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道化と冠  作者: 青螢
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ちょいっと裏ワザ?

 地下練習場はだいぶ広い。んで、形状は学校の体育館とか思い浮かべてもらえればいいかな。

 キャットウォーク? ギャラリー? そんな感じの通路っぽいのが天井付近の壁際をぐるりと回って、前方(ということになっている)にステージがある。

 集まった人数は八十二。引きこもったり、確認できなかったりしたのが七人いるらしい。

 結構集まったな。てか、ギルドにいたやつ多くね? 時間が変わって集まってきたのか?

 まま、そんなことはどうでもいいか。ほぼ集まってくれたから、いいよな。

 皆がどういうつもりなのかは知らねぇけど。不安そうな顔、ちょっと楽しそうな顔、もうどうでもいいって顔、色々。

 なんでもいいさ。空元気でもね。そのうち本物になれればさ。出て来てくれたってこたぁ、そういうことだろ?

 と、いうような挨拶をさせていただきました。えぇ、させていただきましたとも。

 俺に人望? ナイナイ。俺に人気? さぁね。そこそこみんなとは親しくさせてもらってるつもりだけどさ。

 だから挨拶は副マス二人にしてもらおうとしたのにさ……。企画したのはあんただろ! 仕事しろ!! ってリリア嬢にマイク押し付けられた。

 もう! 俺こんなキャラじゃないのに!!

 んで俺は挨拶から司会進行、グループ分けもできるだけ公平になるように心を砕かされたわけでございますよまったくもう!!

 で、今、俺は、ステージに座りながら、下で繰り広げられている戦闘を眺めていた。

 え? 俺は参加しないのって? それはね~……。

「誰か俺回復してー! こんなんじゃすぐ負けるー!!」

 回復薬はもう持ってないし!

「ハぁ? なんであんたが参加すんだよクロちゃん?」

「え……?」

「あんたは審判でしょ!! 景品あげる人なんだから!!」

「……」

 って言う理不尽な理由で仲間外れにされた。ひどいお……。

 景品あげるんだから死守させてくれよぉぉおおお!!

「ダメでありますよ!!」

 俺が嘆いていると軍服を着たエルフの少年が敬礼を決めながら俺に意見してきた。

「クロ少佐はほんの少し上の位置から大きく見下ろしているのがお似合いであります!!」

 え、何その俺の認識……。

「少し高い位置から大きく見下ろすってさ……立場よりも傲慢ってことか?」

 傷ついちゃうよ!?

「それは違うと思いんすが。表では地位は低く、裏では大きな成果を上げて英雄を気取っていてほしいのではありんせんか? わっちたちはぬし様の本当の能力を知っていんすからね」

 そこに狐の獣人で、着物姿のぼいn……けふんけふん。女性的色香が半端じゃない姐さんがいらっしゃった! 眼福眼福……とは言ってられない。

 てか、俺の能力、ね。確かにしっかり働いてたのは二年以上も前だからなー。今の人たちのほとんどは働いてないのになんで副マスなの? って目で見てくるやつ多いからなー(泣。

 古株は多いけど、初心者ランクの入れ替わりは激しかったりするからねー。

 別にいいけど! フタケタでしたしね!

「姐さん……!」

 ちょっと感動してたら次の言葉でがっつり落としにかかってくるのが狐の姐さん。

「で、ちゃんと欲しいものはくれるのでありんすよね?」

「えっとー?」

 ずいっと近寄ってくる姐さんに、俺はタジタジ。

「違うのでありんすか? 賞品は願えばできる限りのものはもらえると聞いたのでありんすが」

「俺の持ってる中でね!? あげらんないのもあるからね!? 良識の範囲内でよろしくね!?」

「わっちは『鳳凰の虹羽織』が欲しいでありんす。持っていんしたよね? 最高ランク」

「!?」

 伝説級の星五つ! 確かに持ってたよ!? でもね、すごくね!? 副マスのおねだりがすんげぇかわいく見える!! 

 姐さんの目的……幻想級を除く最強だぜ? 星まで指定してくるとか!!

「ちょ、ちょっと遠慮というものは……」

「交渉は可能だと聞きんしたが?」

「姐さん! 絶対奪い取ってやるみたいな肉食獣の目をしてるよ!?」

「狐は肉食でありんすよ?」

 そう言ってにんまり笑う姐さんは……超迫力美人です……迫力……。

 これ絶対持ってかれる! くそっ! 絶対材料費以上のものをギルマスに請求してやる!! 狙って最高ランクつくんの大変なんだからな!? できねぇとは言わねぇけどよぉぉおお!!

「私は伝説級の星三つ以上の銃を所望するであります!!」

 こいつら……無理のない範囲で最高のもん持っていこうとしやがる……。なんで俺の倉庫の中身しってんの……。銃作れるけど使ったことねぇぞ。見たことねぇよな? な?

