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道化と冠  作者: 青螢
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入場開始

「本日のギルド内頂上決定戦の勝者は~……リーザ嬢パーティ!! おめでとうございます!!」

 ステージ上で声を大きくして勝利宣言。ついでに見せつけるように喜んでやった!! いえぇい!!

 狐の姐さんは負けました!! 守られた!! 俺の伝説最高ランク!!

「賞品はいろんな種類の材料ということですが……それは一週間ほど後に納めさせていただきます!!」

 リーザ嬢のパーティはオトナな対応をしてくれたんだ! ギルドを元気づけるために企画してくれたのにもらえるからってもらっちゃダメよね。とかいって材料いろいろを要求してくれた。

 うん、その材料も結構レアもんだけど、加工品よりよっぽどいいぜ!! ありがとうリーザ嬢!! 感謝感激だぜぇぇええ!!

「残念でありんす……」

「せっかくの伝説級が……悲しいであります!!」

 マジで遠慮という言葉を覚えてくれ姐さんと軍服少年……。

 まぁ、頂上決定戦としてはあれだけど、ギルド内の心の安定、的な意味ではそこそこの結果かな。

 引きこもってたやつも全員出てきて、今は戦闘訓練とかをみんな一緒にやってる。初心者たちも混ざって、ギルドの質も上がりそうで何より。

 いい感じいい感じ。少なくともこのギルドは平和だ。半分以上、心から。

「でもあれか、一歩でも外でたら脆いな……」

 そこは仕方ないか。少しでも持ち直せば上々。

「黒鷺さん! モサモサちゃん帰ってきました!」

 ミナちゃんがステージに上がってきて報告してくれる。

「あ、ホント?」

「はい!」

 あぁ、キラキラした目で報告してくれるミナちゃん……子犬みたいでかわゆす。癒しだ。

「そっか。ありがと。モサモサちゃん大丈夫だった?」

「ちょっと疲れたみたいで休んでます」

「そかそか。うん、今度何かお礼するよ。花の蜜とかどうかな? モサモサちゃん」

「いいと思います!」

「うん。じゃ、今度なんか持ってくるね。……少し上にいるから、なんかあったら知らせてくれる?」

「わかりました」

 地下練習場からエントランスにでて、奥の隅っこに椅子を出して座る。

 マイク付の片耳ヘッドフォンをつけて、チャンネルを合わせ、スキルを発動した。

 サブ職『諜報員』。スキル『盗聴』。ついでにあっちにもマイクとスピーカーつけて、トランシーバーみたいに改造したんだ。場所によるけど、会話だってできる。

 ガガーーびーーーがががっ!!

 だめかなぁ……?

「もしもーし。ぎるまーす? オートー願うぜー」

 がががっ……

「く……さ、ぎ……か?」

 お、つながった!

 聞き取れるように流す魔力を増やして精度をあげる。

「ギルマス? 聞こえる?」

「あ、き……る」

 あっちは聞こえてるみたいだな。こっちは微妙。

 んー、そしたら……。

「そっちも魔力流してみて。今も流してたら多めに」

 ががっ、と一瞬ノイズがうるさくなったけどすぐに静まった。

「聞こえるか?」

「オケオケ最高」

 これで問題ないな。完璧。さすが俺。

「よくこんなの思いついたな。こっちはチャットもメールも使えなくてパニックだってのに」

「文明の利器に頼ってばっかな現代日本人の典型だな」

 世の中から電気が消えたら一瞬で人類滅びんじゃね? ってぐらい頼り切りだもんなー。俺もだけど!! パソコン命!!

 でもこっちだと魔力あれば基本道具使えるし……。ふっ、ゲームライフはイージーモードだぜ。

 工作は好きだからこういうの作っといてよかったわー。いろいろ試した甲斐があるよな!

