精神曼解叫
真っ白な壁に囲まれた診察室には小さな絵が一枚だけ掛けられていた。並木はその絵に描かれた何も入っていないグラスをじっと見つめて立っていた。
「こんにちは。それは伴怪堂という作家の作品です。興味深いでしょう」
入ってきた土屋医師はカルテを置いて、席に座った。
「調子はどうですか?」
「それがどんどん酷くなるんです」
並木は眉を寄せて椅子に座り、土屋に周囲で起こる奇妙な現象と夢と現実が混ざりつつあることについて簡単に説明した。
「分かりました。それでは一度録音しますので最初からお願いします」
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全ての始まりは百物語になぞらえてショートストーリーを百本書くという企画でし ヤクザの鉄砲玉として人生の一発逆転を狙っ ずっと男運のない女でした 裕福だが複雑な家庭で生まれ 瞳の色が他人と違うでしょう? 田舎から出てきて何とか刑事になって 小さい頃から変な家族と 最初に気づいたのは部屋から物が無くなっていたんで 刑務所から出て色んなバイトをやったよ 看護学校を出て看護師として この街で一番高いビルを建ててね 大切にしていた犬が死んだわ 不器用な男ですよ いつか月に帰ると本気で信じてい 次に記憶の欠落 ヒーローになりたかったのに結局俺に合うのは戦闘員 妻子ある男性に恋心を抱い 愛人も何人かいた いつも疎外感を味わいながら学生生活を送っ 担当した事件の一人はね人を殺したことはあるかと壇上から問いかけ 小さい頃からクリスマスは祝わない方針で 朝起きたら勝手に原稿が書き上がっていたことも 駅の清掃員を辞めて人妻と駆け落ちを 諦めて結婚した男はただの車好きの変人 議員にもなった 路上で歌っていたらラジオDJをやらないかって ある連続通り魔事件を追っていた時だ 大学の時に付き合った人は見返りという言葉で罰を与え 夢の中で何度も編集の彼女を殺したんです 工場でベルトコンベアを前に作業してるのが全部自分で まだローンの残っていた家を燃やしました 社会的な地位は得たが妻は入院し娘は家を出てしまった 歌手としてデビュー 妻をね、殺したんです 二十歳の時にいきなり異星人だって モデルガンで撃つとその作家も作品も世界から消えてしまう いつも悪い方ばかり選択し 離婚した後はキャバクラで働きながら愛人として 愛人の一人はね、自殺したよ でも今は引退してしまいました 今は殺人犯として逃げ回ってます 今はちょっと変わった団体で事務員を 最後には自分の作品に銃口を向けました
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「それで、誰が本当のあなたなんです?」




