↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『デジャブの先で、君にもう一度』~もし、あの日がもう一度訪れたなら~  作者: Toi
最終章 未来はひとつじゃない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/50

5-1 「会いに行く」

第一話


スマートフォンを握る手に力が入る。


『今すぐ来て。』


妹の声が、何度も頭の中で繰り返される。


湊は玄関へ駆け出した。


エレベーターを待つ時間さえ惜しい。


階段を駆け下りる。


夜の風が頬を打った。


タクシーを止める。


『○○総合病院までお願いします。』


車が走り出す。


窓の外では、街の明かりが流れていく。


その景色を見ながら、湊はスマートフォンを開いた。


着信履歴。


母。


一時間前。


『……母さん。』


何を話そうとしていたんだろう。


もっと早く手紙を読んでいれば。


もっと早く電話に気付いていれば。


そんな考えが頭をよぎる。


その時だった。


結の文字が浮かぶ。


『後悔したまま終わらないで。』


湊は目を閉じる。


『……そうだ。』


過去は変えられない。


でも、今ならまだ間に合う。


窓に映る自分を見つめ、小さく呟いた。


『ちゃんと向き合おう。』



病院の自動ドアが開く。


消毒液の匂い。


静かな待合室。


受付の前で辺りを見回すと、一人の女性が立ち上がった。


『お兄ちゃん。』


妹だった。


目元は赤く腫れている。


湊は駆け寄る。


『母さんは。』


妹は病室の方を見る。


『今は落ち着いてる。』


『でも先生が……いつ急変してもおかしくないって。』


湊は黙って頷く。


妹は少しだけ笑った。


『来てくれてよかった。』


その一言に、胸が締めつけられる。


『お母さんね。』


『さっきまで、お兄ちゃんは仕事だから仕方ないって笑ってた。』


湊は何も言えなかった。


妹は病室の扉へ歩く。


ノブに手を掛けると、一度振り返った。


『私、少し席を外すね。』


『お兄ちゃんと二人で話してきて。』


静かに扉が開く。


ベッドの上で、母がゆっくりとこちらを向いた。


目が合う。


少し驚いたような顔をして、


すぐに優しく笑った。


『来てくれたんだね。』


湊は一歩、また一歩と近づく。


言いたいことはたくさんあった。


謝りたいことも。


伝えたいことも。


それなのに、最初に口から出たのは一言だけだった。


『……ごめん。』


母は首を横に振る。


『いいの。』


『来てくれたでしょう。』


その言葉だけで、


湊の中に張りつめていた何かが、少しだけほどけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。