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千文字小説百物騙  作者: 凪司工房
第七乃段
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 そこは各駅停車が辛うじて止まるようなとても小さな駅で今は完全無人化がされていた。駅舎は近年改築され、駅前の広場には噴水ふんすいと共に一体の銅像が建てられている。

 その銅像の下を掘り返す男が一人、いた。

 男の名は丸井恒夫まるいつねお。近所で左官業をやっている男だ。銅像の土台部分が露出し、丸井はそれを口に咥えたペンライトで照らし出す。そこに金属製の小さなハッチを見つけた。


 銅像になったのは宗像林秀という、この町出身の男だ。彼はこの国初の大統領となった男で、貧しい家庭で育ちながらも新聞配達をして学費を稼ぎ、古本回収をして本を読み、赤が沢山入った参考書を引き取っては勉強にはげんだ。

 町の議員になってからも毎日の清掃活動に施設へのボランティア訪問、ホームレスや被災民のサポート活動と、地道で幅広い活動が認められ、三十三歳で衆議院に初当選する。

 その後も国会で数々の功績を残し与党の中核に入ると、国民の指示を得てトップに駆け上がり、大統領制を導入し、自身が初の大統領となった。

 その彼を丸井は小学生の頃から知っている。彼はいつも同じシャツに短パン、頭はバリカンの虎刈り姿で、独特の臭いがした。

 それが原因でクラスの誰もが彼を遠ざけ、あるいは積極的に暴力や暴言で、いじめていた。

 当時唯一といっていい友人が丸井だったと言ってもいいだろう。

 丸井は下校途中にある駄菓子屋で彼と組んでよく万引きをした。

 二人で手に入れた駄菓子は二人で秘密基地と呼んでいた森の中の廃屋で食べていた。

 その時に宗像は自分の夢をよく語っていた。小学生の頃から上昇志向が強く、表には出さなかったが、いつかこの国のトップになり、世界を変えたいと強く思っていた。

 ハッチを開けるとガムテープでぐるぐる巻きにされた小さなボール状の物体が収まっていた。それはかつて二人で造ったタイムカプセルだ。

 ガムテープを解くとお菓子の缶が現れる。蓋は硬く、それでも何とかこじ開けた。

 中からは丸井の入れたエロ本と、宗像の入れた卒業文集があった。

「おい! 何をしている!」

 見回りの警官だった。強烈なライトに続き、複数の足音がした。

 丸井は文集のそのページを広げ、大きく声を上げた。

「駄目なんだよ! あいつを大統領にしちゃ駄目だったんだ!」

 宗像の文集の将来の夢の欄には表向きの「公務員」という言葉の隣に自筆で「自分をいじめたやつらへの復讐ふうしゅう」と書かれていた。


 その翌日、大統領による第三次太平洋戦争の開戦が告げられた。


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