5-4 「アルバム」
第四話
葬儀が終わり、参列者も帰っていった。
夕暮れの実家は、驚くほど静かだった。
玄関で靴を履こうとした湊を、父が呼び止める。
『湊。』
振り返ると、父は一冊の古いアルバムを抱えていた。
『これ、お前に。』
湊は首をかしげる。
『母さんが預かってた。』
『いつか渡そうと思ってたらしい。』
『……俺に?』
父は静かに頷いた。
『見れば分かる。』
それだけ言うと、父は部屋へ戻っていった。
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帰宅した湊は、ソファに腰を下ろす。
アルバムを開く。
幼稚園の入園式。
誕生日。
家族旅行。
ページをめくるたび、懐かしい時間が蘇る。
そして、運動会のページで手が止まった。
ゴールテープを切る幼い自分。
父が撮ったはずの写真。
その隅に、小さく女性が写っていた。
帽子を深くかぶり、少し離れた場所からこちらを見ている。
最初は誰だか分からなかった。
でも。
何枚もページをめくる。
授業参観。
七五三。
卒業式。
少し離れた場所。
木の陰。
校門の外。
いつも同じ女性が、小さく写り込んでいた。
湊の呼吸が止まる。
『……母さん。』
最後のページに、一枚のメモが挟まっていた。
見慣れた母の字だった。
“湊には見つからないようにって、お父さんにお願いして写真を撮ってもらいました。”
“ちゃんと会う勇気はなかったけど、少しでも成長を見たくて。ごめんね。”
“だから、この写真だけは私が預かっていました。”
涙が、一滴。
アルバムに落ちた。
湊は写真を胸に抱き寄せる。
『会いに来てたんだ……。』
母は来なかったんじゃない。
来られなかった。
でも、
来ていた。
ずっと。
誰にも気付かれない場所から。
俺の成長を見守り続けていた。




