↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世オタクの私が魔法少女は解釈違い!  作者: 天氷岐 久音
それでも世界の危機というならば

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/69

第69話 境界層深部偵察モード、です

たすけて。

心臓が、心臓が限界です。


セラ様に! 抱えられて! 飛んでます!

速い! 高い! 景色は灰色!

境界層なのでずっと薄曇り!


ちょっと段々ワケがわからなく……

どうすれば?!


「そろそろ、分離ポイントです。準備はいいですか?」

「私はもうダメそうです」

「ならこのままずっと抱えて帰り――」

「オールクリアです! いつでも!!」


むぅ、という不満の声がもう破壊力満点ですセラ様!


「無事に帰ってくるのですよ」

「もちろんです!」


セラ様の身体の温もりが消え、ふわっ、と身体が宙に浮く。

現実世界と違って境界層は上空の酸素が薄いとか寒いとかは無いのだけど、さっきまであった温もりが消えた分、ちょっと寒々しさを感じてしまうのは未練からか。

チラッと、反転して離れていくセラ様との距離を確認してバックパックの紐を引くと、バックパック内に折りたたまれていた翼が小気味良い音を立てて展開される。

割とコンパクトなバックパックのサイズからはちょっと想像がつかないくらい大きな三角形の翼だ。境界層深部偵察作戦用に開発された、簡易グライダー装備。何度かテスト飛行はしてコツは掴んでいるので、ルミナと瘴気の流れを見て、その流れにうまく翼を乗せれば、かなりの距離を滑空していけるはず。


グライダーの翼の部分は灰色がかった驚くほど軽くて丈夫なルミナ由来の繊維でできている。

この繊維、軽量で強靭という特性から、当初は魔法少女用の防護コートが作れないか試みられていたらしい。けど、試作品の着用テストをしたところ、バトルドレスのルミナとは反発しあって双方の性能を著しく低下させるという致命的な欠点が見つかってお蔵入りになってたのだとか。

けれど、このグライダーのように、身体からは少し離して装備すれば問題はないということで、グライダーの翼に採用された。

あと、今回はバトルドレスではなく、ルミナステルス装備一式を装備している点もプラスに働いているね。


それにしても、グライダーで飛ぶのは、空中を走るのとはまた違った気持ちよさというか、爽快感がある。


飛んでいるうちに、心臓も少し落ち着いてきた。


あー……ここまで随伴してくれたチームの子たちにも、後でお礼のメッセージ送らないと。セラ様のようにルミナの翼で飛べる子はほとんど居ないから、臨時チームを組むためにローテーション外の出撃となってしまったからね。

サエッタは良いとして、魔法少女ミンストレル――岩倉さんへのメッセージ内容は悩むな。

セラ様登場でのぼせて、二人をちょっと無視するような感じになってしまったのは反省点。最低限の挨拶はしたけど……それだけというのは流石にちょっと、先輩魔法少女として、円卓の魔法少女としてどうかと思うし。


修行が……推しを前にして平静を保つ修行が足りない!


思考を少しばかりとっ散らかしつつ、警戒は怠らずに飛ぶことしばし、だんだんと地表が黒ずんでくる。

瘴気の濃さはちょっと前から肌でもチリチリと感じていたけど、いよいよ、見てわかる程度に濃くなってきたね。

この辺りはもう、過去に調査記録のない未進出領域だ。

とはいっても、境界層の地表面や、まばらに見える空虚な建物が黒ずんでいる以外の変化は無い。満遍なく瘴気が濃くなっていて、どこかから瘴気が湧いているような様子もない。

何か変化があるとしても、まだまだ奥だね。


瘴気が濃くなっているからなのか、グライダーの高度が保ちやすくなっていて、濃度のムラが上昇気流のようなものを作っているところもあるから、楽に飛んでいけるのはありがたい。


ただ、ここまで瘴気濃度が高いと、迂闊にルミナを放っただけでコアなしの隔獣が連鎖的に発生しかねないから、ステルス状態の維持には細心の注意が必要。といっても、装備でしっかりルミナの発散を抑えているので、大規模な魔法を使おうとしない限りは大丈夫。


