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前世オタクの私が魔法少女は解釈違い!  作者: 天氷岐 久音
まして主人公ポジとか間違いでしょ?!

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第58話 仕切り直し

「冷静になりなさい、なんて言うまでもなかったですわねっ」

「いえ、ありがとうございます、ルージュ」


巨人から大きく距離をとって、五人が集まる。密集したりはせず、やや間隔を保ってだけど。


「チェネステでも、視野が狭くなることあるんだね」

「ノワ様は私をなんだと……セラ様、ヴァイセ。あの巨人、どう見ますか?」

「これまでとは、明らかに毛色が違いますね。ルーク級の外殻も厄介でしたが、あの盾も似たような構造なのでは? ルーク級の時もそうでしたが、盾の再生速度を見るに力押しでの駆除は難しいでしょう」

「私もそう思いました。あと、なんか隔獣っぽくないというか。こちらの手を読んで対処しているようにも」


だよね。

ルミナを散らす効果のある盾というだけで厄介なのに、その盾自体がかなりのスピードで再生する。さらにその盾をかなり自在に使いこなしてくる。二重三重に手強い。


「打開策はありそうですの?」


唇を引き結んで考える。アレの動き、対応、攻撃の密度、瘴気濃度――

打開できそうな手立てをシミュレーションしてみるけど……立てた仮説はどれも芳しくない。


「――思わしくありません……」

「グレイシャル・ムーンをこっちに引っ張るのは?」

「間に合いません。今、シャルをあちらから引き抜けば、ルークの討伐に支障が出ます。かといって、あちらがひと段落する頃まで待った場合……この辺りの瘴気濃度を考えると、アレが臨界しかねません」

「あの巨人が現実に出るのは……マズいですわね」


とてもマズい。


いや、マズいどころではない。


この瘴気濃度だと、瘴気汚染がかなり深刻になる。万が一臨界したら……今いるのは第一管制ブロックだから、臨界するのは北海道北部のどこか。

駆除に手間取れば、そこから北海道の大部分に瘴気汚染が広がる恐れすらある。


状況をモニターしている特災庁が、第一管制ブロック内の危険度の高い区域にある避難所から避難民を退避させる手配を始めたのが、リンク経由で伝わってくる。


現実世界は、控えめに言って大混乱だ。

できることなら、ここであの巨人を食い止めたい。

食い止めたいけど、手が足りない。追加の手は待てない。詰んでる……?


「手持ちの手札が足りない、ということですね? 足りないものはなんですか?」


足りないもの……何が足りないか、なら。


「火力……ですね」


盾ごと問答無用に吹き飛ばせれば……あるいは盾を一瞬でも剥いで、巨人の反撃を封じ、そして一撃で駆除しきるだけの攻撃を叩き込めれば。

セラ様があと二人くらいいればなんとか? ……となると、やはりシャルと、二、三チーム必要。


臨界を遅らせる手立てを考えるべきか?


この瘴気濃度をどうにか……


「なるほど、つまりは」


注目を集めるように、一度言葉を切るセラ様。


「ドーンすればいいのですね!」


いや、それはそうだけど。それができなくて悩んでるわけで。

ほら、ノワ様とルージュがなんとも言えない顔に。ヴァイセ、それは事務所の先輩に向けていい顔じゃないと思うよ!

ちょっとセラ様、この空気、どうしてくれるんですか!


それはそれとして、さっきのドヤっとしたセラ様スクショしたい……


「セラ。さっき、目いっぱい溜めたアストラ・クラウンを弾かれてたから、チェネステが頭から煙を噴きそうなくらい悩んでるんじゃない?」

「あら? ……ああ。とっておきがあります。ただ、三分ほど動かずに集中する必要がありますので、そこを何とかしていただければ」


フルチャージのアストラ・クラウンをいなした相手をどうにかできるほどの「とっておき」? いくらなんでも……いや、セラ様が扱えるルミナ量を考えればあり得る……


「つまり――三分、耐えれば……なら、私とルージュで」

「チェネレントラ・ステラ」


ルージュが遮るように呼びかけてくる。

なんですか、今、作戦を組み立てて……


「考え過ぎですわ!」


考え、過ぎ……?