「でもこれだって一番いいってわけじゃねぇさ。まま、会話できるだけましってだけ。笑えねぇ」

「それもできない俺らに対する皮肉かおいこら」

「わりわり。んで、今どんな状況なわけ?」

 つながると本気で思ってたわけじゃないからエントランスにいるわけだが……すぐに見つかりそうだな。ギルマスの部屋行くか。

 んー、でもあんまり姿消すのもあれなんだよな……。

 とりあえず消音の結界だけはっとこ。誰でも使える簡単魔法だからあんまり信用ならないかもだけど。

「そっちはどうだ? 戻ったのか? ギルドは? リリアもシエルもがんばってるか?」

「必死で泣きそうだったぞ。ガキ置いてくなよ」

「……」

 さすがに罪悪感でもあるのか沈黙が重い。

「お前の存在、よく考えてくれよ? いなくてもよくわかんねぇ校長とかじゃねぇんだぜ? 身近で頼りになる大人なんだよ」

「悪かったとは思ってるが、事情がな……」

「いいさ。わかってるよ。でももう少し姐さんとか、大人をあいつらにつけるくらいの配慮ってやつをだなぁ……」

 って、なんで俺が説教してんだ? うん、こっちも迷惑(主に姐さん関係の恐怖)こうむったからぐちぐち言うのは許されると思うが、キャラじゃねぇな。立場も資格もねぇや。

「後で副マス二人に泣きつれて困り果ててしまえ!!」

「なんで突然呪ってくるんだよ……」

 だってだってなんだも~ん♪

「あ、それと必要経費としてある程度は請求してやるからな……!!」

「お前何やらかした!?」

「やらかしてはねぇよ!!」

 確かにいっつもまともなことしてなくもないかもしれなくもないかも……だけど!! こんな時にへんなことするかぁ!!

「んで、ギルマスあんた今何してんの? ミライトにはいるんだよな?」

「あぁ。ミライトにはもう一人運営の奴がいるはずなんだが、見つからん。チャットも使えないし連絡手段もないで時間を食った。……お前、つなげられたりするか?」

 特権ねぇ。確かにそれがあれば会社に直通連絡もできるだろうし、合流しようとしてんのか。

 で、俺のこの道具チート(仮)を頼ろうって?

「無理無理。俺はその人知らねぇし。クラッキングのこと言ってんならわからねぇけど、ギルド離れるつもりはねぇよ? この通信もあんまり長引かせたくないんだ」

 道具は内緒で持ち込んでるけど、ギルマスにもちょっとはばれてるし、情報あればしょっぼい道具でも見つけられる可能性はある。

 けどねー、それってみんなの前でやれないっショ。ってことは、離れろって? 今の状況でんなことするかっつうの。

「だよなぁ……」

「探してるだけ?」

「会社の方につなごうとしても、なぜか弾き返される」

「妨害? ただのバグ?」

「知るかよ!」

 ギルマスもイライラしてんなぁ。こんなんで声荒げるとか……。

「バグでも問題だ。何がどうなってんだよ! くそがっ!!」

「落ち着けー」

「……ちっ。ワリィ」

「いいけどさ。んー」

 問題が多すぎて何から手を付けるべきか全くわからねぇな。

 バグでも問題なのはそうだけど、ただのバグなら外にいる会社の人たちが何とかしてくれる可能性だって大きいわけだし。

 逆にバグじゃない、乗っ取りとかなら……それをやろうとするくらいの技量はあるはずだろ? 対抗するのは難しいかもしれないわけだ。

 さらに、バグでも、乗っ取りでもない原因不明の不具合だとしたら、どうやってなにしろと? 会社にもつながんないんじゃほんと俺らにゃお手上げ状態になる。

「ギルマスさ、中から外につなげるような道具持ってねぇの? 試した?」

「道具自体はあるが……技術がそこまでねぇからか、元からできないのか、つながらねぇ」

「じゃ、完全手詰まりじゃん」

「他の運営側の奴探そうとしてるが……大陸移動ができねぇ」

「え、いつから?」

「わからねぇ。チャットが使えなくなる前に報告はあったが、一回だけで、しかもそいつはすぐに行けたと言ってきたからただの手続き間違いみたいなもんだと思ったんだよ。その後時計が止まったあたりから誰も使えなくなったみたいで……」

 ん……?

「ギルマス、いつからギルドにいない? ギルドから出て大陸移動した?」

「チャットが使えなくなったあたりには出て、一回マシロに行ったぞ。その後ミライトに戻って、時計が止まった。おかしいから違うところに運営を探そうとして、無理だった」

 つまりギルマスは大陸移動できないのをじかに感じたってことか。

 でもなぁ……

「……俺、時計が止まった後だと思うんだが、大陸移動したぜ?」

 ミライトに帰った時にはすでに時計は止まってたはずだし、チャットだって使えなくなってた。だから動かないなんてことはないと思うんだけど……。

「はぁ!? マジかよ!?」

「ホントに誰も大陸移動できないわけ?」

「当たり前だろ! お前こそほんとかよ?」

「あたりまえだのくらっk」

「古いわ!!」

 ホントギルマスノリいいな。だから好きよ笑。

 あんまり深刻にならないっていいよな。重くなるからいけないんだ。

「あー、そうそう。ギルマス」

「なんだよ」

「ログアウトボタンある?」

「……」

 そこで沈黙しないでほしいなぁ。ちょっと怖いじゃねぇの。

「ないってのはバカどもの戯言だろ」

「ふぅん」

「……まさか?」

「さぁね。どうも俺はバカらしいから。戯言かもね?」

「……こんなところで嘘は言わねぇよな、お前は」

 知り合ってなかなかの期間がありますから? その辺はよく知っていただいているようで。説明しなくていいのは楽だ。

「ログアウト、な……」

「やっぱりバグだらけの中はあぶねぇよな」

「……」

 その沈黙は何!?

