 うん、太っ腹。キャラが彷徨ってるけど、俺のお前に対する評価も彷徨ってるぜ。

【んじゃ、色々おつむの足りないお前ら家畜にこの俺様がっ!! 説明してやるぜぇぇぇええ!!★】

 キャラ彷徨いすぎだろ!!

【一回だけしか言わねぇからよく聞きやがれってんだ!!

 とりあえずお前らは現実には帰れねぇ!! このゲームでこれからを過ごすんだよ!!】

 ざわめきが大きくなった。俺と女の子の会話中は静まってたのにまただよ。うっさいねぇ。

 ……周りにさっきのが俺だってばれてないよね? ね? ……そう願おう……。

【てめぇら!! 黙らねぇんならここで説明終わりにすっぞカス!!】

 その言葉で無駄な騒ぎは減ったがすすり泣く声やしゃくりあげる声は続く。

 そりゃすぐおさまらねえものな。逆にここまで減ったらいい方だろ?

【しょうがないから安心できるようなこと言ってあげるよ★ まず一個。デスゲームなんかじゃないから安心してね☆】

 ん、そうなの? 現実で死ななきゃこっちで死ぬこたないんだ。そらラッキー。

 でも現実で衰弱死とかしたらこっちではどうなるんだろうね? 死んだのに気付かないでずっとこっち暮らしなのかね? それともゲーム内で突然、か、何か予兆を感じて消えていくんだろうかね?

 今気にしてもしゃーないか。

【二個目。ゲームを脱出する方法はあるょ☆ 自分で考えてね♪ あ、でもでも~、ノーヒンじゃさすがに可愛そうだし~、ちょっとわかりやすくしといたげるね~☆】

 ギャルっぽい話し方。イラッとするけど、まぁ、ヒント出してくれてんだし、落着け俺。

【それとね、こっからは体の感覚を現実と近づけるから!! ただし痛すぎるとみんな冒険したくなくなっちゃうでしょ? だから本日の特別価格!! ななな、なんと!! 最大七十パーセントオフ! あ、でも場所に限りがございますのでご注意ください!! あぁんっ、ミーってば太っ腹すぎませ~ん?】

 今度は通販みたいになってっぞ?

 てか、場所に限りがあります? ドユコト? 冒険したくなくなるってことは、戦闘時には七十パーセントオフってことか? それなら冒険するのに無駄に消極的にはならな……あ、最大……?

 なんでもいい。痛みが出るってことか。痛いのは嫌だなぁ……。

【体の感覚を現実と近づけるって、痛みだけじゃないのよ? 空腹感も、睡眠欲も……人間の三大欲求全部ゲーム内で満たしちゃったりして☆ あ、でもトイレの心配はしなくてもいいよ。取り込んだものは全部体力と魔力に変換されるからね★】

 微妙に人間じゃないみたいで気持ち悪いな。

【あ、後ね。この世界も現実と近づかせてあげる★ 時間の流れとかが違うと、いろいろ面倒でしょ? 突然夜から朝になったら大変でっしゃろ? だからこれからは時間の流れも、現実と一緒に変えたります☆】

 わーぉ……。時間か……いや、時計無いからそんな重要な気もしな……時計直るのかな?

【そんで最後!! みぃんなー☆ 体、現実と違うとぉ、長期生活大変でしょ? お風呂入ろうとしても、羽とかケモミミとかあったら難しいもんね! だからねぇ☆ カラーリングはそのままに現実の体と同じにしてあげる★】

 ……え?

【じゃ、いっくよ~? はーい、さーん、にぃー、いーち★ ちぇぇーんじ★★☆】

 その時の俺は俺史上最速で動いた。マントを袖のある長さが引きずるくらいで、厚手のものに変更して、急いでフードをかぶり、ついでに出したマフラーっぽい布も巻く。手袋もしとこ。皮膚が出てる箇所がなくなった。

 マントを変えて、フードをかぶった瞬間に視線ががくんと下がる。

 悪かったな!! 五センチくらいかさ増ししてたよ!! 見栄はりましたが何か!? 百六十代ですけど文句ありますぅ!? ついでにこのブーツ、インソールだからぁ! それで身長百七十ちょいのちょいだからぁ(泣!!

