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『デジャブの先で、君にもう一度』  作者: Toi
第一章 喪失
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1-4 写真

第四話


「すみません。」


結が近くを歩いていた女性へ声を掛けた。


「写真、お願いできますか?」


「もちろんです。」


スマートフォンを受け取った女性が笑顔で頷く。


「もっと近づいてくださーい。」


湊は少し照れながら結の隣へ立った。


「もっと。」


結が袖を軽く引く。


肩が触れる。


「はい、撮ります。」


パシャッ。


「もう一枚いきますね。」


パシャッ。


「ありがとうございました。」


結は何度も頭を下げた。


「ありがとうございます。」


湊も続いて礼を言う。


女性が去ると、結はすぐ写真を開いた。


「見て見て。」


湊も画面を覗き込む。


一枚目。


二人とも真顔。


「なんだこれ。」


「湊、仕事の証明写真みたい。」


「ひどいな。」


二枚目。


結が笑っている。


それにつられて湊も笑っていた。


「こっちだね。」


「うん。」


結は迷わずお気に入りに登録した。


「そんなに写真好きだっけ?」


「好き。」


「なんで?」


結は少しだけ考えた。


「忘れちゃうから。」


「何を?」


「今日のこと。」


「写真があれば思い出せる。」


湊は少し笑う。


「結は昔からそうだよな。」


旅行へ行っても。


近所を散歩しても。


コンビニへ行っただけでも。


結は必ず写真を撮る。


「思い出って、記憶だけだと少しずつ薄れちゃうでしょ。」


「だから残しておきたいの。」


「未来の私のために。」


未来。


その言葉に、湊は少しだけ引っかかった。


「未来の自分か。」


「うん。」


結は写真を見つめながら笑う。


「きっと何年後かに見返して、『この日、幸せだったなぁ』って思うから。」


湊は画面の中の二人を見る。


確かに幸せそうだった。


「じゃあ。」


「十年後に見よう。」


「二十年後でもいいよ。」


「その時、お互いどんな顔してるんだろうね。」


結は嬉しそうに笑った。


「楽しみ。」


そう言ってスマートフォンをしまう。


その笑顔を見て、湊は自然と思った。


この人は、ずっと隣にいる。


そんな根拠のない自信があった。


だから僕は。


この日撮った一枚の写真が、


何度も見返すことになる”最後の思い出”になるなんて、


想像もしなかった。

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