「……今の状況は、詰んでるだろ?」

「あー、そうだね?」

「だから、一か八か、ログアウトしようと思うのは変か?」

「いやぁ、変じゃねぇとは思うけど……やったのか!?」

 危険すぎるわ!! それで精神破壊したらどうする気なんだよ!?

 だから真面目な仕事人間は嫌いなんだよ!! 自分の命が危なかったら逃げんのが人間だろ!? 何で自分を生贄にしようとするかなぁ!!

「でもだめだった。弾かれた」

「弾かれた!?」

 あ、そ、そうだよな。ログアウトできなかったってこと……だよな。今会話してるってことは。

「ボタン押すだろ? ログアウトしますか、はい、いいえ。の画面になる。はいを押す。一瞬ゲームにログインする前の、ダイブしたすぐ後の画面になる」

 VR機はただゲームをするだけのものじゃない。VR世界に入ってから、他のチャットシステムだってあるし、その中で普通のパソコンでするように色々調べものだってできる。

 ギルマスが言ってるのはVR世界に入ったすぐの場所。パソコンで言うならホーム画面とかそこらへん。

「でもよ、だめだった。足に紐みたいなのが絡みつく感じがして、引きずり落とされた。気がついたら目の前にログアウトしますか、はい、いいえ。がまだ居座ってんだよ……何度も試した。毎回毎回引きずり落とされて、また何度も何度も試すんだよ……この絶望感、分かるか?」

 ギルマスの声は乾いていて、凍りついていて、どうしようもない苦しみ悲しみ痛みを抱えていた。

「……悪い。わかんねぇ。やりたくても、できねぇ」

 共感できるやつがいれば少しは楽なんだろうけど、俺にはその手段すらない。

「あぁ、そうだったな……悪い……」

「俺は何でもないよ。気にしない。そんなのどうでもいい。知ってんじゃん? 俺が無気力人間なの」

「……」

 俺は積極的に生きたいって思ってるわけじゃない。死にたいわけでもないけどさ、惰性で生きてんだよ。

 だから、逆にゲームに閉じ込められるって、まぁ、悪くはないって思ってるよ。ちょっと怖いけどな。

「もしお前らが帰ってさ、俺だけログアウトできなかったら、葬儀よろしく☆」

 ログアウトボタンがなくなって、ログアウトできなくなって、ゲーム世界で生きるのはいいけど、こんな事件あったらゲームの提供終了しそうだしな。そうなったら植物状態で生き続けても俺には意味がないしなぁ。

「縁起でもねぇ事言ってんじゃねぇよ……」

「わりわり。まぁ、早くギルド帰って来いよ? じゃないとお前抜きでギルド内の親交深めちゃうから! 俺がお前より信頼されちゃう日も遠くないんだからな!!」

 このへんで話を切り上げることにする。これ以上の収穫はなさそうだしな。

「お前が俺より? ないない」

「しみじみ言うな!!」

 なんか悔しー!! わかってるけども!!

「いいし!! じゃあn」

「まて!!」

 通話を切ろうと思ったら鋭く止められた。

「何!?」

「……」

「おい!? ちょっと!? なんなんだよ一体!!」

 止めたくせに何もしゃべらないからイライラして声が大きくなる。

「……」

「ぎーるーまーす!!」

「表、出てみろ……」

「あん?」

「表出て空見てみろ!!」

「なんなんだよ……」

 怒鳴るように指示されて、若干むすっとしながら出口に急ぐ。

 そして空を見上げて驚いた。

「なんだってんだよ……俺もう泣くぞ……?」

 空には大きなメッセージウィンドウが。

『皆様、零時五分前となりました。会場への入場を開始します。中央大陸マシロ・中央噴水広場へお集まりください。あふれてしまった場合には、他大陸の中央広場へ。

 大陸移動を解放します。どうぞ、お集まりの際はメイン装備でお越しください。

 また、お集まりになられない方は強制的に転送させていただきます。

 ニ ガ サ ナ イ 』

 最後の文句はご丁寧に赤文字だ。しかも滴るようなエフェクト付。

「……黒鷺……俺はもう少し周り見まわってからギルドに戻る。事情を説明して、落ち着かせとけ」

「了解」

 通話が切られた。

 あーぁ、なんなの、マジで。次から次に。疲れっちまうよ……?

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