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『デジャブの先で、君にもう一度』~もし、あの日がもう一度訪れたなら~  作者: Toi
第4章 向き合う

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4-8 「ありがとう」

第八話


『この手紙も、もう終わりです。』


長かったね。


最後まで読んでくれてありがとう。



もしかしたら今頃、


泣いてるのかな。


それとも、


『もっと早く読めばよかった。』


って思ってるのかな。



もしそうだったら。


あんまり自分を責めないでね。


……と言いたいところだけど。


たぶん湊は責めるよね。


私、知ってるもん。


湊は思わず笑った。


涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、


「お見通しか。」


と小さく呟く。



だから、一つだけ約束して。


後悔したまま終わらないで。



私とのことも。


お母さんとのことも。


仕事のことも。


友達のことも。


自分のことも。



『あの時こうしていれば。』


で終わらせないでください。



ちゃんと向き合ってください。


苦しくても。


怖くても。


面倒くさくても。


その先には、


きっと今より優しい景色があります。



私はね。


湊が誰かのために頑張れる人だって知っています。


だから今度は、


その優しさを、


一番近くにいる人にも向けてあげてください。


もちろん、


自分自身にも。



私はもう、


湊の隣は歩けません。


でも、


湊の幸せは、


これからもずっと願っています。



もし、いつか。


また大切な人ができたら。


その人が、


『湊と出逢えてよかった。』


って笑える人生にしてください。


それが、


私の一番のお願いです。



それじゃあ、


本当に終わります。



五年間。


本当にありがとう。



あなたと出会えて、


幸せでした。



結より


湊は便箋を静かに畳んだ。


胸に抱き寄せる。


涙が止まらない。


何度も、


何度も嗚咽が漏れた。


「……ごめん。」


「ごめん、結。」


返事はない。


あるのは、


静かな部屋と、


手紙に残る結の文字だけだった。


どれくらい時間が経っただろう。


窓の外は、少しだけ暗くなり始めていた。


湊はゆっくりと立ち上がる。


テーブルの上には、スマートフォンが置かれている。


何気なく画面を見ると、


着信履歴が一件。


母。


時刻は、一時間前だった。


「……母さん?」


胸がざわつく。


すぐに折り返そうとした、その瞬間。


スマートフォンが震えた。


画面には、


妹の名前が表示されていた。


嫌な予感が、胸を貫く。


震える指で通話ボタンを押す。


『……お兄ちゃん。』


妹の声は震えていた。


『お母さんが倒れたの。』


湊は息をのんだ。


『今、病院。』


『先生が……今日を越えられるか分からないって。』


沈黙。


『でも。』


『まだ話せる。』


『だからお願い。』


『今すぐ来て。』


手紙の中の言葉が、頭の中で静かに重なる。


『ちゃんと向き合ってください。』


湊はバッグをつかみ、


玄関へ向かって駆け出した。

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