「楽しみでありんすなぁ」

「楽しみであります!!」

「お前ら……負けちまえ!! 初戦敗退きぼんぬ!!」

「審判は公平にしろよ……?」

 去っていく二人に向かって叫んでたら、後ろからリリア嬢の冷えたツッコミが聞こえてきた。

 ぐすん……。

 なので今は観戦中。

 集まったけど参加しないやつらもいて、できたのは六人パーティが十二。余った十人は一緒に観戦したり、対戦の運営を手伝ったりしてくれてる。

 お手伝いさんたちと、一位以外の子たちにも、少しはご褒美用意してるからね。さすがに初戦敗退と無償奉仕はしょっぱすぎる。

 参加賞くらいは半分自腹きってやんよ。ギルマスにこれくらい……って言われそうだしな。

 ちなみに参加賞は俺印の体力か魔力回復薬。このギルド内で一番いい性能で作れるらしい。ちょっと特殊なんだとか。変な効果つくんだよね。MP回復効果+物理防御上昇とか。なんでだろ。謎だわ。

 まま、ともかくさ、審判も何もさ、無いんだよね。練習場みたいなエリアでは勝敗設定ってのがあってさ、それがパーティ全滅だから、ごまかしようがないしね。人間の目よりもそういう機能の方が確実だぜ?

 ってわけで暇なのさ~。

 練習場では二試合行われていて、現在三戦目、かな?

 狐の姐さんと軍服エルフ少年のパーティは勝ち進み、今は副マスコンビのパーティと当たってる。

「姐さん負けろ!!」

 野次を入れると即行で女性二人の触れたら切れそうな声が飛んでくる。

「黙りなんし!!」

「どっちか応援する審判なんて聞いたことねぇし!!」

 おぉ、こわこわ。

 いい試合してるように見えるけど、経験の差だな。姐さんの方がちょっと強い。あぁ、俺の伝説級……。

 にしても暇だなー。ひーまー。

 だから色々調べてみよー。

 使えないのはチャット・メール・掲示板・時計。人によってはログアウトボタンの消失。今んとこ確認が取れるのはこれだなぁ。

 戻れるのかわからないから、現実の方からゲームに何かしらの働きかけができるのかは不明。運営が何かやってるかもしれないけど、どうだろうね。

 パソコンからある程度ゲームにアクセスして、ダイブしなくても動かせる機能もあるけど、それも使えんのか不明。使えなかったら運営はお手上げかな?

 逆にゲーム内から外に働きかけができるのかも不明。そういう機能はある。ギルマスが何かやってるかもしれない。会社アバターにはゲーム内で変更可能だし。普通だったら無理だけどね。他のアバター持ってたとしても。これは運営権限だな。

 俺も自分の家に戻ればこっそり持ち込んだ、運営にばれたら即アカウント削除の可能性がある秘密道具たちがいるから、確認はとれる。でも今はここを離れられないから見送り。

 今んとこ悪いことはこれくらいか。他にも人間的な問題はあるとしても、ゲームとしての問題はそれくらい? 

 じゃ、次はいい方面か。いいのかは微妙だけど。

 普通に遊んでる範囲で不具合はそこまでない。

 ステータス画面は普通に出せるし。装備も変更可能。バックだって、倉庫だって使用可能。アイテムも問題なく使える。声も届く範囲なら会話だって可能だし、スキルも全部使える。

 ……あ? スキル……。

「ミナちゃん」

「あ、はいなんでしょうか?」

 近くにいた初心者のいい子ちゃんを呼び寄せる。ちっちゃ可愛い女の子だ。

「ちょっと試したいことあるんだけど、協力してくれる?」

「?」

「ミナちゃん『調教者』だったよね? 飛べるような何かと契約してない?」

「あ、え、えっと……蝶々とかでもいいんですか?」

 調教者はほぼなんでも契約できるからな。そこら辺にいた虫でも捕まえたのか? 

「お、いいね。ナイス。貸してくれない?」

「? わかりました?」

 そう言ってミナちゃんが出したのは……なんともけばけばしい色合いで目玉もようの羽をもった……え、これ蛾じゃね? しかもデカ! 人の頭よりでかい!!

 ま、まあ、いっか。ミナちゃんの趣味がわからんけども……。

「あ、ありがと」

「でも何に使うんですか? 黒鷺さんは使えないですよね?」

 調教する生き物・アイテムは基本的にご主人様以外は使えないし、調教者でもない俺が使うことはなおさら無理だ。

「んー。ちょっと特殊アイテム持っててね……んじゃ、借りるよ?」

 触りたくないけれど、ひらひら羽を動かして同じ場所に居続ける蛾の、ちょっとデフォルメして可愛いと言えなくもなくも……って感じの顔にバックから取り出した薬を塗りつける。

 たらららったら~ん♪『意思疎通薬』!! これがあれば喋れない動物とかとでも意思が疎通できるようになる!! と言っても、特定の奴だけだけどね。そこそこいいAIみたいなの搭載してないとだめっぽい。

【な・に?】

 蛾さんの声が聞こえてきた。

 かたことだけど、まぁ、いい方? 本当にそこら辺の虫とかだと意志疎通できないんだよねー。でもご主人の許可あれば何とかなるっポイけど。

 ……え、ご主人にお願いすればよくね? って?