瘴気が一定以上の濃度に達すると、ルミナに反応してコアなし隔獣が発生するという事象がつい最近に発見された。

それまでの定説は、瘴気が一定以上に濃くなると、隔獣が自然と生まれる、というものだったから、それまでの説がひっくり返る発見だった。

自然発生説だと、瘴気濃度は一定以上には濃くならないはずだけど、偵察ドローンによってもたらされた境界層深部の瘴気濃度は、ビースト級が自然発生するとされる濃度をはるかに上回っていたのだ。


で、新説の中で構築されていたモデルでは、滞留する瘴気濃度と隔獣発生に必要なルミナはおおむね反比例になっていて、瘴気が濃いほど少ないルミナにも反応し、ルミナが強いと薄い瘴気でも隔獣の発生反応が起きうる。このときの瘴気濃度とルミナ、双方に反応の下限があることもモデルで示されていた。

下限がある、というのがポイントで、ステルス装備による偵察にゴーサインが出たのも、外部へのルミナ発散を抑えれば、高い瘴気濃度の環境下でも隔獣を発生させずに偵察できる可能性が理論的に裏付けられたからだ。


この理論によれば、ビースト級やポーン級隔獣が発生しうる瘴気濃度なら、平均的なルミナ出力の魔法少女一人分以上のルミナに反応してビースト級隔獣が発生し、瘴気濃度が上がるほど、反応に必要なルミナ出力の値は小さくなる。

逆に、瘴気濃度が薄くてもルミナが豊富な環境に瘴気が流れ込むことで、ラット級隔獣が発生する。


ただしこれは、これまで確認されていた現象がこのモデルで説明できるようになっただけで、何故そうなるか、そもそも隔獣とはなんなのか、までは未解明だね。


で、一定以上の強さのルミナと反応するまでは、隔獣が発生することなく瘴気濃度が上がり続けることを示唆しているこのモデルの通り、境界層深部のさらに先、境界層深深部は極めて瘴気濃度が高くルミナが希薄な空間であることが、数多くの偵察ドローンによってもたらされた観測データで示されている。


今日は、そこまでは行かない予定。

ルミナが希薄な環境で、魔法少女がどうなるか全くわからないから。

これまでのデータからの推論結果も幅が広すぎて、ルミナに異常をきたして変身に悪影響が出る可能性から、これまで通り何とも無い可能性まである状態だからね。

もう少しデータ収集が必要。


なので、今日行くのは、その手前の境界層深部までだね。

それでも、人類未踏の地と言っていい、未知の空間だ。


ということで、この先は隔獣に集られたくなかったら、ルミナのお漏らしは厳禁。

身体防護と身体能力強化を維持しつつステルス装備の外にルミナを発散しないようにする。かなり繊細なルミナ制御が必要だけど、その辺は得意分野だ。

現役魔法少女の中でも、ルミナ制御はトップクラスと自負してるよ。

私よりも滑らかにルミナを扱えるのは、キルシュかサニーレインくらいで、今の円卓メンバーの中では、間違いなくトップ。

謙遜はしない。


うっかり「私なんてまだまだ」とか口走ると、ルージュにめっちゃ詰められるからじゃないよ?


信じて?


――と、ちょっと思考が脇にそれかけたところで、妙なものが視界に入った。

地表に残された爪で引っ掻いたような跡と、その先にある黒い塊。


ずんぐりした黒い楔形の何かが、墜落に近い着陸をしたような跡だ。

要調査対象だね。


「ステラよりコントロール、未踏領域で人工物らしきものを発見、調査が必要と認める。映像送る」

『コントロールよりステラ、了解。映像確認した。安全確保に注力の上、調査されたし』

「ステラ、了解」


グライダーなんだから着陸したら、離陸できないのでは、って?

魔法少女式離陸法があるから大丈夫。走って、跳んで、跳んで、飛び上がれば滑空に必要な高度は確保できるよ。


さて、何が墜落してるのかな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。