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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり
帝国学園編

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静かなる狩りの進行

森の奥。


夜は、さらに深くなっていた。


『……動き、変わったわ』


プラーサの念話が、わずかに硬くなる。


『まとまって動いてる……数は五』


『間隔、詰めてる』


イヴァンスが短く応じる。


『……警戒してるな』


先行していた仲間が、消えている。


痕跡もなく。

音もなく。


ただ――“いない”。


それが意味するものは、一つだ。


『単独行動はないわ。

 互いに視界の範囲に集まってる』


セーニャが息を整える。


『さっきまでのやり方は、もう通じませんね』


ベラミカが小さく舌打ちする。


『当然でしょ。ここからが本番よ』


一拍。


『……崩す』


プラーサの声。


『視界を分断できれば――いけるはず』


スランザが低く返す。


『出来るならな。

 五人が互いにカバーしてるんだ

 下手に崩し損ねたら――逆に食われちまうぞ』


『やるしかないだろう』


イヴァンスは迷わない。


その一言で、全員の意識が揃う。


その頃。


野盗側。


「おい……」


一人が、低く呟いた。


「さっきの奴ら、どこ行った?」


「知らねぇよ。見張ってたはずだろ」


「いや、見てた。……はずなんだ」


ざわり、と空気が揺れる。


「消えたんだよ」


短い言葉。


だが、その意味は重い。


「ふざけんな……」


剣を握る手に、わずかに力が入る。


「いいか、絶対にバラけるな」


リーダー格の男が低く言う。


「何かいる。森の中に」


全員の視線が、闇へと向く。


「バラけるな、一人ずつ狙われるぞ。

 ……囲まれてる可能性もあるんだ

 用心しろ!」


その言葉に、空気が一段沈む。


『……来るわよ』


プラーサの声。


『警戒は最大状態ね。

 隊形、崩れず進行している』


イヴァンスが息を落とす。


『予定通り、分断する』


ベラミカが魔力を巡らせる。


『視界、切るわよ』


次の瞬間――


ふわり、と。


白い霧が、地面から湧き上がった。


音もなく。


しかし確実に、視界を侵食していく。


足元から、膝へ。

腰へ。


そして、体全体を覆うまでの高さにまで一気に広がる。


「……なんだこれ」


野盗の一人が、眉をひそめる。


「霧……?いや、違う」


ただの自然現象ではない。


“見えすぎない霧”


輪郭はぼやけるが、完全には消えない。


距離感だけが狂う。


「くそ、これじゃ距離感が掴めねぇ……!」


その一瞬の“ズレ”。


『今』


プラーサの念話。


一点、薄くなった位置。


『右、一人浮いた』


イヴァンスが踏み込む。


音を殺し、一直線に。


セーニャが背後へ回る。


気配を消す。


完全に。


「――スリ」


だが、その瞬間。


「止まれッ!!」


鋭い声が、霧を裂いた。


リーダー格の男。


その一声で。


「右だ!そこにいる!」


全員の意識が、一点に集中する。


『っ――!』


プラーサの念話が乱れる。


『バレた……!』


セーニャの動きが、わずかに止まる。


その“わずか”を――逃さない。


「そこだァ!!」


刃が振り抜かれる。


ギィンッ!!


イヴァンスが割って入る。


間一髪。


だが――


『今のを躱すの!』


ベラミカが歯を食いしばる。


霧は効いている。


だが――“崩せていない”。


「全員、固まれ!」


リーダーの声。


迷いがない。


即座に距離を詰め、互いの位置を確認する。


霧の中でも――崩れない。


「チッ……」


スランザが、小さく舌を鳴らした。


『……やっぱりな』


低く、吐き捨てるように。


『こいつら、ナピドラの連中で間違いねぇ』


一拍。


『普通の野盗じゃねえ』


視線が、霧の奥を射抜く。


『連携が出来すぎてる』


その言葉に。


場の緊張が、さらに一段上がる。


『……崩し方、変える』


プラーサが、静かに言う。


『完全分断は無理』


『なら――』


スランザが、重ねる。


『“偏らせろ”』


短く。


的確に。


『五人全部を見るな』


『“一箇所に寄せる”』


イヴァンスが、息を整える。


理解は、早い。


『……左が薄い』


プラーサの声。


『そこを崩す』


ベラミカが霧をさらに濃くする。


視界は、曖昧なまま。


だが――


狙いは、定まった。


「行く!」


イヴァンスが踏み込む。


今度は――


“崩す”のではない。


“削る”


一瞬の隙を、強引に作るための一手。


低く、滑るように間合いへ入り込む。


「っ――!」


野盗が反応するより、速い。


剣は振らない。


振れば、音が出る。

反撃の隙も生まれる。


代わりに――


柄。


鈍い打撃。


ドンッ!!


腹部へ、叩き込む。


「――っ……!」


声にならない空気が、喉で潰れる。


身体がくの字に折れ、

そのまま膝が崩れる。


音もなく、沈む。


その背後。


すでに――


セーニャがいる。


『スリープ』


囁きのような念話。


術で落ちる。


遅延はない。


完全に、意識が断たれる。


崩れた身体が、静かに地面へ倒れかけた――その瞬間。


「はい、回収~」


軽い声。


影が、差し込む。


ジャックだった。


音もなく入り込み、

倒れる前の身体をそのまま抱え上げる。


まるで最初からそこにいたかのような自然さ。


「じゃ、もらってくね~」


そのまま、後方へ。


一歩。


二歩。


――消える。


気配ごと。


「……っ!?」


野盗の一人が、ようやく異変に気付く。


「おい!今――」


視線を向ける。


だが。


そこにはもう、誰もいない。


「……消えた……?いなくなったぞ!」


野盗の一団が動揺している。


人数は確かに減ったのだ。

しかし攻撃を受けた感覚がない。


スランザが、小さく舌を鳴らした。


『ひゅ~、いい連携だ』


短く。


だが、確かな評価。


『このまま削り切る』


イヴァンスが応じる。


迷いはない。


一人ずつ確実に。


音もなく。


気付かせる前に――奪う。


森の中で。


“狩り”は、さらに静かに加速していった。

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