 …………まぁ、言いたくないことがあるんだよ、うん。

「ちょっとさ、お願い聞いてくれない? お前のマスターからは許可をいただいてるから」

 調教者じゃないと武器として使役はできない。けれどこうしてマスターが許す範囲なら、調教獣だと会話で交渉可能なんだよね。だいたい召喚されていないときは自由行動可だし。その範囲ならオーケー。

 まぁ、意思疎通なんてそうそう簡単にできるようなもんじゃないし、調教者でも長い時間かけて信頼関係築かないと言うこと聞いてくれないってのもあるんだからさ。これは裏ワザかな。

 低級だとそこまでプライドも難しい思考もないからお願いも聞いてもらいやすい。

【あ・そ】

 納得してくれたようなのでお願いを伝える。本人……本蛾? が、嫌がったら無理だから、少し丁寧にいこう。

「ちょっと人捜してほしいんだ。大陸中は……探せないだろうから、この街でいいや。できる?」

【い・よ】

「ありがと。こういう感じの魔力の人を見つけてほしいんだけど、できる?」

 少し声を抑えてミナちゃんには聞こえないようにした。ちょっと、ね。これ自体問題があって……。

 バックからギルマスにもらったペンダントを見せる。ギルマスの魔力が込められた紋章付のアクセサリー。

 犬の嗅覚を頼りにするように、魔力で探してもらえるか? ただの獣じゃなくて魔獣系統の調教獣ならいけるはず……。

【でき・る。くび・かけ・て】

 どこが首だよ……とか思ったけど、胴体の上の方でいいんだよな?

 触覚に触らないようにそっとひっかけてやる。

「で、もし見つけたらそのアクセサリー渡してもらえる? 上から落としてくれればいいから」

【わか・った。も・い?】

「うん、お願い」

【いって・き・ます】

「いってらっしゃい。無理だったらすぐ戻って来てね」

 そう言うと蛾は壁をすり抜けて飛んで行った。

 ……あれ、意外とあの蛾、ただものじゃない? 通り抜けできるのって貴重じゃね? んー? でも初心者クラスのだろー……?

「く、黒鷺さん!!」

 あ、マスターの存在忘れてた。

 ミナちゃんがキラキラした目でこっちを見上げている。

「モサモサちゃんとお話しできるんですか!?」

 あの蛾、モサモサちゃんって名前なんだ……。女の子? ってかネーミングェ……。

 会話ができる調教獣なんて、それこそ武器ランクで言ったら幻想級に近くなりそうだもんな。自分の調教獣との会話は調教者の憧れらしーし、ミナちゃんの目の輝きもうなずける。

「そういう薬。えっと、モサモサちゃん? 貸してくれてありがとね。お礼にあげようか? そんな量ないけど」

 元々とあるイベント用の奴だったから、しかも昔の。だからそうそう作れるやつはいないし、流通だってしてない、貴重なものではある。

 でも俺作れるし、別にいいよねー。

「ホントですか!? ありがとうございます!!」

 ペットボトルのキャップくらいの大きさしかないケースをミナちゃんに渡す。しかも中身は後半分くらいしか入ってないんだよねー。

「こ、これでモサモサちゃんとお話が……!!」

「あ、でも内緒にしといてね? ばれたらいろいろめんどくさいから……」

「どうしてですか!? 売ればきっとお金になるのに!!」

 え、そこ!?

「いや、いいんだ。お金じゃないからさ」

「わかりました……絶対に秘密にします!!」

「あんがと。……あぁ、そうそう。さっきの見てればわかると思うけどさ、人前でやると痛いやつとか、電波、とか思われるから気を付けてね?」

 これ相手と自分にしか効かないからね……。蛾に話しかけてる痛いやつ……いや、動物ならいいけどさ、ぬいぐるみとかだったらかなり危ないやつに……。

 ん? ぬいぐるみにも効くよ? 調教系ならほとんど効くはず……試したことは少ないから断言できないけどさ。ぬいぐるみも普通に動いてるやついるし。

「了解です!!」

「うっし。じゃ、モサモサちゃんが帰ってくるまで一緒に観戦してよっか」

「はいっ!!」

 そうして姐さんとリリア嬢の方を見れば、ちょうど勝負がついたようだ。

「あ、アタシの『虹羽イヤリング』がぁああ!!」

 リリア嬢が悔しそうに叫ぶ。

 おい、それ伝説級。いつの間にランクあがってんだよ……。

「わっちに勝とうなんて、百万年はやいでありんす」

 姐さんも負けてほしいよ俺ぁ……(泣。

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