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千文字小説百物騙  作者: 凪司工房
第八乃段
72/100

ロシア人形の喪失

 何だこれは。

 と、蒔島博士は作業台の上に置かれていたフランケンシュタインの怪物のようにツギハギされた人形を見て、苦い表情になる。

「それが博士、いわくつきのロシア人形なんですよ」

 また助手の鈴木典子が妙なものを持ち込んだのだ。

 陶器製の人形はマトリョーシカのようにフラクタル構造にはなっていなかった。内部はただの空洞で、何も入ってない。見た目は瞳の大きな三頭身の少女で、髪は背中を覆い、足元まで伸びている。

 検査はX線と磁気測定、赤外線での表面温度の変化の観察に、各種音波による一定周波数の共振現象の確認など、オカルト現象でありがちなものを想定して行われた。

 その現象が発生したのは人形が持ち込まれてから三日目のことだった。人形が壊れていたのだ。テーブルから落下し、床で頭部がぱっくりと割れてしまっていた。

 すぐに監視カメラ映像を確認すると、真夜中、人形は独りでに動き出し、テーブルから落下した。それはまるで人形自らが投身したかのように見えた。

 博士は人形を補修し、再び監視カメラ付きの小部屋に入れておいた。今度は赤外線センサーや振動計等の目に見えないデータの観測も同時に行っていた。

 二日後、人形は落下した。

 データ上では特別な変化は見られず、人形自身が自分で振動し、テーブルから落下したという信じがたい結果が出ただけだった。

 そこで今度は落下防止の為にガラスケースに閉じ込め、監視部屋に入れておいた。だが人形はガラスケース内で自分からケースの壁に衝突し、頭部を破壊した。

「博士、これはもう認めるしかありませんね」

 助手の鈴木はやけに嬉しそうにその映像を繰り返し見ながら頷く。

 博士は別のアプローチで人形を調査することにした。

 まず由来を調べる。

 持ち主を辿たどっていくと、その出所はある女性芸術家が造った作品だということが判明した。それも彼女自身、いわくつきの作家であり、森の中に自分専用の美術館を建て、そこに沢山の人形を収めていたらしい。だがある日突然彼女はその人形全てを破壊し、自殺したそうだ。

 記録上は一つ残らず破壊されたことになっていたが、一体だけ残っていたというのでオークションに出品されたのがこのロシア人形だった。

 博士たちは再び人形を修復すると、その美術館跡地の森の中に、彼女を埋葬した。墓碑には「紅峰玲と共に眠る」と刻んだ。


 だが後日、助手が様子を見に行くと、その墓碑が倒れ、墓が何物かによって掘り起こされていたそうだ。


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