【ちゃんと変更できたかなぁ? あ、持ってる装備品の性別は現実の方に合わせておいたよ★ きゃっ、僕ってば、ホント太っ腹~☆ メタボになっちゃぁ~う☆☆★】

 女の子の声で嘆きから立ち上がると、人がこっちに迫ってくるのが見えた。

「やっべっ!?」

 アーチをよじ上ってもみくちゃにされるのを何とかのがれた俺はを広場を見下ろす。

 人波は三つに分かれていた。

 一つは女の子に詰め寄ろうとする波。一つは逃げ出そうと出入口、こっちの方に駆け寄る波。あとの一つはどっちにも行動できず、ただもみくちゃにされるだけの障害物。波ですらないな。

 ゲームに閉じ込められたって聞いた時よりもすごいパニック状態だ。どんだけ偽りの姿が大事なんだか。……俺も隠したから人のことは言えねぇか。

 詰め寄ってる方の波はすぐにどうしようもないと気が付いて呆然と流れを緩めたけど、出入り口に向かう波は変わらない。むしろ中心まで行って、どうしようもないから取って返そうとするやつもいて大変だ。

 ギルマス達大丈夫かな……。ミナちゃんとか身長低いのに……副マス二人も……。

「なんでぇ!? なんで開かないのぉぉおお!?」

 真下から聞こえる金切り声に眉をひそめて視線を下げる。

 女性が酷い顔をしてアーチの下の何もない空間を手で叩き続けている。

「? あ、なるほど」

 アーチの向こうは真っ暗で、ただの壁のようになっていた。出られない。封鎖されてるみたい。

 ちなみに上からは遠くは見えるけど、写真が壁に貼ってあるみたいになっていて、どちらにしろ抜け出せはしない模様。

【まだ、ニガサナイヨ?】

 曇った目で、無表情に、首を九十度傾げた女の子がその女性を見ている。無邪気に笑ってるのも不気味だが、表情失くされても気味が悪い。背筋がゾクリとするね。

【ニゲタイノ? 死んだら、ニゲラレルヨ? シニタイ? デスゲームにしようか?】

 目が笑ってない! ハイライト消えてますよ!? 本気だあいつ!!

 残念ながら女性は恐慌状態で聞いていない。

「あー、もうっ!! “怒れる悪魔に飲み込まれ 苦しみ味わう仔羊に 束の間の 仮初の 休息を。スヌーズ”!!」

 俺は下に向かって眠りの呪文をばらまく。

 眠らせて、女性を黙らせながら俺は叫んだ。

「騒いでるやつら黙らせろ! 死にたくなかったらなぁ!!」

 たぶんあいつはマジでデスゲームにできる。というか、ゲーム封鎖ができてデスゲームにできないってことはない。VR機は全部あいつの支配下にあるはずだから。

 なら精神崩壊も、脳破壊もお手の物。なんだよねー。だからゲーム業界のVR機導入は大変だったとか……。安全性は確保されてたはずだけど、その上を行くやっこさんだったってことさね。

 ともかく、俺の言葉を聞いてまだ冷静の部類に入っていた人たちは次々に行動を始める。

 説得する者、俺と同じように眠らせるもの、武力で気絶させるもの、薬を使うもの、色々。

 目的ができたからか、ある程度の落ち着きも一緒にばらまかれたようで、危ういけれど何とかまともな判断ができるような状態になったみたいだ。

 緊張感に支配された沈黙が落ちる。

【うん、うん。いいよ。デスゲームにはしないね。それでいいんだよ。もう、最初からちゃんとヒトの話は静かに聞こうね? こっちにも限界ってのがあるんだよ?】

 語尾に星もつけずに女の子がにっこり笑って言葉をつづる。

 とりあえず何とかなった。ギリギリだけど、最悪は免れた、よな?

【じゃあ、ルール説明はこのくらいで☆ あ、またなんかあったら随時掲示板に浮上するからご安心を★

 ではでは……

 光と大地が交差するカラフルコンティネントへようこそ☆ 僕は道化の王様、王様の道化。道化冠(クラウン・クラウン)だよ★ なんちゃって★☆★ 全部探して集めても、ピースが足りない!? しっかりカケラを集めて真実を見つけないと本当の答えにはたどり着かないぞ☆ ここはファンタジー! 夢の国! ワンダーランドなんだから、リアルに囚われてたら楽しめないっでしょでしょ☆ 最後に!! 表だけに惑わされないで、ちゃんと裏も見るんだぞ★】

 あぁ? 突然何言って……?

【はいっ、じゃぁ! 導入部分はこれで終了☆ 出入り口は解放するけど、危ないから、押さない駆けない喋らない、だよ★】

 そう言ってホログラムは消えた。サーカスのような飾りつけも同時に。

 集まった皆々様方は呆然としていた。最後は意味がわからなかったし、駆け足だったからやる気も元気も吸い取られたみたいだな。

 俺は冷静……でも、ない。

 とりあえず一人になりたかった。もう考えたくない。めんどくさい。とりあえず休みたい。いろいろパンクしそう。やだやだ。

 アーチの上に座っていたから、後ろに倒れ、頭から落ちる。地面に着くまでに捻って、足を下にして、通路の方に体を向けた。

 するりとざわめきから抜け出して、遠くに走る。暗い路地がいい。細くて冷たい、お祭りとかになったら絶対ゴミだらけだろって感じの路地裏。

 素早さあげてるから、足は結構速いと思う。けど、どこまでもざわめきが追いかけてくるみたいで……。

 ほっといて。一人にさせて。うるさいうざい気持ち悪い!!

「も、やだ……」

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