「方針を示しなさい。どうしたいのかを言いなさい。どうするかまで細かに指図しなくてもよろしくてよ!」


……え。


……ああ。


……うん、そうか。

そう、だよね。


「ルージュ、ありがとうございます。ルージュとヴァイセは三分間アイツを釘付けにして下さい」

「お任せなさいですわ!」

「はい。ルージュさんとはこの前チームを組んでいるので、呼吸はわかります。いい感じに、あの巨人をめっこめこにしてやりますよ!」


グッと親指を立てるルージュと、両手でガッツポーズを作るヴァイセ。


はー。ほんと、ダメダメだ。


私はいったいいつから思い上がってたんだ。臨機応変な対応力は随一と言われる魔法少女ルージュ・エトワールを、本人よりうまく動かせるだなんて。


バチン、と両手で自分の頬を挟むように叩く――


……痛ったぁぁ?! あ、めっちゃヒリヒリするっ……!?


ちょっと、なんでみんなして、残念なもの見る目に!?


「チェネステ……」


わかってるよ! みなまで言うなよ! ほら、漫画とかでよくこんな感じで自分に喝を入れるシーンがあるじゃん……真似しただけだよ! 漫画ってやっぱりフィクションだな!


深呼吸して冷静になろう。うん。


で、だ。

ちょっと思いついた。


変身した時の私に足りないもの。


むしろ、もっと早く気付くべきだったのだ――


片手にルミナを集め、濃いめのピンクフレームの眼鏡を形成して、かける。


うん、しっくりくる。

気持ち、ルミナがくっきりと良く見えるような気がするし、こう、欠けたピースがぴたりと埋まった感じだ。


「なんか、ステラさんの完成度が上がりました」

「ええ、とても灰星さんですね」

「えー、ズルくない? ズルくない、それー! そんな、ワタシはまだ変身を残してます、みたいな美味しいネタ! く、ボクも眼鏡かけようかな」


ちょっと、ルージュ、「チェネステさんの残念さがノワに伝染りましたわね?」って、どういう意味ですか! ノワ様は元からこうですよ! 多分!


「もう! 残念なこと言ってないで、ノワ様はセラ様をしっかり守ってくださいよ! それ以外はお任せですっ」


ついでに、武器チェンジ。

剣と盾を巧みに使うあの巨人相手に斧槍のままじゃ、わざわざ相手の土俵に乗ってやるようなものだ。


なので、斧槍にルミナを注ぎながらくるりと回して、対物ライフルに変化させる。


眼鏡をかけてわかったけど、チェネレントラ・ステラモードで銃が巧く扱える気がしなかったの、たぶん眼鏡がなかったせいだね! コソコソモードの時は眼鏡をかけてたし。


そんなことで――? てなるよね。

でも、そんなことで、うまく行ったり行かなかったりするんだよ。


対物ライフルは、狙撃銃についてネットを調べていて、そういう武器があると知ったから、あれこれと調べて、一度コソコソモードの時に試した。けど、その時は全然ダメというか、使い物にならなかったんだよね。


調べた情報を基にルミナで形成した対物ライフルは、扱いなれた狙撃銃とはまったく違うサイズと重量感で、コソコソモードだと、ルミナも身体強化率も足りなかった。なにせ、長さ二メートル弱、重量は三十キロ超。この時点で持ち運びが非常に困難。そして、そこから放たれるのは強力な二十ミリ砲弾。弾丸に込められるルミナは狙撃銃とは段違いに多く、コソコソモードで扱えるルミナ量では、弾薬の形成もままならなかった。


けれど、変身状態の今は違う。身体強化率もルミナ量も段違いなので、軽々とは行かないけれど、振り回して撃つのに支障はない。

両手にズシリと来る対物ライフルを構える私に、ルージュが微笑む。微笑むというには雰囲気がちょっと剣呑だけど。


「ヤる気みなぎるサイズですわね! 実によろしくってよ!」


でしょ!


巨人はどうした、ずいぶん呑気じゃないか――って? なぜか知らんけど、じっとこっちを待つように動かないんだよ。

だからと、油断したりはしない。話し合ってる間もずっと、ノワ様が多重に盾を展開している。


「では。少し後退してチャージを始めます。ノワ、守りは任せました」

「バッチリ任せて。完璧に守ってみせるさ」

「タイミングは任せましたよ、灰星ステラ


任されました! きっちり道筋はつけますとも!


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