3-1 「問い」
第三章
第一話
土曜日。
目が覚めても、夢の内容だけははっきり覚えていた。
『やっと気づいたか。』
『問いが違う。』
『答えは教えられない。』
『選ぶのは、お前だからだ。』
湊はベッドの上で天井を見つめた。
何度考えても分からない。
でも、一つだけ昨日とは違うことがあった。
分からないまま終わらせたくなかった。
⸻
午前九時。
ノートパソコンを開く。
検索欄へ指を置く。
何と入力すればいい。
少し考え、
最初に打ち込んだ言葉は、
「デジャブ 原因」
だった。
検索結果が並ぶ。
『脳の記憶処理の錯覚』
『疲労やストレス』
『睡眠不足』
『未解明の現象』
一つひとつ記事を読む。
どれも似たような内容だった。
「違う……。」
湊は小さく呟く。
自分が見ているものは、
“見覚えがある”ではない。
**“まだ起きていない可能性”**だ。
検索欄へ新しく入力する。
「未来が見える 病気」
精神疾患。
脳疾患。
妄想。
錯覚。
次々と記事を開く。
どれも違う気がした。
病気だと言われた方が、むしろ安心できた。
でも。
どれにも当てはまらない。
⸻
昼過ぎ。
机の上へノートを開く。
新しいページ。
湊は一本の線を引いた。
左へ書く。
現実
右へ書く。
夢
その下へ箇条書きで並べる。
現実
・書類が落ちることを知っていた。
・女子高生が転ぶ未来と助かる未来。
・信号で無数の未来。
夢
・白い空間。
・声。
・『やっと気づいたか。』
・『問いが違う。』
しばらく眺める。
共通点が見つからない。
「いや……。」
湊はペンを持ち直す。
ページの真ん中へ、大きく一つだけ書いた。
なぜ、俺なんだ。
その文字を見た瞬間だった。
胸の奥が、少しだけ熱くなる。
『問いが違う。』
あの声が蘇る。
「違うのか……?」
湊はその文字へ一本線を引いた。
そして、下へ新しく書く。
俺は、何に気付くべきなんだ。
部屋は静まり返っている。
なのに。
その問いを書いた瞬間だけ、
胸のざわつきが、不思議と静まった。
まるで。
“その問いでいい”
と誰かに言われたように。
湊はゆっくりペンを置いた。
初めてだった。
現象ではなく、
意味を考え始めたのは。




