表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『デジャブの先で、君にもう一度』~もし、あの日がもう一度訪れたなら~  作者: Toi
第2章 デジャブ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/50

2-8 「交差する未来」

第八話


それから数日。


違和感は、少しずつ増えていた。


毎日起きるわけではない。


何もない日もある。


だからこそ、気のせいだと思おうとしていた。



金曜日。


仕事帰り。


駅前の信号が赤に変わる。


横断歩道には二十人ほどが立ち止まっていた。


湊もその列へ並ぶ。


何気なく前を見る。


若い母親。


ベビーカー。


制服姿の高校生。


スーツ姿の男性。


犬を散歩する老人。


どこにでもある景色だった。


信号が青へ変わる。


その瞬間。


世界が止まった。


いや。


止まったように感じた。


母親が歩き出す。


高校生も渡り始める。


老人が犬を抱き上げる。


スーツ姿の男性はスマートフォンを見ながら歩く。


そこまでは同じだった。


次の瞬間。


景色が枝分かれした。


高校生が走る。


転ぶ。


膝をつく。


――違う。


高校生は友人へ手を振り、笑っている。


――違う。


赤信号を無視した自転車が飛び込む。


母親がベビーカーを引き戻す。


――違う。


犬がリードを引っ張る。


老人が転ぶ。


――違う。


スーツ姿の男性がスマートフォンを落とす。


誰かが拾う。


――違う。


誰も気付かない。


踏まれる。


景色が。


何度も。


何度も。


塗り替わる。


重なる。


増えていく。


「……っ。」


息が詰まる。


どれが本当だ。


どれが現実なんだ。


耳鳴りがする。


頭の奥が熱い。


「神谷さん!」


誰かが肩を掴んだ。


景色が戻る。


信号はまだ赤だった。


「大丈夫ですか!」


朝比奈だった。


佐伯も隣にいる。


「顔、真っ青ですよ。」


「駅で偶然会ったから声掛けたのに……。」


「全然反応なくて。」


湊はゆっくり周りを見渡す。


信号は赤。


誰も渡っていない。


さっき見た景色は、まだ何一つ起きていない。


やがて。


信号が青へ変わる。


人が歩き始める。


高校生は友人と笑いながら歩く。


老人は犬とゆっくり渡る。


母親はベビーカーを押す。


スーツ姿の男性はスマートフォンをポケットへしまった。


何も起きない。


何一つ。


見た未来とは違う。


「……何で。」


思わず呟く。


「神谷さん?」


朝比奈が心配そうに覗き込む。


湊は首を横に振った。


「いや……。」


「何でもない。」


そう答えながらも、


心臓だけは激しく鼓動していた。


二つじゃなかった。


三つでもなかった。


あれは。


数え切れないほどの未来だった。


その夜。


ノートを開く。


震える手で、一行だけ書いた。


未来は、一つじゃない。


書き終えた瞬間。


窓の外で、風が鳴った。


誰もいない部屋。


静寂の中で。


どこからともなく。


誰かが笑った気がした。


振り返る。


誰もいない。


ただ。


胸の奥だけが、


これまでで一番強くざわついていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